
モハメド・ナジブ
ラマッラー:パレスチナ人活動家らは、イスラエルの活動に抗議するためTikTok に移行しつつある。イスラエルは、ここ数週間の間TikTokが中東の治安情勢を悪化させていると非難した。
イスラエルは、ツイッターやスナップチャットにおけるパレスチナ関連のコンテンツを制限した上に、フェイスブックやインスタグラムといったMata社のソーシャルメディアプラットフォームにおいて数千のパレスチナ人のアカウントおよびコンテンツをブロックするよう同社に圧力をかけ、これを実現させた。しかし、中国企業バイトダンスが運営するTikTokは、イスラエルの主張をしりぞけ、自社のポリシーを変更することを拒否している。
この数週間の間に、ソーシャルメディア上で活動するパレスチナ人活動家数千人が、インターネット上の自由を享受し、フェイスブックによる規制を回避するため、TikTokに活動の場を移した。
パレスチナ人政治活動家のアメル・ハムダン氏は、アラブニュースに対し、フェイスブックが課した規制に悩まされたため、最近フェイスブックからTiktokへ活動の場を移したと述べた。同氏によると、フェイスブックは殉教者、抵抗運動、占領 といった言葉の使用を監視しているという。
フェイスブックページで20万人のフォロワーを持っていたハムダン氏は、イスラエルが1988年にチュニジアで暗殺したパレスチナ人指導者カリル・アル・ワジル氏の写真を投稿したために自身のアカウントが閉鎖されたと述べた。
「フェイスブックはもはやパレスチナ人が運動を広めるのに最適なプラットフォームではなくなったため、その代わりとなるのがTikTokであり、TikTokにはパレスチナの軍事組織の武装パレードを伝えるメディアや武器を持ったパレスチナ人抵抗運動の戦闘員の写真を広めるための適切で十分な余地がある」とハムダン氏は語った。
TikTokは以前まで、パレスチナにおけるソーシャルメディアアプリ利用においてフェイスブックとインスタグラムに続く3位だった。しかし、この数週間で2位に躍進しており、パレスチナのソーシャルメディア専門家らがアラブニュースに語ったところによると、フェイスブックには300万のパレスチナ人アカウントがあるが、100万人以上のパレスチナ人がTikTok を利用しており、その数は急増しているという。
TikTokでは全ユーザーが3分間の動画を投稿することができ、1,000人以上のフォロワーがいるユーザーは15分間の動画を投稿することが可能であり、パレスチナ人活動家らは、フェイスブックに比べてTikTokへの投稿の方が技術面での柔軟性も高いと見ている。
「1年以内にTikTokはパレスチナ人が使用するソーシャルメディアの第1位となるだろう」とハムダン氏は述べた。
事業開発問題の専門家であるサム・バフール氏は、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、そして世界中のディアスポラ(離散民)がコミュニケーションをとること、イスラエルによる規制を回避することを可能にするソーシャルメディアは、パレスチナ人にとって「格別の重要性」を持つようになってきていると述べた。
ソーシャルメディア活動の研究を専門とするセンターに所属するアフマド・アル・カディ氏がアラブニュースに語ったところによると、パレスチナ自治区における昨年5月の暴力的な事件と、フェイスブック、インスタグラム、WhatsApp 、ユーチューブでのパレスチナ関連コンテンツの削除を受けて、人々はTikTokに移行したという。
一方で、イスラエルの政治評論家ヨニ・ベン・メナヘム氏はアラブニュースに対し、TikTokは「危険な影響力のあるツール」であり、イスラエル人への攻撃を賛美する動画によって暴力を扇動していると述べた。
ベン・メナヘム氏はまた、TikTokのコンテンツは誤った情報やプロパガンダの影響を特に受けやすい若者をターゲットとしているとも語った。
昨年5月にイスラエル国防大臣のベニー・ガンツ氏はバイトダンス幹部らと面談し、パレスチナ関連のコンテンツをブロックするよう要請した。しかし、ガンツ氏の要請は受け入れられず、バイトダンスは投稿されるコンテンツにより注意を払うとだけ約束するにとどまった。
パレスチナ人の若者は、イスラエルによるパレスチナ人の都市や街への侵略、住居の破壊、拘束、殺害、入植者の攻撃、人種差別的な扱いを撮影しており、こういったコンテンツはTikTok上で急速に拡散している。
イスラエル政府の憤りをよそに、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、もしくは他国を拠点とするパレスチナ人アカウントに対してTikTokが何らかの行動を起こすことはないと、関係者は予想している。
「TikTokはいくつかのパレスチナ人アカウントを閉鎖するだろうが、イスラエルへの反発を扇動する数千のアカウントは活動を続けるだろうし、アカウントを失った人は誰でも偽名を使って新たなアカウントを開設することができる」と語ったベン・メナヘム氏は、加えて次のように述べた。「TikTokはイスラエルへの反発を扇動する最も危険な手段となっている」