
バグダッド:ウクライナの外相は17日、バグダッドを珍しく訪問した際、欧州での戦争の終結を探るためのウクライナとロシアの間の交渉を仲介するとのイラク側からの申し出を拒否した。
ウクライナのドミトロ・クレバ外相は、ロシアがウクライナの領土から完全に撤退しない限りいかなる和平交渉も行わないという同国の立場を改めて表明した。
ロシアはウクライナに対し、2014年に掌握したクリミアにおけるロシアの主権と、昨年9月のドネツク・ヘルソン・ルハンスク・ザポリージャ4州の併合を認めるよう求めている。
ウクライナはそれらの要求をはねつけ、ロシア軍が全ての占領地域から撤退しない限りは交渉を行わないと主張している。
クレバ外相はイラクで同国のフアード・フセイン外相と会談した。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降初めてとなるウクライナ政府関係者のバグダッド訪問であり、ウクライナ外相による訪問としては11年ぶりとなった。
フセイン外相は、イラクが長年にわたり戦争や紛争を経験してきたこと、また、最近のサウジ・イラン交渉のような敵対する当事者間の交渉の場となってきたことに言及した。
サウジアラビアとイランの間の交渉はイラクで数回行われたが、結局決裂した。その後、交渉は中国を仲介役として再開し、地域における敵対国同士だった両国が国交を回復するという先月の発表につながった。
フセイン外相は17日の記者会見で、「イラクには緊張関係にある国の間のコミュニケーションを仲介してきた経験があり、平和に奉仕する用意がある」と述べた。「戦争の継続は両国だけでなく世界にとって危険なことだ」
中東諸国の例に漏れず、イラクは歴史的にウクライナから輸入する穀物に大きく依存しているため、戦争が始まってから消費者は食料価格の上昇に苦しんでいる。
クレバ外相は、「ウクライナはイラクを架け橋となることができる国だと見ているが(…)ロシアは攻撃を続けており(…)それが和平への道における最大の障害だ」と述べた。
「戦争を止め撤退すべきだという非常に単純な事実をロシアに認めてもらう必要がある」
現在のイラク政府はイランと親密であると見られているが、イランはロシアがウクライナ戦争で使用するドローンを供与しているとして米国から非難されている。イランはロシアにドローンを送ったことは認めているが、ウクライナ侵攻開始前だったとしている。
イラクは米国とも緊密な関係を維持しており、米国はイラクの金融部門に対し強い影響力を持っている。2003年に米国主導の侵攻により独裁者サダム・フセイン大統領(当時)が打倒されて以降、イラクの外貨準備高は米連邦準備銀行に保管されている。
クレバ外相はイラク側からの仲介の申し出を拒否しながらも、イラクとの関係強化を望むとしたうえで、今回の訪問は「ウクライナ・イラク関係を再構築する」ための努力の一環であると述べた。
AP