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米、「ロシアの戦争活動を支援した」トルコ企業に制裁

マイクロエレクトロニクス商社アズ・インターナショナルの事務所が入っているオフィスブロック。2022年11月15日、トルコのイスタンブール。(ロイター)
マイクロエレクトロニクス商社アズ・インターナショナルの事務所が入っているオフィスブロック。2022年11月15日、トルコのイスタンブール。(ロイター)
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14 Apr 2023 07:04:25 GMT9
14 Apr 2023 07:04:25 GMT9
  • バイデン大統領は選挙が近づく中で外交的勝利を得ようとしているとアナリストは指摘する
  • しかし、米国は「NATO加盟国の安定に影響を与えないよう慎重を期している」

メネクセ・トキャイ

アンカラ:米国が最近、ロシアと取引をしたとされるトルコ企業数社に輸出制限を課すと発表したことで、これらの制裁の有効性について、また選挙を前にしたトルコが緊密化するロシアとの貿易関係を守るために何らかの対応をすべきかについて、議論が巻き起こっている。

米国が、ロシアの制裁回避を支援したとしてトルコ企業に制裁を科すのはこれが初めてだ。昨年には、MMKというロシア企業のトルコ支社(2つの鉄鋼施設を所有)が米国による制裁の対象となった。

米商務省は12日、ロシアの軍事・防衛産業に対して米国製品を供給することで米国の制裁体制に違反したとして、中国やトルコを含む国々を拠点とする28社に新たに輸出制限を課したと発表した。

この制裁の対象となった企業には、ウクライナ侵攻開始直後の2022年3月に設立されたトルコのエレクトロニクス企業アズ・インターナショナルが含まれている。同社は、外国に由来するコンピューターチップなどのエレクトロニクス技術をロシアに移転したとされている。

また、アリム・カジシュメロヴィチ・フィロフ氏がトップを務めるトルコ企業デクシアス・トルコも制裁の対象となっている。同社は仲介業者として、ロシアの防衛調達会社ラジオアフトマチカのために米国製エレクトロニクス部品を調達したとされている。

米商務省は2月、「ロシアが兵器を維持・修理・補給する能力」を制限することを意図したこのリストには2022年2月以降400社以上が追加されていると発表した。

ブライアン・E・ネルソン財務次官(テロ・金融情報担当)は次のように述べた。「ロシアはウクライナ侵攻を受けて科された広範な多国間制裁および輸出制限を回避する方法を模索しているが、米国は同盟国やパートナーと共に、プーチン大統領の戦争を支えているそのような回避の試みを引き続き阻止していく」

「本日の措置は、ロシアの戦争を支援する第三国の主体に対し厳しい代償を課すというG7の確約を実行することに対する我々の専心を明確に示すものだ」

この措置と同じタイミングで米国務省のジム・オブライエン制裁調整室長も声明を出し、トルコは制裁対象の欧米製品をロシアの戦争活動を支援するために再輸出することを禁止すると約束したはずだと警告した。

ワシントン近東政策研究所トルコ研究プログラムディレクターのソネル・カガプタイ氏は、これははじまりに過ぎず、米国は今後さらに厳しい措置をトルコ企業に課すと考える。

同氏はアラブニュースに対し次のように語る。「米国はこれから、ロシアと取引をしているいくつかの企業に対してさらに厳しい制裁を科すだろう」

「これは米国での選挙を前にして外交的勝利を得ることを狙うバイデン政権の政策だ。そのためにはこれらの制裁が実際に機能する必要がある」

「米政府はこれまで企業にコンプライアンスを求める路線を取ってきた。今回の動きはそれらの取り組みを強化するものかもしれない」

今回の警告に合わせるように、トルコ政府は最近、ロシアへの輸出が禁止されている外国製品のリストを国内の鉄・非鉄金属部門の企業に配布した。さらに欧州委員会に対し、欧米による制裁に従うために3月1日以降は制裁対象製品がロシアに渡らないようにすると口頭で保証した。

しかし専門家は、NATO加盟国であるトルコへの負の影響や、それが国際社会に波及する可能性に注意を促している。

カガプタイ氏によると、米政府も慎重に行動しており、この重要な時期にトルコの経済的安定性や政治に干渉することは望んでいない。

同氏は次のように語る。「しかし、これは氷山の一角だ。選挙が終われば、米国はトルコ企業に対しロシアと取引しないようもっと厳しく要求するだろう。そうなればトルコの対ロシア貿易規模が影響を受けることは間違いない」

ロシアは今でもトルコの主要なパートナーであり、トルコが通貨危機により外国為替収入を切実に必要としていた昨年には貿易が増加している。

欧米による制裁をよそに、ウクライナ侵攻が始まってからトルコとロシアの間の貿易は増加しており、ロシア企業数百社が制裁を回避するために(ロシア人にとって金融避難所となっている)トルコに支社を開いている。

両国間の貿易規模は昨年には682億ドルに達した。今年3月のトルコからロシアへの輸出額は285%増の11億ドルだった。

イスタンブールのシンクタンク「エダム」の会長であるシナン・ウルゲン氏は、米国が最近トルコ企業に対する制裁を発表したことは、米国が採用している制裁体制はトルコのようなNATO加盟国にも及び得ることを示していると考える。

同氏はアラブニュースに対し次のように語る。「しかし、この措置の文脈を本質的に説明する必要がある。トルコからロシアへの輸出が全てこの措置から影響を受けるわけではないのだ」

「制裁の対象となった企業は、広範囲の重要なテクノロジー製品に関して米国による制裁に違反したことが分かっている。実際、テクノロジーは米国の政策立案者が懸念する分野だ。これらの製品がロシアの戦争活動を支えていると見なしているからだ」

しかし今回の措置は、一部の重要なテクノロジー製品の再輸出に対する懸念が実際に存在していることも同時に示しているとウルゲン氏は言う。

「特にこの特定の範囲の製品について、トルコに対する圧力が維持される可能性が高い」

ウルゲン氏によると、これまでトルコと米国の当局の間では制裁の実施について暫定協定が存在してきたという。

「トルコは極めて慎重に、制裁体制によって設定されたいくつかの重大なレッドラインを越えないようにしている」

「例えば過去に、トルコの銀行システムがロシアの決済システム『ミール』においてロシアのクレジットカードによる取引を受け入れていたことについて明確に苦情が出された時、トルコは最終的にこのシステムから撤退した」

「制裁に関してはトルコと米国の当局の間に良い協力関係があり、今後も続くだろう」

「より対立的な状況になることは双方とも望んでいないと思う。両国の政治的関係やトルコの経済的利益を損なうことになるからだ」

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