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シリアとトルコの国防相、11年ぶりに会談

会談では、シリア危機、シリア難民、過激主義組織に対する共同戦線が議題の中心となった。(AFP)
会談では、シリア危機、シリア難民、過激主義組織に対する共同戦線が議題の中心となった。(AFP)
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30 Dec 2022 08:12:40 GMT9
30 Dec 2022 08:12:40 GMT9
  • 専門家:会談が行われたことはトルコによるシリア北部への地上作戦が当面の計画から外れたことを示唆している

メネクセ・トキャイ

アンカラ:トルコ、シリア、ロシアの国防相および情報機関トップは28日、モスクワで会談を開いた。トルコとシリアの間で進む関係正常化のまた新たな一歩となった。

会談が行われたことはトルコによるシリア北部への地上作戦が当面の計画から外れたことを示唆していると専門家は見る。しかし、トルコ軍とシリア軍がロシアからの領空使用許可を得てシリアのクルド人民兵組織YPGに対する限定的な攻撃を実施する可能性もある。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相、トルコのフルシ・アカル国防相、シリアのアリ・マフムード・アッバス国防相が会談に出席した。シリアとトルコの国防相会談は11年前のシリア内戦開始以降で初となった。

ロシアは長らくシリアとトルコの和解を推進している。トルコは、シリアのバッシャール・アサド大統領打倒を目指す反体制派を支援しシリア領内に軍を展開してきた。

会談では、シリア危機、シリア難民、過激主義組織に対する共同戦線が議題の中心となった。トルコ国防省は、会談は「建設的な雰囲気」の中で行われたと述べた。

2023年に議会選挙と大統領選挙を控えているトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は12月15日、次のように述べて今回の会談を示唆していた。「我々はシリア、トルコ、ロシアの三国として一歩進みたいと考えている。そのために情報機関、国防相、そして外相が集まるべきだ。その後で我々指導者が会談することもあり得る」

トルコ政府は国内では、経済危機が続く中でシリア難民を本国送還するよう強い圧力に晒されている。公式の数字ではトルコ国内のシリア難民は370万人に達しているとされる。

トルコ、シリア、ロシアは今後も三国間会談を行っていくとみられる。

「センチュリー・インターナショナル」の研究員であるアーロン・ランド氏は、今回の会談は紛争管理とエスカレーション防止のための新たな基本ルール構築への一歩であり、政治・外交レベルでの進展を促進する可能性があると語った。

さらに、難民問題はトルコ側にとっての優先性を考えれば非常に早い段階で提起された可能性が高く、また先立って行われた情報機関トップの会談でもおそらく取り上げられたと考えられると指摘した。

同氏はアラブニュースに対し次のように語った。「シリアとトルコは、完全な政治的合意や和平プロセスの終結を待つことなく、難民の本国送還やクルド人問題などの個別の問題について合意を探ることができる。同時にいくつかの問題について条件を交換しながらの段階的なプロセスになるだろう」

次はシリアとトルコの外相会談に期待がかかる。トルコのメヴリュット・チャヴシュオール外相は2021年10月にシリアの外相と短時間会談している。

チャヴシュオール外相は、28日の会談後の声明で次のように述べた。「シリア体制はシリア難民の帰還を希望している(…)難民を(安全な場所に)送還することが重要だ。その点で国連の関与がカギとなる。交渉はまだ始まったばかりだ」

ランド氏は、28日の会談はトルコがシリアへの新たな攻勢を実施しようとしていることと関連していると指摘した。最近の試みがロシアによって阻止されたため、シリアとの直接交渉がもう一つの選択肢と見なされているのだ。

「トルコは対クルド人勢力の戦線で成果を上げることに依然として関心を持っており、シリア民主軍(SDF)の弱体化が今でも最優先事項の一つであるというシグナルを送り続けている。今後数週間のうちにタル・リファットやその他の地域で何らかの形の共同行動を取る可能性がある。協調して何らかの形の非軍事的圧力をかけることも考えられる」

ランド氏は、2023年のシリアで紛争が凍結されるシナリオを予想しながらも、紛争が崩壊と暴力の拡大へと後戻りするリスクは常にあると語った。

「あるレベルで紛争が続きつつ分断されたシリアは、ある程度効果的・持続的に管理可能だ。トルコとシリアの和解はその方向への一歩だ。両国は、相互の利益のために状況の扱い方についての新たな基本ルールを設定したいと思っている」

ランド氏によると、何らかの理由で現在の交渉が決裂しない限り、どこかの時点でアサド大統領とエルドアン大統領の接触にまで至ることが予想されるという。はじめは電話会談かもしれないが、完全な首脳会談となる可能性もある。ただ、いつ行われるかは明らかではない。

「両国が希望すれば2023年春に実現する可能性がある。エルドアン大統領のスケジュールにとってトルコの選挙が非常に重要であることを考えると、同大統領は4月か5月、遅くとも6月上旬の開催を希望するかもしれない。まず外相会談をまとめる必要があるが、チャヴシュオール外相は早くとも2月以降になると言っている」

「論争と交渉にはまり込んでしまいトルコの選挙の前に会談を実施できなくなる可能性はある」

「選挙が終われば、国内問題で手一杯のエルドアン大統領にとって会談の緊急性は下がるかもしれない。だから私の予想では、来年の春5月あたりに何らかの形でエルドアン大統領とアサド大統領の接触が行われるか、そうならなければ明確な期限を決めることなく延期されるだろう」

しかし、シリア、トルコ、ロシアの三国の当局間の交渉が、シリアのクルド人主体の組織SDF(YPGはその一部)に対する合同作戦に発展することになれば、米国の怒りを買うかもしれない。

トルコ・ロシア関係の専門家であるアイドゥン・セゼル氏はアラブニュースに対し次のように語った。「米軍のシリアからの撤退の可能性がロシアの戦略の中心にあり、それがトルコとシリアを結びつけている。中期的には、この戦略へのトルコの関与がトルコと米国の関係における新たな断層線となるかもしれない」

「ロシアとアサド体制が支援するトルコの地上作戦の当面の標的には米兵が展開している地域は含まれないだろうが、長期的にはさらに南下しタル・アブヤド地方付近にまで至る可能性があり、米兵との衝突のリスクを起こしかねない」

したがって、28日の会談はロシアからシリアのクルド人民兵組織への最終警告と見なすことができるかもしれないと、セゼル氏は指摘した。

「事態が予想通りに進めば、プーチン大統領は戦略的な手段を取り、エルドアン大統領が大統領選挙で票を稼げるように同大統領と握手するようアサド大統領を説得するかもしれない。票が稼げるのは、シリア難民を本国送還できるというトルコ国民の希望に寄与するからだ」

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