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専門家によると、トルコでシリア難民に対するヘイトクライムが増加している

ベビーカーに乳児を乗せるシリア難民の母親(2016年11月30日、トルコのガジアンテプ県にあるニジップ難民キャンプで)(ロイター通信)
ベビーカーに乳児を乗せるシリア難民の母親(2016年11月30日、トルコのガジアンテプ県にあるニジップ難民キャンプで)(ロイター通信)
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06 Sep 2022 06:09:42 GMT9
06 Sep 2022 06:09:42 GMT9
  • トルコの政党は選挙公約で平和的融和政策を打ち出すべきと、移民アナリストが提言
  • アサド大統領が政権を握っている間は、多くのシリア人が帰国を希望しない

メネクセ・トキャイ

アンカラ:かつて両手を広げて歓迎されトルコに受け入れられたシリア難民が、彼らに対するヘイトクライムが増加するなか恐怖におびえて暮らしている、と専門家は主張する。

シリア難民の多くは、トルコで来年予定されている選挙のために政治的な道具として利用されていると感じている。

憎悪を原因とするシリア難民に対する犯罪が相次いでいるなか、トルコ南部のハタイ県で10代のシリア人ファレス・イラリさんが最近刺殺された。

2011年にシリア内戦で父親を亡くしたこの17歳の青年は、トルコの大学で医学を学ぶ機会を得て、医者になる夢を抱いていた。彼の遺体は今後、シリア北西部のイドリブ県に移される予定。

イラリさんはトマトペーストの工場で働いていたが、女性労働者と間でいさかいがあった後、復讐のために殺害されたとされる。 

トルコには約360万人のシリア難民が登録されており、世界最大の難民人口を抱えている。インフレと生活費の高騰に悩むトルコでは、外国人に対する敵愾心が煽られ、シリア難民に対する人種を原因とする身体的な攻撃や言葉による攻撃が増え続けている。

景気低迷により、同国の公式インフレ率は80.2%に達し、非公式のインフレ率は181%を超えた。

トルコでは議会選挙と大統領選を控え、100万人のシリア人をどのようにシリア北部に送還するかについて国内政治の場で激論が交わされている。

右派の野党議員の中には、シリア難民を同国に送り返すと公約し、高まる憎悪を利用する者もいる。

トルコでのシリア難民に対する暴力的な攻撃に関する公式な数字は存在しない。

しかし、6月にはイスタンブールで2人の若いシリア人、スルタン・アブドゥル・バセット・ジャブネさんとシェリフ・カリード・アル・アハマドさんが怒りにかられたトルコ人暴徒に襲撃され別々の事件で殺害されたと伝えられている。

5月30日には、トルコの南東部に位置するガジアンテプ県でシリア人女性レイラ・ムハンマドさん(70)が男に顔を殴られ、最近では17歳のシリア人学生が怒りにかられたトルコ人の群衆に路上で暴言を浴びせられる事件が発生している。

アンカラに拠点を置くシンクタンク、外国人保護・移民研究センター(IGAM)のメティン・コラバティール所長は、挑発行為の増加はトルコの特定のエリート層が裏で糸を引いているとアラブニュースに語った。

同氏によれば、すべての難民を追放することを公約している極右政党、勝利党のリーダーであるユミット・ヨズダー氏が、選挙が迫るなか、外国人に対する反発を煽るためにシリア難民を政治利用しているという。

「メディア上の有名人たちもシリア人に関する誤った情報を流布し、トルコでの生活水準についてバラ色の空想の姿を描くことで、こうした反発を煽っている」と付け加えた。

アンカラに拠点を置くシンクタンクTEPAVの移民政策アナリスト、オマル・カドコイ氏は、トルコの世論は外国人に対してますます冷淡になってきているとアラブニュースに語った。

同氏は、「並行してシリア人に対する敵意は特に強く、こうした感情は今になって始まったことではない。政府が煮え切らない調和政策を取るなか、経済の急降下が深刻になればなるほど、トルコ人のシリア人に対する反発と怒りは大きくなる」という。

さらには、イラリさんの死は、行き違いが暴走したときに起こりうる危険を浮き彫りにしたと指摘した。

「この場合、犯罪に見合った刑罰を与える法の支配が抑止力になる。例えば、ソーシャルメディアで動画を共有したシリア人を国外追放すると発表しておきながら、ファレスさんを殺した犯人の処罰を国民に発表しないのは、歪んだ正義だ」とカドコイ氏は付け加えた。

スレイマン・ソイル内務大臣がイラリさんの家族に哀悼の意を伝えたとされるが、トルコの政党からこの暴力に対する公的な非難の声はほとんど出ていない。

コラバティール所長は、すべての政党がシリア難民の現状にどう対処するかについて提案を選挙公約に盛り込むべきだと述べ、国際法上、トルコが一方的にシリア人を母国に送還することはできないと付け加えた。

「選挙を控えた政党はさらなる反感を煽るのではなく、有権者を納得させ、平和に貢献するために、公約に別の融和案を打ち出すべきだ」と述べた。

最近の報道では、トルコとシリアのアサド政権との関係正常化へ見通しが示唆されているが、カドコイ氏は、アサド大統領が政権を握っている間は多くのシリア人が母国への帰還を望んでいないと指摘した。

「トルコが自主的な帰国に関するシリア人の主体的立場を考慮せずに関係回復への道を進めば、シリア人は苦境に立たされるだろう。どうしたら避けられるか? またしてもエーゲ海沿岸地域がカギだ」と同氏は述べた。

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