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報道団体、イスラエルにジャーナリスト死亡の説明責任を果たすよう求める

ヨルダン川西岸の町ジェニンで、アルジャジーラの同僚だったシリーン・アブアクレ氏の遺体を囲むジャーナリストたち。(AP)
ヨルダン川西岸の町ジェニンで、アルジャジーラの同僚だったシリーン・アブアクレ氏の遺体を囲むジャーナリストたち。(AP)
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11 May 2023 01:05:09 GMT9
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  • ジャーナリスト保護委員会は、過去20年余りの間で20人に及んでいるジャーナリストの死亡について、イスラエル軍が組織的に説明責任を回避していると批判した

エルサレム:イスラエル軍は過去20年余りの間で20人に及んでいるジャーナリストの死亡について、組織的に説明責任を回避しており、行った調査は進行も遅く不透明なもので、訴追や処罰も行われていない、と報道の自由を保護する国際団体、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)が9日に発表した報告書で批判した。

ジャーナリスト保護委員会による今回の報告書は、衛星放送局アルジャジーラのパレスチナ系米国人ジャーナリスト、シリーン・アブアクレ氏の死から1年の節目を控えたタイミングで発表された。アブアクレ氏は、占領下のヨルダン川西岸でイスラエル軍による襲撃を取材中に殺害された。

イスラエル軍は、アブアクレ氏がイスラエル軍の銃撃で死亡した可能性が高いとしながらも、銃撃は事故であるとし、懲戒処分は発表していない。

「シリーン・アブアクレ氏の殺害と、軍の調査プロセスで誰も責任を問われなかったことは、偶然の出来事ではない」と、ジャーナリスト保護委員会の特別プロジェクト担当ディレクターで、今回発表された報告書の編集者の一人であるロバート・マホーニー氏は言う。「これは、責任を回避する目的で用意されたと思われる対応方法の実例なのだ」

ニューヨークに本拠を置くジャーナリスト保護委員会は、過去22年間にイスラエル軍の銃撃によって殺害された20人のジャーナリストの事例を記録している。うち18人はパレスチナ人、残りの2人は欧州からの特派員である。アブアクレ氏を含む少なくとも13人は、ジャーナリストであることが明らかであったか、報道記章のついた車両で移動していたと、同保護委員会は述べている。

報告書は、次のように述べている。「これらの死について、誰一人として起訴されず、責任を問われてもいない。こうした対応は、報道の自由を著しく損ない、ジャーナリストの権利を不安定なものにしている」

報告書は、ジャーナリストたちの死とその扱いには「一定のパターン」が見られるとしている。イスラエル当局は通常、事件がまだ捜査中である間は証拠や目撃者の主張を無視し、ジャーナリストは何の証拠も示されないままテロ関与の嫌疑をかけられる。

捜査は数カ月から数年間も長引いたり、一切が秘密のままに終了することもあるのに対して、遺族はほとんど法的手段を取ることが出来ない。

「軍によるジャーナリストのような民間人の殺害を調査するイスラエルのプロセスは、ブラックボックスになってしまっている」と報告書は指摘する。「プロセスを詳細に説明した政策文書もなく、調査結果は機密扱いとなるのだ」

アブアクレ氏のように、ジャーナリストが外国のパスポートを所持している場合、軍による調査はより厳しいものになる傾向があるが、そうした事例ですら正式な起訴は行われていないと報告書は明らかにしている。

以下の3名のジャーナリストの各死亡事件について、犯罪としての捜査を行うよう報告書は求めている: 2018年にイスラエル・パレスチナ国境沿いの抗議活動を取材中に殺害された著名なパレスチナ人ジャーナリスト、ヤセル・ムルタジャ、2018年にガザの抗議活動を取材中に殺害されたもう一人ジャーナリスト、アーメド・アブ・フセイン、そしてアブアクレの各氏である。

イスラエル当局は、ムルタジャ氏が過激派であると主張したが、証拠は示していない。

アブアクレ氏については、イスラエル軍は、彼女が過激派と誤認したイスラエル兵に撃たれた可能性が「非常に高い」と述べた。軍はまた、パレスチナの武装勢力に撃たれた可能性にも言及した。しかし、その主張を裏付ける証拠は示さなかった。

イスラエル軍は声明で、軍は「作戦行動中の民間人への危害を遺憾に思うとともに、報道の自由とジャーナリストの専門的な仕事の保護は非常に重要であると考えている」と述べた。

声明はまた、軍は「安全保障の複雑な現実」の中で活動しており、非戦闘員を意図的に狙うことはなく、実弾射撃は最後の手段としてのみ使用すると述べている。民間人が死亡した場合には、「事件が戦闘状況下で発生した場合、またはイスラエル国防軍兵士による犯罪の疑いがない場合を除き」、通常、犯罪捜査が開始されるとしている。

アブアクレ氏は当時51歳で、昨年2022年5月11日にヨルダン川西岸北部のジェニン難民キャンプでイスラエル軍の襲撃を取材中に撃たれた。この地域はパレスチナ人武装勢力の拠点として知られている。

イスラエル軍は同キャンプで頻繁に活動しており、同日朝も、兵士たちが武装勢力との激しい銃撃戦に巻き込まれていたと軍は発表している。しかし、パレスチナ人武装集団がアブアクレ氏の近くにいたことを示す証拠は何も示されていない。

AP通信を含む多くの独立系調査機関が、アブアクレ氏はほぼ間違いなくイスラエル軍の銃撃で死亡したと結論づけたが、そのエリアで武装勢力が活動していた証拠は見つかっていない。目撃者の証言や一般の撮影による動画でも、彼女が撃たれる前にこのエリアが平穏な様子だったことが示されている。

米国は、イスラエル軍兵士が誤って殺害した可能性が高いと結論づけたが、その結論に至った経緯は説明していない。米国が主導して弾丸の分析が昨年7月に行われたが、弾丸がひどく損傷していたため、調査当局は明確な結論を出せなかった。

パレスチナ自治政府、アルジャジーラ、そしてアブアクレ氏の遺族は、殺害は意図的なものだったとして軍を非難している。アブアクレ氏は、半世紀以上にわたるイスラエル軍統治下の厳しい現実の報道により、アラブ世界中でその名を知られたベテランジャーナリストだった。

報告書は、アブアクレ氏への銃撃が報道の自由に脅威を与えていると指摘している。

銃撃当時、外国人記者協会(FPA)のギョーム・ラヴァレ会長はジャーナリスト保護委員会に対し、「同様の襲撃や(アブアクレ氏の殺害以後著しく高まっている)緊張を取材する記者の多くは、自分も銃撃されるのではないかと恐れている」と語った。

ラヴァレ会長は、特にパレスチナ人の記者の間で、危険が強く意識されていると述べた。

外国人記者協会は、AP通信を含む、イスラエルとパレスチナ地域で活動する数十の国際的な報道機関を代表している。FPAは、AP通信を含むイスラエルとパレスチナ領土で活動する数十の国際メディア組織を代表している。

ジャーナリスト保護委員会は報告書の中で、イスラエル軍に対し、交戦規則を改正して、ジャーナリストの標的化の防止、迅速で独立した透明性のある調査の保証、調査結果の公表を実現するよう求めた。

同委員会はまた、米国に対し、アブアクレ氏殺害に関するFBIの捜査状況について最新情報を公表するとともに、イスラエルに交戦規則を改正に向けて圧力をかけるよう呼びかけている。

AP

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