
パレスチナ自治区ナブレス:占領下のヨルダン川西岸地区でイスラエルが今週実施した強制捜査では、ここ20年ほどの中で最悪の死者が出たが、1人の若いパレスチナ人看護師も対応にあたった。
重体の患者か次々と死んでいく中、イライアス・アル・アシュカー氏(25歳)は震えるような叫び声を上げた。
「お父さん! お父さん!」 ナブルスの衝突現場で死亡した11人に父が含まれていると知ったとき、アシュカー氏はそう叫んだ。
「水曜日の朝は病院でいつものシフトに入っていました。アンナジャ大学の医学生グループの対応で忙しくしていました」と彼はAFPに語る。
複数の負傷者の到来を告げる、緊急診療部の警報が鳴ったのはその時だった。暴力事件はここ数か月で増えており、珍しいことではなかった。
アシュカー氏が部屋に入ると、2人が対面のベッドに寝かされていた。「蘇生措置が行われていました」と彼は目に涙を浮かべながら語る。
「医師とともに最初の患者の対応に当たりました。若者でしたが、間もなく亡くなりました。そこで、2番目の患者の顔を見ることなく救命措置に当たりました」
「医師が蘇生を試みていたため、そのままにしてほかの負傷者の対応に行こうとしました。ですが、その患者に不思議な親近感を覚えたのです」
「走って戻り、患者のことを尋ねました。殉教者になったということでした。無意識にカーテンを開けると、殉教者は父でした」
父のアブドル・アジズ氏(65歳)は、旧市街で祈りを捧げた帰途でイスラエルの強制捜索に遭った。武器は持っていなかったという。
ナブルスで最近起きている衝突の理由の一端は、「ライオンズ・デン(獅子の巣)」という新たな武装組織の台頭にある。彼らは派閥に忠実な従来勢力を超越していると主張しており、イスラエルを標的とした多くの攻撃の実行犯とされている。
イスラエルの22日の捜索は、ライオンズ・デンの構成員2人と「イスラム聖戦」の構成員1人を対象としていた。
24日、若者がつくる哀悼の列の中にアシュカー氏もいた。「父はいつも通りの生活を送っていただけ」と話し、犯人に裁きが下される可能性は低いと嘆いた。
「パレスチナの人々は欧米の人々とどう違うというのでしょう?」
「私たちはただ、普通の人生を望むだけです」
AFP