
欧米などで報告が相次ぐ天然痘に似た「サル痘」について、厚生労働省は25日、国内でウイルス感染者を初確認したことを明らかにした。感染経路は主に飛沫(ひまつ)や接触感染で、先進国での死亡例はない。
厚労省は6月、法律に基づく特定臨床研究として、サル痘にも効果が期待できる天然痘のワクチンや治療薬を使用できる体制を構築。患者と接触する医療従事者らを対象に、ワクチンの事前接種も検討している。
世界保健機関(WHO)や国立感染症研究所などによると、サル痘は主にアフリカで流行する感染症。欧米などで5月以降、流行国への渡航歴がない人の感染が報告され、広がりを見せていた。
ウイルスを持つ動物にかまれた場合などに感染するが、発疹部分の接触や体液などを介して人から人へうつる。7~21日(平均12日)の潜伏期間を経て、発熱や頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1~5日続く。その後、天然痘に似た水ぶくれなどの発疹が顔や手足に広がる。
治療は症状を緩和する対症療法が中心で、多くは2~4週間で自然回復するが、小児や妊婦、免疫力が低下した人は重症化する場合もある。
致死率は1~10%とされるが、先進国での死亡例は確認されていないという。WHOは23日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たると宣言。各国に感染拡大防止に向けて取り組みを強化するよう求めた。
サル痘には、1980年に根絶が宣言された天然痘のワクチンに発症や重症化を予防する効果があり、国内でもテロ対策目的で生産、備蓄されている。海外ではサル痘の治療薬も流通しているが、国内では承認されていない。
時事通信