レイ・ハナニア
シカゴ:米国のジョン・ケリー気候変動問題担当大統領特使は3日、気候変動や世界の海洋に関連した環境的脅威は続いているとしながらも、それらに対処するための国連の取り組みや、サウジアラビア、UAE、クウェート、バーレーンなどの中東諸国が国連に提供している支援を称賛した。
国連は環境問題に対処するため、1995年以降、気候変動会議、別名COP(「気候変動に関する国連枠組条約」の略)を年に一度開催している。この会議はアラブ世界でこれまで4回開かれている。2001年と2016年にモロッコのマラケシュで開かれたCOP7とCOP22、2012年にカタールのドーハで開かれたCOP18、そして2022年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで行われたCOP27だ。
今年のCOP28は11月30日から12月12日までドバイで開催される。ケリー特使はそのことに言及しつつ、国連に重要な支援を提供しているとしてサウジアラビアやUAEなどの湾岸産油諸国を称賛した。
同特使は次のように述べた。「UAEでは昨年、気候や化石燃料の問題に関する地域会議が初めて開催され、地域から11ヶ国が参加した」
「この会議からは共同声明が出された。(世界の平均気温の上昇を産業革命前の水準から)1.5度に抑える必要性、(二酸化炭素)排出量を減らす必要性、2030年までにやるべきことをやるということ、それらに関する非常に前向きな、非常に力強い声明だった。2030年までに十分な対策をしなければ2050年までに(二酸化炭素排出量)実質ゼロを達成できないからだ」
「UAEは独自に大規模な再生可能エネルギーを導入している。また、現在行っている努力の大部分を再生可能エネルギーや二酸化炭素回収・有効利用・貯留(の研究開発)に注いでいる。排出量削減の必要性を認識しているのだ」
「サウジアラビアがグリーン水素を生産するための巨大な太陽光発電施設の建設を計画していることも知っている。バーレーンやクウェートなど他の国も皆、向うべき方向を分かっている」
ケリー特使は、気候目標が達成されなかった場合に待ち受けている未来の環境について不吉な見通しを語り、さらなる対策が必要だと警告した。また、気候変動対策の取り組みには中東産油諸国による関与と「完全なコミットメント」が大きく貢献していると述べた。
同特使は、「世界では持続可能でない生活が行われている。歴史を見れば、文明が消滅してきた原因はそのような現実だ」としたうえで、自分たちが気候変動に対して与えている影響に「配慮していない」国が多いと指摘した。
「我々の自然との関係の基礎が危機に瀕している(…)地球上の種の半分が失われたのだ。我々は正しい方向に向かっていない。条約が必要だ」
気候変動対策において我々が既にいつかの「臨界点」を通り過ぎてしまったという「現実的な可能性」を示す有力な証拠が存在する。地球温暖化に伴うバレンツ海の海氷消失、汚染と水温上昇によるサンゴ礁死滅、永久凍土融解による大量のメタンガス発生、北極と南極における大幅な気温上昇などだ。
ケリー特使は、「海氷は恐るべき速さで溶けており、グリーンランドの氷床が消えてしまう可能性がある」と述べた。そうなった場合、海面が7メートル上昇し、優勢な海流が変わり、気象パターンが激変する可能性があるという。
同特使は、「科学からの警告を注意深く聞き入れる必要がある」としたうえで、世界の国々は「アワオーシャン会議」イニシアティブの6つのテーマに重点を置いた1000億ドル以上に相当する1800件以上の約束をしていると指摘した。このイニシアティブは2014年に米国務省によって導入されたもので、海洋への深刻な脅威に国際社会の注意を喚起すること、そして海洋保全や持続可能な開発を支援する行動を取ることにコミットするよう各国に促すことを目的としている。気候変動、持続可能な漁業、持続可能な海洋経済、海洋安全保障、汚染、海洋環境保護といった問題に重点を置いている。
ケリー特使は、気候変動や環境に関連した議論にアラブ世界が関与することの重要性に言及し、次のように述べた。「思うに、アラブ世界がそういった議論に関与することの利点の一つは、石油や天然ガスに精通しその業界で影響力を持ちつつ私が今述べたようなことの実行に取り組んでいる国があることは役に立つのかという問いが提起されることだ。私の考えでは、それは極めて重要になる可能性を秘めている」
同特使は、「化石燃料から排出される二酸化炭素が雨とともに海に降り注ぎ酸性度を高めている」と指摘したうえで、次のように述べた。「人類は数百年の間に、数百万年の間の変化より大きな化学的変化を海にもたらした。それが海洋学者や海洋生物学者たちが下した科学的結論だ」
ケリー特使は、テキサス州ヒューストンで来週開催される年次エネルギー会議「第41回CERAウィーク」に出席し、OPECのハイサム・アル・ガイス事務局長やUAEのスルターン・アル・ジャーベル気候変動問題担当特使などの中東の高官らと会談する予定を明らかにした。