Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • 多数の死者を出したヨルダン川西岸地区での急襲を受けイスラエルとガザ地区過激派が攻撃の応酬

多数の死者を出したヨルダン川西岸地区での急襲を受けイスラエルとガザ地区過激派が攻撃の応酬

2023年1月26日(木)にジェニンでイスラエル軍が実施した急襲に抗議するデモの最中、タイヤを燃やし国旗を振るパレスチナ人たち。(AP)
2023年1月26日(木)にジェニンでイスラエル軍が実施した急襲に抗議するデモの最中、タイヤを燃やし国旗を振るパレスチナ人たち。(AP)
Short Url:
27 Jan 2023 10:01:41 GMT9
27 Jan 2023 10:01:41 GMT9

エルサレム:27日早朝、ガザ地区の過激派組織がロケット弾を発射し、イスラエルが空爆を実施した。前日にイスラエルが占領下のヨルダン川西岸地区を急襲し、少なくとも7人の過激派と61歳の女性を含むパレスチナ人9人を殺害したことを受けて緊張が高まっていた。

ヨルダン川西岸地区における一回の急襲による死者数としては過去20年あまりで最多である。

暴力の再燃はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の極右政権に早くも試練を突きつけるとともに、来週予定されている米国のアントニー・ブリンケン国務長官の地域への訪問に影を落としている。

イスラエル軍によると、パレスチナの過激派組織はロケット弾5発をイスラエルに向け発射した。

そのうち3発は撃墜され、1発はイスラエル領内の空き地に着弾、もう1発はガザ地区内に落下したという。

イスラエルは過激派組織を標的にしたものとされる一連の空爆を実施した。現時点では死傷者は報告されていない。

多数の死者を出した26日のジェニン難民キャンプにおける急襲の衝撃は、翌日の金曜日にまで反響したはずだ。

金曜日はパレスチナ人が週に一度のイスラム教の礼拝のために集まる日であり、終了後にデモが行われることも多い。

ガザ地区を支配するイスラム主義過激派組織ハマスは以前、急襲に対する報復を行うと警告していた。

パレスチナ自治政府は、イスラム主義過激派組織の封じ込めに共同で取り組むために治安部隊がイスラエルとの間で維持している関係を停止すると発表し、さらに緊張を高めた。

これまでになされた警告は一時的なものだったが、それは自治政府がこの治安協力からメリットを得ていること、米国とイスラエルから治安協力を維持するよう圧力をかけられていることなどが理由だった。

パレスチナ自治政府は既に、ヨルダン川西岸地区内に散在する飛び地に対しては限られた統治権しか持っておらず、ジェニン難民キャンプのような過激派の拠点に対してはほとんど統治を及ぼしていない。

しかし今回の発表は、イスラエルが攻撃の抑止に必要だとして作戦をエスカレートさせることにつながりかねない。

イスラエル軍によると、27日早朝の同軍による空爆はパレスチナ過激派組織の訓練施設を標的としたものだった。目撃者や地元メディアによると、イスラエルのドローンがハマスの拠点に向けてミサイル2発を発射した後、戦闘機が同拠点を空爆し、大きな爆発が4回発生した。

ガザ地区から最初のロケット弾2発が発射された際と、イスラエルによる空爆後に残りの3発が発射された際には、イスラエル南部で空襲警報が鳴り響いた。

26日、パレスチナ人がヨルダン川西岸地区各地の街頭を埋め尽くしてジェニンへの連帯を唱えたため、イスラエル軍はさらに警戒を強めた。

マフムード・アッバース大統領は3日間の哀悼期間を宣言した。ジェニン難民キャンプでは住民が犠牲者のために共同墓地を掘った。

パレスチナ自治政府のナビル・アブ・ルデイネ報道官は、アッバース大統領が治安協力の停止を決定したのは「我が民族に対する攻撃が繰り返されている現状を考えて」のことだと述べた。

また、パレスチナが国連安全保障理事会、国際刑事裁判所、その他の国際機関に訴えを起こすことを計画していることも明らかにした。

米国のバーバラ・リーフ国務次官補(中近東担当)は、バイデン政権はこの状況について深く懸念しているとしたうえで、ジェニンで民間人に死傷者が出たという報告について「極めて遺憾」だと述べた。しかし、治安協力を停止し、この問題を国際機関に訴えるというパレスチナの決定は誤りであると警告した。

9人の死者と20人の負傷者を出した26日の銃撃戦は、イスラエル軍がジェニン難民キャンプにおいて異例の昼間に急襲作戦を実施した際に発生した。

同軍は、この作戦はイスラエル人に対する差し迫った攻撃を阻止することを意図したものだったとしている。

パレスチナの過激派組織「イスラム聖戦」の主要な拠点があるこのキャンプは、毎晩のようにイスラエルによる急襲逮捕作戦の的となっている。

ハマスの武装部門は、死者のうち4人がメンバーだと主張した。イスラム聖戦はその他の3人がメンバーだとしている。

アッバース大統領率いる世俗政党ファタハと緩い繋がりのある民兵組織「アル・アクサ殉教者旅団」がこれらより前に出した声明は、死者のうち1人はイズ・アル・ディン・サラハットという名前の戦闘員だとしているが、この人物が7人の過激派メンバーのうちの一人であるかどうかは不明だ。

パレスチナ保健省は、殺害された61歳の女性はマグダ・オバイドさんであると特定した。イスラエル軍は彼女の死亡報告について調査中だと述べた。

イスラエル軍はこの戦闘中に撮影されたとされる空撮動画を公開した。

この動画には、パレスチナ人と思われる人々が屋根の上から下にいるイスラエル軍に向かって石や火炎瓶を投げている様子が映っている。少なくとも1人のパレスチナ人は屋根の上から発砲しているのが確認できる。

パレスチナ保健省によると、26日のジェニン急襲より後の時間に、エルサレム北部でジェニン急襲に抗議していたパレスチナ人と衝突したイスラエル軍が22歳のパレスチナ人を射殺し2人を負傷させた。

イスラエルの準軍事組織「国境警察」によると、パレスチナ人らが至近距離から花火を発射してきたため彼らに向かい発砲したという。

パレスチナ人による攻撃が相次いだことを受けてイスラエルが昨年春にヨルダン川西岸地区における急襲作戦を強化して以来、緊張が高まっている。

パレスチナ人を銃撃したイスラエル兵を法的に免責しようとしている、イスラエルの国家安全保障相に新たに就任した極右政治家のイタマル・ベン・グビール氏は、自身が得意満面な笑みを浮かべながら治安部隊を祝福する様子を撮影した動画を公開した。

26日の急襲はジェニンに破壊の爪痕を残した。作戦の標的にされたと思われる2階建ての建物は黒焦げの残骸となっていた。イスラエル軍は、この建物に入って爆発物を作動させたとしている。

パレスチナのマイ・アル・カイラ保健相によると、戦闘の最中には救急医療隊員がなかなか負傷者に近づけなかったという。ジェニンのアクラム・ラジューブ知事は、負傷者を避難させようとしていた彼らをイスラエル軍が邪魔したと述べた。

両者はともに、イスラエル軍が病院の小児科病棟に向かって催涙ガスを発射して子供たちを窒息させたと非難した。この病院で撮影された動画には、女性たちが子供たちを廊下に運び出す様子が映っている。

イスラエル軍は作戦を円滑にするために道路を封鎖したとしているが、それによって救助が妨げられた可能性がある。また、衝突の際に発射された催涙ガスは漂って近くの病院内に入っていった可能性が高い。

イスラエルの人権団体「ベツェレム」は、26日のジェニン急襲はヨルダン川西岸地区における単一の事件としては2002年以降で最も多くの犠牲者を出した事件となったと述べた。

2002年は、第2次インティファーダ(パレスチナ蜂起)として知られる激しい暴力の波が最高潮に達した年であり、その傷跡はジェニンに今でも残っている。

国連のトル・ウェネスランド中東和平プロセス特別調整官は、今回の暴力に「深い恐怖と悲しみを抱いている」と述べた。

イスラム協力機構のほか、最近イスラエルとの国交を完全に修復したトルコも非難声明を発表した。隣国ヨルダン、サウジアラビア、その他の湾岸諸国もイスラエルによる急襲を非難した。

イスラム聖戦のガザ支部はイスラエルと繰り返し戦闘を行っている。直近には、昨年夏に3日間にわたって激しい戦闘が発生し、パレスチナ人数十人が死亡、イスラエル人数十万人の生活が混乱に陥った。

2007年にパレスチナ自治政府からガザ地区の実権を奪ったハマスも、イスラエルとの間で4度の戦争と数回の小規模な衝突を起こしている。

ベツェレムによると、ヨルダン川西岸地区および東エルサレムで150人近いパレスチナ人が殺害された2022年は、これらの領土における暴力による死者が2004年以降で最も多い年となった。

今年はこれまでのところ30人のパレスチナ人が殺害されている。

イスラエルは、殺害されたパレスチナ人の大半は過激派だったとしている。しかし、侵入に抗議した若者や衝突に関与していなかった人々も殺害されている。

今年これまでに(26日は除く)イスラエルの軍や民間人によって殺害されたパレスチナ人のうち、武装組織と繋がりのあったのは3分の1だった。

昨年は、パレスチナ人によるイスラエル人に対する攻撃で30人が死亡した。

イスラエルは、急襲の目的は過激派ネットワークの解体と攻撃の阻止だとしている。

一方、イスラエルはヨルダン川西岸地区を55年間にわたって延々と占領している現状をさらに固めようとしているというのがパレスチナ側の言い分だ。

イスラエルは1967年の中東戦争の際にヨルダン川西岸地区、東エルサレム、ガザ地区を占領した。パレスチナ人は、自分たちが将来的に樹立したい国家のためにこれらの領土を要求している。

イスラエルはヨルダン川西岸地区に数十ヶ所の入植地を建設しており、それらには現在50万人が暮らしている。

パレスチナ人や国際社会の大半はこれらの入植地を違法であり和平の障害であると見なしている。ただ、紛争終結に向けた交渉は10年以上停滞している。

AP

特に人気
オススメ

return to top

<