
ベイルート:レバノンの有力者アッバス・イブラヒム総合保安機関局長の任期が今週末で終了する。内閣も議会も、同局長が法定退職年齢に達した後も留任することを可能にする措置について議論していないためだ。
レバノン南部出身のイブラヒム氏は2011年から総合保安機関の局長を務めており、イランを後ろ盾とする組織ヒズボラと良好な関係を持つ一方で欧米各国政府ともつながりを持ち、地域の重要な対話者と見なされている。
同氏は3月2日、レバノンの法定退職年齢である64歳になる。レバノン当局は過去に、その地位の空席が状況を不安定にする恐れがあると見なされる場合には高官が64歳以上になっても留任できるようにする例外的適用除外措置を取ったことがある。
しかし、レバノンの暫定内閣は27日の会合において任期延長について議論しなかった。ジアド・マカリ情報相は会合後に記者団に対し、内閣は「何もできない」としたうえで、決定は内相によって下されると述べた。
バサム・アル・マウラヴィ暫定内相はロイターによるコメントの要請に応じなかった。内務省は総合保安機関やその他の治安部隊を管理している。
レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相は先週のインタビューの中で、この問題は法改正が関わるため議会が扱うと述べていた。しかし議会は開催されておらず、イブラヒム局長の退任までには開催は予定されていない。
ヒズボラに近い関係筋がロイターに語ったところでは、同組織はイブラヒム局長の任期を延長するために「権力をフルに利用して」議会を開催させようとしたが、十分な支持を確保できなかったという。
イブラヒム局長の任期が終了した際にはマウラヴィ内相が臨時局長を指名するものとみられる。
レバノンは既に前例のない憲政上の危機に陥っている。昨年の議会選挙以降、大統領が空位で内閣が暫定的に機能している状態なのだ。
イブラヒム氏はヒズボラや隣国シリアの当局と親しいと見られているが、定期的にワシントンやパリを訪れ高官と会談してもいる。
そのため、同氏は重要な対話者と見なされており、米国の記者オースティン・タイス氏が行方不明になっている件や、レバノンとイスラエルの間での海上国境に関する米国による仲介のもとでの交渉(国境は昨年画定)にも関わっている。
同氏は今年、2020年8月に発生した壊滅的なベイルート港爆発事故を調査しているレバノンのタレク・ビタール判事によって起訴されたが、地位に留まった。同氏はこの時、起訴についてのコメントを避けた。
ロイター