• メッドグローバルの代表は、アサド政権が反政府勢力支配地域への支援活動を妨害していると非難
• 「飢えるか、ひざまずくか」という戦略が、人道支援が被災地に届くのを妨害している、とモハメド・ザヘル・サロール博士は指摘

レイ・ハナニア

シカゴ：主にシリア政府に起因する政治的障害が、6日にシリア北部で起きた壊滅的な地震の後の人道援助活動を遅らせていると、主要援助団体の代表が10日、述べた。

中東を含む世界各地の災害への対応に注力するメッドグローバルの代表で共同創設者のモハメド・ザヘル・サロール博士は、支援活動がシリアのバッシャール・アサド大統領政権に妨害されていると述べた。なぜなら、今回の地震の被災地域には、民主化を求める活動家や反体制活動家、12年続く内戦から避難した難民がいるからだという。

サロール氏は、米アラブ・ラジオ・ネットワークのインタビューでアラブニュースに対し、長引くシリア内戦が引き起こした地政学的分断が、震災被災者支援の最大の障害になっていると話した。

「シリアのこの地域に支援を届けるのは非常に困難です。シリアの地政学や、一つではない今のシリアの状況を知っている人はあまりいません。4つのシリアがあるのです。各地域は、異なる統治機関や異なる組織によって支配されています」と同氏は述べた。

「ダマスカスには、アサド政権が支配するシリアがあります。そこに支援の大半が送られています。アサド政権が支配している地域は、被災者の大半が住んでいるシリア北西部やイドリブと比べると、それほど大きな被害は出ていません。それらの地域は、反政府組織タハリール・アルシャーム機構（HTS）が支配しています」

HTSは、今回の地震で被災した地域の大部分を支配している。他の3つの地域は、クルド人勢力（SDF）が支配する北東部、北部にあるトルコ行政区（ユーフラテスシールド、オリーブブランチ、ピーススプリング）、そしてアサド政権を支援しているロシア・イラン連合が支配するシリアの大部分だ。

サロール氏によると、今回の地震の被災地にいるシリア人は約770万人だという。半数以上の420万人はシリア北西部のHTS支配地域にいる。350万人は隣国トルコにいる。

米国の対シリア制裁は、シリア人被災者への支援を妨害していない、と同氏は述べた。むしろ、シリア国内の政治的分断が最大の問題を引き起こしている。

「シリア政府がシリア国民にしたことが原因で、制裁が科されているのです。シリア政府の行動のせいで、今でも650万人のシリア難民がいるのです」

サロール氏は、シリア政府が拷問を行い、民間人に化学兵器を使ったとして非難されていることを強調した。

同氏は、トルコ政府がシリア人被災者の援助を支援したことを称賛した。

「人道支援は制裁の対象外です。この12年間、人道支援はシリア政府を経由して届けられています。制裁は人道支援や医薬品には適用されません。しかし、アサド政権はこれらの人々に支援を届けていません。唯一の方法はトルコを経由することです。トルコ当局はこの12年間、越境支援にとても協力的でした」とサロール氏は話した。

「もちろん、誰だって制裁は受けたくありません。ですが、制裁は支援とは無関係です。アサド政権は、自分たちの政策を推し進めるために制裁を利用しているのです。アサド政権は支援を利用しています。シリア政府は『飢えるか、ひざまずくか』という戦略を使っていると国連は言っています。支援を届ける唯一の方法はトルコを経由することです」

サロール氏は、シリアとトルコの国境沿いの地域にある越境地点は2つだけだと述べた。

「国連はそのうちの1つ、バブアルハワを経由する支援の通過を承認しました。2つとも、9日までは閉鎖されていました。トルコ当局は、閉鎖されていたのは、越境地点につながる高速道路が全て損傷していたからだと言っています」とサロール氏は話した。

欧州諸国の多くは、シリア政府を通して、アサド政権を経由して人道支援を送っている。サロール氏はこれを、ガザの人々を支援するためにイスラエルを支援することに例えた。

アサド政権が、今回の地震で被災したHTS支配地域に対して何らかの支援を行う可能性は低い、と同氏は述べた。

サロール氏はこの状況を「悲劇に悲劇が重なっている」と表現した。「ひどい状況です。支援を届ける唯一の方法は空輸ですが、このひどい状況に置かれた人たちに飛行機を使って支援を届けるという政治的意志を持つ国があるとは思えません」と同氏は付け加えた。

同氏は、米政府はシリア北部に複数の空軍基地を所有していると述べ、空軍基地を使って被災者に支援を届けることが可能であることを示唆した。

メッドグローバルは、シリア北西部で複数の病院や一次医療施設、移動診療所を運営している。メッドグローバルは、200人の医師、看護師、精神保健福祉士、精神衛生専門家、地域保健専門家から成る現地チームを保有していた。メッドグローバルの病院は、今回の地震の被災者の治療を継続している。メッドグローバルのチームはまた、他の病院に救急医療器具を分配し、発電機を稼働させるためのディーゼル燃料を供給している。

詳しい情報はMedGlobal.orgで入手できる。