ドバイ、アラブ首長国連邦:AP通信が分析した衛星画像と専門家によると、イラン中部に位置するザグロス山脈の頂上付近で作業員らが地下深くに核施設を建設しており、地下施設を破壊するため米国が設計した最終手段である兵器の射程外である可能性が高い。
プラネットラボ社の写真とビデオから、イランが、政府の核開発計画をめぐり西側諸国と対立する中、繰り返し妨害工作を受けているナタンツ核施設近くの山でトンネルを掘っていることが明らかになった。
世界列強との核合意が破綻した現在、イランは兵器級に近いウランを生産しており、核計画をめぐる外交が行き詰まる中で、この施設設置は同国政府が原子爆弾を開発する可能性を阻止しようとする西側諸国の取り組みを困難にしている。
米国に拠点を置く軍備管理協会の核不拡散政策部門の責任者、ケルシー・ダベンポート氏は、そうした施設が完成すれば「新たな負のスパイラルを引き起こす危険がつきまとう最悪のシナリオとなるだろう」と警告した。「イランが爆弾製造にどれほど近づいているかを考えると、米国とイスラエルのレッドラインに抵触することなくその核計画を強化するという余地はほとんどない。したがって、この時点で、これ以上のエスカレーションは紛争のリスクを高める」
ナタンツにある核施設の建設は、当時のドナルド・トランプ大統領が米国をイラン核合意から一方的に脱退させた5年後に行われた。トランプ氏は、この合意がイランの弾道ミサイル計画にも、中東全域の民兵への支援にも対処していないと主張した。
しかし、その核合意は、イランのウラン濃縮純度を最大3.67%までに厳しく制限し、民間の発電所への電力供給しか行なえないようにし、さらにウラン貯蔵量の上限をわずか300キログラムに留めていた。
核合意が終結して以来、イランはウラン濃縮を60%まで引き上げると表明したが、最近の査察で、同国が純度83.7%のウラン粒子を生産していたことが明らかになった。兵器級とされるウラン濃縮度90%に達するまであと一歩のところにいる。
国際原子力機関(IAEA)事務局長によると、2月の時点で、イランのウラン貯蔵量はオバマ政権時代の核合意の10倍以上であり、同国が「いくつかの」核爆弾を製造するのに十分な濃縮ウランを持っていると推定されていた。
ジョー・バイデン大統領とイスラエル首相は、イランの核兵器製造を認めないと述べた。ホワイトハウスはAP通信への声明の中で、「外交がその目標達成における最善の方法であると信じているが、大統領はあらゆる選択肢を検討しているとも明言している」と述べた
イランは核兵器を目指していることを否定しているが、同国の当局者は核兵器開発能力について公然と議論している。
イランの国連代表部は、施設建設に関するAP通信からの質問に対し、「イランの平和的な核活動は透明性が高く、国際原子力機関の保障措置制度に従っている」と述べた。しかし、イランは長年にわたって国際機関の査察受け入れを制限してきた。
イランは、2020年7月に爆発と火災に見舞われたナタンツの地上遠心分離機製造施設に代わる新しい建設を行うと発表した。イラン政府は、この事件を起こしたのが核開発計画に対して破壊工作を行っていると長年疑われていたイスラエルだと非難した。
イラン政府は同施設に関する他の計画を認めていないが、ウランを施設に導入する予定があれば、IAEAに申告しなければならない。ウィーンに拠点を置くIAEAは、新しい地下施設に関する質問には回答しなかった。
新しいプロジェクトは、テヘランの南約225キロメートルにあるナタンツの隣に建設されている。ナタンツは、その存在が20年前に知られるようになって以来、国際社会の懸念の的となっている。
対空砲台、フェンス、イランの準軍事的組織である革命防衛隊によって保護されているこの核施設は、不毛のイラン高原中央部に2.7平方キロメートルにわたり広がっている。
プラネットラボ社が4月に撮影し、AP通信が分析した衛星写真からは、イランがナタンツの南側フェンスのすぐ向こうにある「Kūh-e Kolang Gaz Lā」または「つるはしの山」と呼ばれる場所の地下を掘っていることが明らかになった。
ジェームズ・マーティン不拡散研究センターが分析した別の画像によると、山腹に4つの入り口があり、2つは東に、残り2つは西に掘られている。
それぞれの入り口は幅6メートル、高さ8メートルである。
作業の規模は、西側に2つ、東側に1つある大きな土塁から測ることができる。
同センターの専門家はAP通信に対し、廃物の山の大きさと他の衛星データから、イランは80メートルから100メートルの深さに施設を建設している可能性が高いと述べた。AP通信のみが入手した同センターの分析は、衛星画像に基づいてトンネルシステムの深さを推定した最初のものである。
ワシントンに拠点を置く非営利団体の科学国際安全保障研究所は長年イランの核計画に注目しており、昨年にはトンネルがさらに深くなる可能性を示唆した。
専門家はこの建設プロジェクトの規模から、イランは地下施設を遠心分離機の製造だけでなく、ウラン濃縮に利用できる可能性が高いと語る。数十台の機械からなる大きなカスケードに配置されたチューブ状の遠心分離機は、ウランガスを急速に回転させて濃縮する。
カスケードの回転を増やせば、イランは山の守られながらウランを迅速に濃縮することが可能になる。
「それで、施設の深さが懸念される。我々にとってはるかに困難になるからだ。典型的な地中貫通爆弾のような、通常兵器を使用して破壊するのはずっと難しくなる」と、トンネル工事の分析を主導した同センターの研究員スティーブン・デ・ラ・フエンテ氏は述べた。
新しいナタンツ施設は、2009年に米国や他の世界の指導者らが暴露した、イランのフォルドにあるウラン濃縮施設よりも地下深くにある可能性が高い。その施設は、空爆によってイランが核施設の構造を堅牢にしているという西側諸国の懸念を誘発した。
そのような地下施設の存在は、米国の大型貫通爆弾「GBU-57」開発につながった。米軍によると、その爆弾は爆発する前に少なくとも地表から60メートルまで貫通できる。報道によれば、米国当局者はこうした爆弾を2発続けて使い、施設を確実に破壊することを検討している。こうしたワンツーパンチが、ナタンツのような深さにある施設に損害を与えるかどうかは不明である。
そのような爆弾は検討から外れる可能性があるため、米国とその同盟国は核施設を狙うにあたり、選択肢があまり残されていない。外交が失敗すれば、妨害工作が再開される可能性がある。
ナタンツは既に、イスラエルと米国が開発したとされる「スタクスネット・ウイルス」の標的となり、イランの遠心分離機が破壊された。イスラエルはまた、核計画に関与した科学者を殺害し、爆弾を搭載したドローンで施設を襲撃し、その他の攻撃を行なったと考えられている。イスラエル政府はコメントを拒否した。
専門家によると、そのような破壊活動はイランを爆弾開発へとさらに引き寄せるかもしれない。また、空爆、さらなる妨害工作、スパイが到達できない可能性がある山の地中深くに核施設を配置するかもしれない。
「妨害工作は短期的にはイランの核計画を後退させるかもしれないが、核武装したイランを警戒するための実現可能な長期戦略ではない」と、核不拡散の専門家ダベンポート氏は述べた。
「イランの核開発計画をさらに地下へと押しやれば、核拡散のリスクは増大する」
AP