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ロシアとウクライナの紛争勃発から3ヵ月以上が過ぎ、NATO拡大が焦点に

米国のアントニー・ブリンケン国務長官とNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が2022年6月1日、ワシントンでメディアを前に会見を行った。(AFP)
米国のアントニー・ブリンケン国務長官とNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が2022年6月1日、ワシントンでメディアを前に会見を行った。(AFP)
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02 Jun 2022 08:06:33 GMT9
02 Jun 2022 08:06:33 GMT9

北大西洋条約機構(NATO)は1949年、加盟国の領土を保全する目的、そして必要であれば西欧においてソ連を打倒する目的で創設された。加盟国は共産主義の拡大をもう心配していないが、その多くの国々は、ロシアからの攻撃から領土を守ることには心を砕いている。

1990年代初めに冷戦が終結して以来、NATOの使命は何度も疑問視されてきた。90年代後半のバルカン半島の危機と、NATOによるボスニアとセルビアへの介入により、この軍事同盟には、冷戦終結後の世界における新たな目的を与えられることになった。アメリカ同時多発テロ(9・11テロ)の後、アフガニスタンでNATOが主導して行った軍事任務により、この同盟は20年近くの間、“圏外”でのミッションに注力するようになった。しかし、ロシアの最近のウクライナ侵攻は、NATOを1949年当時の原点の使命に似た集団的領土防衛のミッションへと立ち返らせた。

また、ロシアのウクライナ侵攻によって、NATO加盟国による軍事費(またはその不足)と、NATO拡大という二つの積年の問題に、再び光が当たるようになった。

政府間安全保障同盟としてのNATOは、加盟国と同等の強さしか有していない。欧州大陸向けの軍事費は乏しく、NATOの同盟強化のための能力の著しい喪失と、当惑させるほどの加盟国間格差をもたらしてきた。ほとんどの人は、1949年締結の北大西洋条約の第5条「一加盟国への武力攻撃は、全加盟国への攻撃とみなす」には馴染みがあるが、この条約を基礎とするNATO同盟全体の健全性について言えば、第3条が最も重要なのだ。第3条には、加盟国は最大限、「武力攻撃に対抗するため、加盟国個々の集団的能力を維持および開発する」とある。この第3条の誓約に応えていると言えるのは、NATOの一握りの加盟国だけだ。

しかしながら、ロシアのウクライナでの行動は、軍事費問題に対する欧州人の考え方を根底から変えるだろう。NATO加盟国の多くは、軍事費の増強を約束している。例えば、ドイツのショルツ首相は、NATOの目標値である国内総生産(GDP)比2%の国防費を確保すると誓約し、「自由と民主主義を守るため、我々は自国の防衛のためにさらに多くの投資を行う必要がある」と述べた。ドイツは、GDP比2%の軍事費目標を達成する一助とするため、2022年の予算で1,000億ユーロ(1,070億ドル)の特別軍事基金を創設するとの発表も行った。ロシアによる最近のウクライナ侵攻の前であれば、このような声明を聞くことはなかったであろう。

ほかにも、高い関心を集めている別の問題がある。NATOの拡大だ。

ロシアのウクライナ侵攻は疑いなく、欧米共同体の地政学的な様相を完全に変えた。冷戦終結後初めて、NATOの使命と目的がかつてないほどに鮮明になった。軍事同盟の一体性と結束が、これほど強まったことはなかった。

ルーク・コフィー

NATOの「門戸開放」政策は、加盟準備国おける近代化と改革の重要な原動力となってきた。この政策こそが欧州の安定と平和を促進し、加盟各国を集団的防衛の名の下にまとめることを容易にしてきた。1949年締結の北大西洋条約の第10条では、この条約の「根本思想を深め、北大西洋地域の安全保障に貢献する立場にある欧州のあらゆる国」が、同盟への参加を要請される可能性がある、とうたわれている。

資格ある国々に対する門戸開放政策は、1952年の最初のNATO拡大以来、欧米の安全保障に大きく寄与してきた。その後押しによって、欧州の安全保障の主要な保証人としての同盟が、確固たる存在となれたのだ。

12ヵ国が参加して始まったNATOの加盟国数は今、何度かの拡大を成功させた結果、計30ヵ国になっている。しかし、近年は、新しい加盟国を追加するペースは落ちてきている。ロシアはしばしばNATO拡大が脅威だと主張するが、それを示す事実など存在しない。2005年以降、新たに同盟に加わったのは4ヵ国のみだ。この4ヵ国はすべて、ロシアの国境から1,200キロ以上も離れたバルカン半島に位置している。

ある人は、正当化とは言わないまでも、ロシアのウクライナ侵攻の理由として、ウクライナによるNATO加盟の可能性を挙げている。確かに、ウクライナは2008年、最終的にNATOに加盟できると約束された。だが現実には、2022年2月24日、ウクライナはNATO加盟に近づくことさえできなかった。ウクライナ政府はこれを分かっていた。ロシア政府も分かっていた。東欧における地政学的進展を見守っていた誰もが、それを分かっていた。ロシアが2014年に最初にウクライナを侵攻し、クリミア半島を併合した時、その侵攻は、ウクライナ政府がEUとの連合協定に署名したことへの反動だったということも、覚えておく価値がある。当時の侵攻は、NATOとは何の関係もなかった。

ロシアのウクライナ侵攻は疑いなく、欧米共同体の地政学的な様相を完全に変えた。冷戦終結後初めて、NATOの使命と目的がかつてないほどに鮮明になった。軍事同盟の一体性と結束がかつて、これほど強まったことはなかった。NATOの既存メンバーではない欧州諸国の同盟参加への欲求が、これほど高まったことはなかったのだ。

ロシアは3ヵ月以上前、首都キーフをほんの数日で支配下に置き、NATOも何らかの意味のある方法で対抗してくることはないという確信の下、ウクライナに侵攻した。実際はそれどころか、NATOがウクライナの自国防衛を支えるために一丸となり、かつてないほどに団結した。ロシアの国力は今、近年のどの時代よりも弱まっており、ロシア政府も、自国以外の非難の対象を見出せなくなっている。

  • ルーク・コフィー氏は、ヘリテージ財団(Heritage Foundation)のダグラス・アンド・サラ・アリソン外交センター(Douglas and Sarah Allison Center for Foreign Policyの所長を務める。Twitter: @LukeDCoffey
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