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イラクの貴重な現代美術、贋作や密売に悩まされる

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01 Jul 2023 01:07:45 GMT9
01 Jul 2023 01:07:45 GMT9
  • 文化省はイラクの盗難された美術品の一部を取り戻すべく取り組んでおり、行方不明の100点についての情報をインターポールに提供した

バグダッド:イラク絵画の傑作の多くは戦争中に盗まれたり破壊されたりしたが、同国の芸術遺産は今新たな脅威に直面している。贋作や不正売買の蔓延である。

バグダッドの近代美術館の壁には、陰鬱な青と灰色を基調とした絵画《植民地主義に死を(Death to Colonialism)》が飾られている。イラクの先駆的な芸術家シャキール・ハッサン・アル・サイードによるこの作品は、同時代の作品の中では珍しく今も公の場に展示されている作品の一つだ。

イラクの現代芸術運動の全盛期が終わりに近づいていた1970年代に描かれたこの絵画は、2003年の米国主導の侵攻に続いた混乱の中を生き残った。その時期、同美術館に8000点強あった収蔵作品は略奪者の被害を受けたのだ。

ルヤ現代美術財団の共同創設者で代表のタマラ・チャラビ氏は次のように語る。「シャキール・ハッサン・アル・サイードの作品は、イラク現代美術としてだけでなく中東の芸術作品としても極めて貴重です」

画家・彫刻家のジェワッド・サリームと共に影響力のある「バグダッド現代芸術グループ」を設立したサイードによる絵画は、オークションで10万ドルもの値段がつくこともある。

サイード氏の遺族は、自身らは彼の作品の数多くの贋作の販売を阻止することに成功してきたとしたうえで、彼の全作品について世界のオークションハウスやギャラリーと定期的に連絡を取っていると話す。

サイード氏の息子であるモハメド・シャキール・ハッサン・アル・サイード氏(50)は、「最近バグダッドで贋作を見つけました」と語る。

同氏はソーシャルメディアを通してそのギャラリーに連絡を取り、その絵画を撤去するよう求めた。しかし管理人は、絵画は本物だと主張してそれを断った。

サイード氏の遺族は、2004年に亡くなった彼のレガシーを守るための努力として、約3000点に及ぶ彼の幅広い作品群を細心の注意を払って記録してきた。

モハメド氏がAFPに語るところによると、彼らは現在カタログの出版に向けて取り組んでいる。2003年以降増えている贋作に対する「免疫」を提供するためだという。

イラク国内外の贋作者や密売人の主なターゲットは、同国の現代芸術の先駆者らによる1940年代、1950年代、1960年代の作品だ。

それらの多くは、サダム・フセイン政権が打倒された後の治安上の空白期に美術館や個人宅から盗まれた数千点の作品の中に含まれていた。

UAEのシャルジャにある美術館「バルジール芸術財団」の創設者であるスルタン・スード・アル・カセミ氏は、「イラク美術は現在、アラブ世界における芸術生産の最も重要な源泉の一つです」と話す。

カディム・ヘイダーやディア・アッザーウィーといった芸術家の人気が最も高いという。

同氏はAFPに対し、「最近は、イラクの美術作品の中には数十万ドルで売れるものもあります」と語る。「贋作者はオークションの結果に注目しています(…)彼らにとって、さらに良い贋作を作ることは魅力的なのです」

真贋問題はエジプト、レバノン、シリアをはじめとする地域各地で起こっているが、「イラクでは、芸術家の亡命や相次ぐ戦争といった幾重にも重なる困難によって特に深刻なものとなっている」とカセミ氏は言う。

チャラビ氏は、「贋作は、イラクにおいてシステムに受け入れられた腐敗という全体的な問題の一部です」と話す。

行方不明のコレクションの中で最大のものはバグダッドの国立近代美術館のコレクションだ。同美術館はイラクで最も貴重な21世紀の芸術作品をいくつか収蔵していた。

同美術館のディレクターを勤め最近退職したアリ・アル・ドゥライミ氏は、「2003年以前は8000点ありました」と話す。「現在は2000点ほどです」

侵攻後の数年間に、「新たな作品を手に入れたり、行方不明の作品を取り戻したりした」という。

同美術館と文化省は、イラクの盗難された美術品の一部を取り戻すべく取り組んでいる。ドゥライミ氏によると、行方不明の100点についての情報をインターポールに提供したという。

しかし、実際に作品がどの程度紛失しているのかを判断するのは困難である。前政権による手書きの目録は信頼性に欠けるためだ。

イギリスのオークションハウスであるクリスティーズは2017年、「所有権をめぐる意見の不一致」によりイラクの芸術家ファエク・ハッサンの絵画を取り下げると発表した。

あるイラク政府関係者は当時、この絵画は国防省関連の将校クラブに飾られていたもので、その後イラク国外に密輸された可能性が高いと説明した。

この絵画がイラクに返還されることはなかった。

バグダッドのアッカドギャラリーで、オーナーのハイデル・ハチェム・ナジ氏(54)は、贋作の増加は「イラク美術の評判を傷つける」と話す。

「贋作者は古い絵画の上に描き足すこともあります。額縁とキャンバスが古いので分かります」

同氏は最近、キュビズムに影響を受けた有名な画家であるハフィド・アル・ドルービによるものとされる絵画を展示するよう頼まれたという。

所有者は4万ドルでの売却を希望したが、ナジ氏は丁重に断った。

「実のところ、それは非常に質の高い贋作だったのです」

AFP

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