
メネクセ・トキャイ
アンカラ:エジプトがトルコとの友好関係を解消したのは、トルコが最近、自国内でムスリム同胞団と連携するジャーナリストを弾圧した一方、リビアの領土やエネルギー政策に影響力を行使しているからだ、とアナリストらは述べている。
この危機的状況は、エジプトのサーメハ・シュクリ外相がアル・アラビアTVとのインタビューで、国連が仲介したスヒラート協定に関連して、すべての当事者にリビアのファティ・バシャガ政権との交渉を促したことで表面化した。
しかし、トルコは、10月初めにトルコ政府との間で交わしたエネルギーおよび天然ガスに関する覚書に署名した、トリポリを拠点とするアブドルハミド・ドベイバ氏率いる国民統一政府への支援を望んでいる。
エジプトは、国連主導の和平プロセスの一環として樹立されたドベイバ政権の権限は失効しており、同政権にはリビア沿岸でガスや石油を探査する取引に署名する権限はないと主張してきた。
エジプト政府は、そのような協定は、エネルギー資源の豊富なリビア沿岸地域の緊張を高めることになると警告していた。
これまでエジプト、トルコ両政府は、破たんした両国関係を正常化し、地域問題で共通理解を得るための行動計画を策定するべく、外務副大臣級の協議を二度にわたり行ってきた。
しかし、両国の外交関係は、まだ代理大使級の代表によるものであり、さらに上のレベルに格上げされてはいない。
ロンドンを拠点とする世界的なリスク管理・情報企業「ザ・インターナショナル・インタレスト」(The International Interest)のマネージング・ディレクター、サミ・ハムディ氏は、この二国間問題の核心は、エジプト側が、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がエジプトとの和解を模索しているのは、単に国内的に困難な状況に陥っているために和解を求め、地中海で自国の利益を確保しようとしているからだと確信している点にあるとしている。
「エジプトが要求に対して頑強になっているのはそのためだ。エジプト政府は和解を通して、単に短期的な政治的猶予を追求するのではなく、トルコがそのビジョンと政治的軌道の長期的な変化を示すという保証を求めているのだ」。
同氏はアラブニュースの取材に対し、このように語った。
トルコは昨年来、イスタンブールを拠点とするエジプトの反政府系テレビ局に対し、両国間の和解ムードの中で、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領に対する批判を弱めるよう求めてきた。
また、トルコに亡命中のジャーナリストに対しては、別の”安全な避難場所”を探すよう迫っていた。
ムスリム同胞団の支持者は先ごろ、アル・シャーク・チャンネルの元編集長であるホッサム・アル・ガムリ氏がトルコで逮捕され、2日後に釈放されたと主張したが、トルコ政府は、それは事実ではないと述べている。
ハムディ氏は、エジプト政府がトルコ政府側の”誠意”の表明として、反対派の人物の引き渡しを迫っていると考えている。
「それでも、トルコ政府は、身柄を引き渡せば自国のイメージダウンにつながり、短期的な政治的便宜のために長期的な同盟者を無慈悲に売り渡したとの非難を浴びる可能性が高まると懸念している」と述べた。
ハムディ氏によれば、エジプト政府もまた、トルコの和解努力について、エジプトの利益と両国関係の修復につながる共通の枠組みを見出すことではなく、リビアでの存在感を高めるための時間稼ぎであると考えている。
「エジプトは、トリポリのリビア政府が存続しているのはトルコによる防衛上の保証があるからであり、そうでなければ崩壊してしまうと考えている。このため、エジプト政府は、ほかの方法ではトルコが決して確保できないと確信するリビアとの経済・海事協定に対し、特に激怒している」と述べた。
英国王立防衛安全保障研究所のリビア専門家、ジャレル・ハルチャウイ氏は、エジプトとトルコの不一致はイデオロギーとはほとんど関係がないと考えている。
「それは領土、経済的報酬、基本的な地理に関係しているのだ」。同氏はアラブニュースの取材にこう語った。
「トルコ政府が10月3日にリビア政府と交わした炭化水素に関する覚書は、トルコ企業がリビア東部でのプレゼンスを拡大する必要があることを示している。エジプトはリビア東部を自国の勢力圏の一部とみなしている。そのため、エジプト政府側はこれを全く容認できないと考えている」。
ハルチャウイ氏はこのように付言した。
リビアにおけるトルコの軍事的存在感は、エジプト政府からも批判を浴びている。
11月1日から2日にかけてアルジェリアで開催されたアラブ連盟首脳会議では、各国首脳が、すべての国の内政に対する「外国からの干渉」を否定している。
それでも、専門家らは、エジプト政府とトルコ政府が共通認識を見出すことは可能だと考えている。
「トルコは、エル・シーシ大統領への批判を封じ込め、彼に対する扇動を積極的に防止する姿勢をますます強めている。さらに、トルコは、ドベイバ政権と、エジプトが支援するバシャガ政権を統合する外交努力を続けている。これは、トルコ、エジプトの利害の共存のための枠組みを確立するため、協力への道を約束する親善の印でもある。このプロセスの歩みは遅いかもしれないが、確実に動き出している」。
ハムディ氏はこのように述べた。
アンカラに拠点を置くシンクタンクORSAMのトルコ・エジプト関係の専門家であるニューマン・テルチ氏は、トルコ、エジプト両政府の関係を再構築するためには、リビアの政治的安定に脅威を与えるような政策をやめる必要があると考えている。
同氏は、「昨年12月に予定されながら実施されなかったリビアでの選挙が、同国に恒久的な政治的安定をもたらすことを期待している。この選挙というステップは、国内の政治指導者間の対話の構築に役立つだろう」とアラブニュースに語っている。
また、テルチ氏は、トルコのリビアにおける努力は、正当な政治的指導者にもっと権限を与えるべく、民主的プロセスを後押しすることを意味するとも指摘したが、エジプトもそのプロセスを支援する必要があると述べた。
「トルコの努力の見返りとして、エジプトも、地域の信頼できるパートナーになることでトルコに報いるべきだ」とテルチ氏は続けた。
しかし、ハルチャウイ氏は、リビアにおけるトルコの和解努力とされるものは、エジプトからは本物とは見られていないと考えている。
「もし、私があなたの要求や期待に応えていると言ったとしても、私自身が犠牲を伴う態度を示さなければ意味がないのだ」。同氏はこのように述べた。