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第77回国連総会、多国間システムが試練に直面する中で開会

気候変動、社会正義、食料危機、ウクライナ紛争など、多文化主義にとっての試練の時に国連総会が開催される。(AFP)
気候変動、社会正義、食料危機、ウクライナ紛争など、多文化主義にとっての試練の時に国連総会が開催される。(AFP)
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14 Sep 2022 08:09:41 GMT9
14 Sep 2022 08:09:41 GMT9
  • 同時多発する危機に対処するために世界の指導者がニューヨークに集まる
  • 課題は気候危機から、世界の結束にとっての試練と見なされているウクライナ侵攻にまでおよぶ

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:ほぼ全大陸における人道危機、気候非常事態、紛争、経済混乱を背景に、対面での開催は2019年以来初となる国連総会が開会した。

それでもなお、国連執行部は意気込んで課題に取りかかろうとしている。

アントニオ・グテーレス国連事務総長の報道官を務めるステファン・ドゥジャリク氏は今週、第77回国連総会を前にしたニューヨークでアラブニュースに対し、「意気込みを感じている」と語った。

世界的協力の必要性が恐らくかつてないほど緊急かつ明白となっている中、これからの2週間、同報道官がかつて「外交のワールドカップ」と呼んだ国連総会に世界の注目が集まることになる。

世界中で同時に複数の危機が続いている。食料不安が迫り、人道的ニーズが高まり、気候変動対策の目標は依然として達成されず、格差は拡大している。

ロシアによるウクライナ侵攻の中、ミサイル攻撃を受けたアパートの消火を終え休憩する消防士。2022年9月6日、ハルキウ。(AFP)

第77回国連総会では、ニューヨークの国連本部に世界の指導者が集まり、全ての者に共通する利益のために、これらの相互に絡み合う問題を協力して解決する方法を議論する。

また、市民社会活動家や民間部門の代表のほか、国連財団の旗艦イニシアティブ「アワ・フューチャー・アジェンダ」の一環として世界中の若者が参加する。

しかし、一つの差し迫ったトピックがこれからの2週間の最大の議題となることは確実だ。ウクライナ侵攻である。

侵攻は、ウクライナの人々に恐怖をもたらしているだけでなく、新たな課題を生み出し既存の問題を悪化させることで世界中に影響を与えている。

ドゥジャリク報道官はアラブニュースに対し、「(世界の指導者への)メッセージは、現在我々が直面している全ての課題を見渡して考えてほしいというものだと思う」と語った。

「どの問題も一つの国が一方的に解決できるものではない。気候変動も、紛争も、飢餓も、全て相互に絡み合っている。『多国間の解決を必要とする多国間の問題』と定義するほかないだろう」

ローズマリー・ディカルロ政治・平和構築担当事務次長は、8月の国連安全保障理事会の会合において、ウクライナ侵攻開始から6ヶ月余りが経過したが依然として「紛争の終結が見えない」と述べた。

裏付けの取れた事件に基づいた国連の推計によると、侵攻開始から181日間で民間人約6000人が死亡し、8000人以上が負傷した。国連は、実際の数字は「これを大幅に上回る」と見ている。

ウクライナ侵攻は、第二次世界大戦後最大の難民危機をもたらしている。たった6ヶ月の間に約800万人のウクライナ人が国外に避難し、11年間で600万人が難民となったシリア危機を急速に上回った。それに加え、700万人のウクライナ人が国内避難民となっている。

世界中の難民の数は1億人以上に膨れ上がっている。これも恐ろしい新記録となってしまった。

気象パターンの変動の結果として干ばつ、洪水、異常気温が発生し、数百万人の避難民、地域の食料システムの混乱、地域全体における飢饉の脅威をもたらしている。

洪水に襲われたパキスタンは「気候大虐殺」(先日同国を訪れたグテーレス事務総長の言葉)の最新の犠牲者となっている。

ウクライナ侵攻により穀物の世界価格が高騰し、脆弱な国々が最も打撃を受けたことで、食料不安は深刻の度を増している。

世界食糧計画は、今後1年間で、82カ国の3億4500万人が急性食料不安に直面するか、食料不安の高いリスクに晒されるとしている。これは、ウクライナ侵攻の波及効果によって急性飢餓が4700万人増加するとされているためだ。

容器を持って水を待つ人々。ソマリアのバイドア、町に500ヶ所ある国内避難民(IDP)キャンプの一つにて。(AFP)

ソマリアでは、長年の干ばつにより、今年の10月から12月にかけて飢饉が国内各所を襲う恐れが再び出てきている。

マーティン・グリフィス国連人道問題担当事務次長は、今月モガディシュを訪問した際、「多くのソマリア人が耐えている痛みや苦しみの大きさ(に)心底ショックを受けている」と述べた。

「飢饉が迫っている。我々は今、最後通告を受けているのだ」

タリバンの復権から1年が経過したアフガニスタンは、孤立し困窮している。

中東はと言うと、シリアで悲劇が続いている。国は分断され、インフラは崩壊し、経済はぼろぼろで、内戦前の人口のうち数百万人が依然として中東地域各地に避難しているのだ。

レバノンは、深刻な金融危機と手に負えない政治の麻痺に依然として苦しんでいる。ガザ地区では、70年間にわたる紛争の中でのまた新たな戦闘が発生し、さらなる死と破壊がもたらされた。

しかし、苦しんでいるのは中東だけではない。国連による最新の人間開発指数(HDI)は、2020年代にはほぼ全ての者にとって生活がより厳しいものになっていることを示している。150ヶ国以上で生活水準が過去30年で最低の水準に低下しているのだ。

新型コロナパンデミックにより、大半の先進国において平均余命が第二次世界大戦後最大の低下を示した。HDIスコアの低下が最大だったのはラテンアメリカ諸国とカリブ諸国だった。

インドでは、生活水準を示す主要な指標の一つである平均余命が3年縮まった。HDIスコアが最低だったのはサハラ以南アフリカ諸国だ。南スーダンとエチオピアにおける残酷な紛争がその一因となっている。

1990年から2019年の間、HDI下位46ヶ国はそれ以外の国々と比較して約4倍の速さのHDI上昇を示したが、世界最貧地域の一部が近年示したそのような進歩も、上述のような事態によって大きく損なわれている。

さらに、国連の数字によると、約5000万人が「現代の奴隷制」の状態に置かれている。そのうち2800万人は強制労働に従事させられ、2200万人は強制結婚させられている。2021年に「現代の奴隷制」に置かれていた人の数は2016年の世界推計と比較して1000万人増加していた。

巨大な規模で同時に起こっているこれらの課題が、世界秩序に対して根本的な脅威を突きつける恐れが生じている。特にウクライナ侵攻は、国連のような機関を根底から揺さぶった。

ディカルロ事務次長は、「ウクライナ侵攻は、世界的な分断を深め、制度に対する不信を高めることで、国際システムの基礎を弱体化させつつある」と述べた。

デモに参加するアフガニスタンの「パワフル女性運動」のメンバーたち。2022年5月10日、カブール。(AFP)

「平和と安全の問題に対する世界の取り組み方が崩壊することで何が起こるか、考えるだけで恐ろしい」

グテーレス事務総長自身は、今回の国連総会は「多国間システムと、加盟国間の結束や信頼にとっての試練」であると言っている。

実際、ウクライナ侵攻、および国連がそれを防げなかったことは、国連の役割と重要性に対する疑念をもたらした。

新たに国連総会議長に任命されたチャバ・コロシ氏はアラブニュースに対し、「これらの意見やメッセージは耳にしている。それらのメッセージはかなり核心をついており、大きな真実を含んでいると考えている」と語った。

「総会を含む国連の改革・変革を継続し、信頼を通して協力を強化しなければならない。信頼を築くことなしには、我々が直面する非常に複雑な課題に取り組むことはとても困難なものになるだろう」

「水問題対策や気候変動対策などの多数の差し迫った問題におけるブレイクスルーを世界は必要としている。加盟国やビジネス界・科学界のパートナーに対し、ブレイクスルーや変革の道を見出す手助けをしてくれるよう全力で働きかけていきたい」

ロシアによるウクライナ軍事侵攻が続く中、2万6000トンのトウモロコシを積んで黒海のオデーサ港を出港する、シエラレオネ船籍の乾貨物船「ラゾニ」。(AFP)

多くの課題を抱え制度への信頼低下に直面する中でも、希望を持つ理由が存在すると信じる国連関係者もいる。最近、国連仲介によりロシアとウクライナの間で結ばれた合意のもとで、黒海の3港が稼働開始し自由市場への穀物・肥料の輸出が再開されたことはその一つだ。

ドゥジャリク報道官はアラブニュースに対し、「率直に言って、黒海穀物イニシアティブの合意に至ることができたこと自体が、私にとって一筋の希望だ」と語った。

「この合意の実行は困難であり、壊れやすいものかもしれない。批判もされるかもしれない。しかし、合意に至ることができたという事実と、最大限に運用されているという事実は、希望を与えてくれると思う」

グテーレス事務総長自身は、この合意が「政治的意志、トップの戦略的専門知識、集団的努力によって実現できるもの」を体現していると信じている。

この合意が最終的に停戦につながると思うかという質問に対し、事務総長はこう答えた。「希望は最後まで失ってはならないということを我々は常に信じている。そして当然、人類にとって最も大切な価値である平和がこの地域に訪れることに対しても私は希望を持っている」

「私たち国連にとっての平和は、常に国連憲章および国際法と結びついている。そして、共同調整センターで見られた類まれなコミットメントの精神が、複雑で長いプロセスに(つながり)、そこで平和が勝利するのを目にすることができる、それが私の希望だ」

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