
ウムアルファム(イスラエル):イスラエル系アラブ人の町ウムアルファムの住民たちは、自分たちを未来のパレスチナ国家の一部と見なすドナルド・トランプ米大統領の平和プランを恐れ、怒っている。
それに加えこの「世紀の協定」は、ユダヤ人国家が占領下のヨルダン川西岸においてかなりの領地を併合することにゴーサインを出すかもしれない。同地域では国際法に違反すると見なされている植民地に400,000人以上のイスラエル人が暮らしている。
50,000人以上が暮らすイスラエル北部の丘の上の町ウムアルファムでは、現地の人たちが181ページにわたるこのプランの13ページ目に書かれている条項にがくぜんとしている。それは、彼らのイスラエル市民権と、入植者の利益を交換することになるかもしれないものだった。
「平和から繁栄へ」と題したトランプの協定は、260,000人以上のイスラエル系アラブ人が住む14の町や村が集まるアラブの「三角地帯」の支配を、領地「交換」の一部としてイスラエルから、議論されているパレスチナ国家に移す可能性がある。
「この構想は、当事者間の合意に従って三角地帯のコミュニティがパレスチナ国家の一部となるようにイスラエルの国境を引き直す可能性を検討する」と、ホワイトハウスの公表した文章には書かれている。
そのアイデアを、2004年に同様の交換を提案したことのある世俗的民族主義政党「イスラエル我が家」党首のアヴィグドール・リーベルマン国防相は歓迎した。
しかし三角地帯の住民たちは、承服できない話と見なす。
「安易には受け入れません。この状況は非常に深刻で、とても心配しています」と、ウムアルファムのカフェにいたラセーン・ザイドは話した。
「私たちは流れに身を任せるつもりはありません」と、彼女の友だちのルブナ・アサリーがコーヒーをすする合間に付け加えた。
シャワルマ・ミートサンドイッチとソフトドリンクを手にした10代の5人のグループは、土曜にウムアルファムで行われる予定の、トランプのプランに反対する抗議運動に参加すると言う。
「自分たちの土地を守る準備はできています。私たちはこの計画に反対です」と、16才のアブデルは話した。
彼はパレスチナ国家を支持しているが、その首都はエルサレムであることが条件だ。プランではエルサレムを、イスラエルの「分割されていない」首都と認めている。
「もし私たちをイスラエルから追い出したいなら、エルサレムも連れていきたい」と、彼は言う。
トランプの提案は実際のところ、三角地帯の住民の物理的な移住を主張していない。
その代わりに、パレスチナの飛び領土となっている彼らのコミュニティの地位を変更し、2000年代初頭に流血を伴って起きた2度目のパレスチナ人蜂起の間に建設されたイスラエルの壁で、隣接するヨルダン川西岸から切り離すかもしれない。
彼らはパレスチナ国家の市民として、イスラエルの繁栄している経済や保健福祉制度から受けられる恩恵や、1948年のユダヤ人国家建設以前から多くの親族が暮らしてきたイスラエルに入国する自由を失うかもしれないことを恐れている。
「私たちはイスラエルに住むアラブ人少数民族の一部であり、自分たちの国土に住んでいます」と、イスラエルの国会議員でウムアルファム出身のヨセフ・ジャバリーンは言う。
「私たちはこのプランを拒否します。社会的・政治的な両面で存在し続けることを望みます」
「私はアラブ人であり、パレスチナ人です。また、イスラエル国の市民でもあります」と彼は付け加え、三角地帯がイスラエル内に陸封された「州」になるかもしれないことを恐れていると述べた。
主にアラブ人で構成される共同リスト野党連合に所属するジャバリーンは、プランが実施されればイスラエルにおけるアラブ人の人口が縮小し、その影響力が損なわれるかもしれないと話す。
アラブ人の数は現在180万人ほどで、イスラエルの人口の約20%を占める。
トランプのプランはアラブ人の全人口から約260,000人を移住させることになるかもしれず、残ったアラブ人は政治的に立場が弱くなると、イスラエル系アラブ人のNGOアダラーはウェブサイトで述べている。
「プランによれば、割り当てられたコミュニティの住民は自分の家に住み続けられるものの、イスラエルの国境が単純に引き直されて、彼らが国境の外に取り残されるかもしれない」と、アダラーは述べる。
もし実施されれば、「民族的な動機による分離」を通して人口動態の変動がもたらされるかもしれないとも言う。
ジャバリーンの共同リスト連合は9月の総選挙で、ベンヤミン・ネタニヤフ首相のライバルであるベニー・ガンツを首相に推した。
しかし、どちらの候補者も政権樹立のための十分な票を集めることができず、1年以内に3度目となる新たな投票が3月に予定されている。
ガンツはトランプのプランを支持しており、来週中にこのプランをイスラエルの国会に提出して承認を求めるつもりであると述べ、イスラエル系アラブ人たちからの非難を招いている。
ムハマンド・バラカ元首相にとって、投票所での選択は明確だろう。
「イスラエルの政治的既成勢力全体に反対するアラブ人のリストになるだろう」と、元首相は述べた。