
メネクセ・トキャイ
アンカラ: トルコ新大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアン氏は4日夜、就任式において新内閣を発表した。その人選は経済および外交政策に関する新政権の方向性を浮き彫りにするものだ。
新副大統領となったジェヴデト・ユルマズ氏は経済政策にバックグラウンドを持つ。エルドアン氏が国の実権を握って20年が経ち、経済問題に優先して取り組む方針としたことを示唆する人選と言えるかもしれない。
財務相には、投資家重視で正統派の経済政策を支持し、金融市場からの評価も高いメフメト・シムシェキ氏が任命された。
2009年から2018年まで財務相と副首相を務めたシムシェキ氏は、選挙後の市場の信頼回復を担う。
同氏は前職では金融引き締めを主導していたが、エルドアン氏の娘婿ベラト・アルバイラク氏と交代した。
シムシェキ氏が入閣することで、現在の非正統的な低金利政策から方針転換するつもりなのかはいまだ不確かだ。しかし同氏が任命されたこと自体、すでに市場にとっては、何らかの変化が起こる重要なシグナルだと言える。
リラが対ドルで記録的な安値に向かって下落している現状、経済政策は急激でない、段階的な転換となるものと予想される。
エルドアン氏は再選後のスピーチで「我々は国際的評価の高い金融マネージメントチームを用いて、投資と雇用に焦点を当てた経済を形成していく」と述べた。
トルコの2023年第1四半期の経済成長率は4%で、予測のわずかに上にとどまった。
ワシントン近東政策研究所のシニアフェローであるソネル・カガプタイ氏はアラブニュースの取材に対し、「もし彼が超低金利を調整する権限を与えられれば、トルコ経済は回復するかもしれない。しかしその前に、トルコが観光客にとって安価で輸出も手頃な国となるよう、リラの切り下げを行うものと予想されます」と語った。
「もしシムシェキ氏が内閣で柔軟に動ければ、市場も彼にはトルコ経済を回復させるのに十分な権限があると考えるでしょう」とカガプタイ氏は述べた。
予備金が減っていく中、何らかの経済政策転換を短期間で行うことは避けられない。
しかしそうした転換が中央集権構造の中でどれだけ実質的で持続的な効果を持つかは依然として不透明で、発表された新しいロードマップにかかっている。
専門家によると、エルドアン氏がこのまま10ヶ月先の地方選まで緊縮政策に切り替えずに低金利の状態を続ければ、シムシェキ氏の入閣は経済政策にあまり大きな変化をもたらさずに終わることになるだろうという。
ロンドンに拠点を置くテネオ・インテリジェンスのヴォルファンゴ・ピッコリ共同社長によると、シムシェキ氏の内閣復帰によって現在のトルコの経済政策は部分的に再調整されるが、従来の金融政策アプローチにUターンで一気に逆戻りする可能性は依然として低いという。
「エルドアン氏が2024年3月の地方選を優先していることを考えると、彼が経済面でのより現実的なスタンスをどれだけの間容認するかも不明だ」とピッコリ氏は述べた。
一方、国家情報機構の元長官であるハカン・フィダン氏が新外相として入閣した。フィダン氏はエジプトおよび湾岸諸国を筆頭とする国々との和解を始めたことで知られる。
「アメリカ政府内では彼の信頼は厚く、信頼に足る外相と目されています」とカガプタイ氏は述べた。
「彼はまた、対シリアや対ロシア政策といった重要な国際的ポートフォリオを担当していました。彼の入閣は非常に重大です。彼は今や運転席にいるのですから」
カガプタイ氏の予想では、新内閣は西側諸国に対して従来より友好的で、近隣諸国に対しても軟化した姿勢を見せるだろうという。
4月下旬、フィダン氏はシリアのバッシャール・アル・アサド政権との和解プロセスの一環として、ロシア、イラン、シリア外相との会談に出席した。
昨年、カタールワールドカップのコート外で、エルドアン氏とエジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領の間で交わされた握手は、両国の諜報機関および外務相との会談の結果だとも考えられている。
カガプタイ氏によると、エルドアン氏は自分が社会問題や新しい憲章の起草といった、ほとんど毎日のマクロ管理を要する内務に集中するため、経済および外交政策において第一級のエキスパートを求めているという。
内閣組閣の際に議席を確保したということは、国民投票に基づく立法府の過半数をいち早く獲得したいのだろう」とカガプタイ氏は加えた。
一方、トルコはすでにロシアの仲介の下、アサド政権下のシリアとの複数回にわたるハイレベルの協議を通じて国交正常化プロセスにとりかかっているものの、シリア北部に駐在するトルコ軍が近いうちに撤退する兆しは見られない。
しかし、エルドアン氏が再選に向けた選挙運動で掲げた公約を守るため、シリア難民が平和に帰国できるよう手配される可能性はある。
新内閣の構成を見るに、イラク北部とシリアにおけるテロ対策活動も継続する見込みだ。
カイロを拠点とするMEEM中東・東地中海研究センターのディレクターであるダリア・ジアダ氏は、トルコが中近東地域の国際関係において重要な位置を占めつつある今、フィダン氏は外相に適任だ、と述べた。
同氏はアラブニュースに「彼は全ての重要なカードを握っており、トルコの外交政策の舞台裏を経験的に知っています」と語った。
「フィダン氏はリビア、スーダンやシリアといった中東地域のホットスポットを取り巻く状況に精通しており、過去数ヶ月にモスクワで行われてきたトルコ、シリア、ロシアおよびイランの要人による4者面談に継続して参加できる唯一のトルコ政府関係者です」とジアダ氏は述べた。
ジアダ氏によれば、フィダン氏が外相として精力的に活動することで、トルコの対シリア外交問題や、トルコがロシアとウクライナの対立において仲介役となることについて、短期間で目に見える進展が期待できるだろう、という。
フィダン氏は過去2年間、エジプトおよび湾岸諸国との壊れた関係を修復する「影の立役者」であったことから、同氏が入閣することでトルコとエジプトの関係修復が早まるかもしれない、とジアダ氏は分析している。
「このことは結果として、リビアの市民紛争を沈静化し、政治的解決の糸口を与え、ゆくゆくは我々の予想より早く、リビアで市民選挙が実施されるようになるかもしれない」と同氏は述べた。
エルシーシ氏とエルドアン氏は「大使交換を行い、外交関係の改善を直ちに図る」ことで合意した、とエジプト大統領府は先月5月29日に発表した。
ジアダ氏によると、フィダン氏のバックグラウンドがあればトルコと湾岸諸国との関係改善も加速するかもしれないという。
「近い将来、フィダン氏が湾岸諸国およびイランとの対談の座につくことは大いにあり得ることです。逆に言えば、これを機に湾岸諸国の投資を得て、停滞するトルコ経済の復活に向けて拍車をかけることで、トルコにプラスに反映されるでしょう」と同氏は加えた。
「フィダン氏は中東、地中海東部および黒海地域というチェス盤において勝利のカギを握る駒となることが予想されます」
トルコ軍参謀総長のヤシャル・ギュレル氏が新内閣の国防相に任命された。
まだ発表はされていないが、イブラヒム・カリン大統領報道官が国家情報機構長官に指名される見込みだ。
中央銀行の総裁は発表されていないが、ハフィゼ・ガイ・エルカン氏が候補に挙がっている。
エルカン氏はプリンストン大学で博士号を取得した後、ゴールドマンサックスで金融サービス担当役員として勤める等、アメリカの複数の金融機関で働き、ファースト・リパブリック・バンクの社長にもなった。
過去4年間で、4人がトルコの中央銀行総裁を務めた。