ジェニン、ヨルダン川西岸地区:占領下のヨルダン川西岸地区内の武装勢力の拠点から、火曜日遅くに、イスラエル軍部隊が撤収を開始したと治安当局が発表した。少なくとも13人のパレスチナ人を殺害し、数千人をその住居から退避させ、広範囲に被害を及ぼした2日間の集中的な軍事行動は終わりに近づいている。殺害されたイスラエル人兵士は1人である。
しかし、ジェニン難民キャンプの複数個所ではイスラエル軍とパレスチナ武装勢力の熾烈な戦闘が継続しており、計画されていた撤収は遅れている。
真夜中過ぎ、ジェニン難民キャンプの住民らは、イスラエル軍が撤収したと述べた。イスラエル軍は兵士1人が戦闘で死亡したと発表したものの、詳細については明らかにしていない。
ガザ地区の武装組織が5発のロケット弾をイスラエルに向けて発射したとのイスラエル軍による発表があり、緊張が高まった。ロケット弾は全て迎撃したとイスラエル軍は述べたが、この発射によってイスラエルが第2の戦線で戦闘を開始するリスクを高めたことは事実だ。
数時間を経て事態はさらに展開した。ハマスの過激派が、テルアビブの混雑したバス停に自動車で突っ込み、通行人らを刺し、妊婦を含む8人を負傷させたのである。妊婦は死産したと伝えられている。この襲撃を行った者は、武装した通行人に殺害された。ハマスは、この襲撃はイスラエルの攻撃に対する報復であると発表した。
ジェニン郊外の軍事拠点を訪れたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この地域での軍事行動としては20年近くの間で最も熾烈なものとなった今回の作戦が終盤にあることを示唆した。しかし、ネタニヤフ首相は類似の軍事行動を将来実行すると言明した。
「現時点で私たちはこの軍事行動を完了させつつあります。そして、私は、今回のジェニンでの大規模な作戦は一度限りのものではないのだと確言出来ます」と、ネタニヤフ首相は述べた。
イスラエル軍は、墓地に潜んでいた武装集団を標的とした空爆を火曜日遅くに行ったと発表した。この武装集団は難民キャンプから撤収中の部隊に脅威を与えていたと、イスラエル軍は述べた。死傷者についての説明は無かった。
イスラエルとパレスチナの当局者は、また、ジェニンの病院付近で火曜日遅くに戦闘が発生したことを発表した。現地のAP通信記者には爆発音と銃撃音が聞こえたという。パレスチナの病院の関係者は、パレスチナ自治政府の通信社「Wafa」に、3人の民間人がイスラエル側の銃撃を受けたと告げた。
イスラエルの治安当局者は、イスラエル軍兵士が撤収を開始したことを認めたが、この撤収過程が戦闘によって複雑化しているとも語った。公式的には未発表であるため、同当局者は匿名を条件に以上を明かした。
イスラエルは、月曜日早朝に、パレスチナの武装派勢力の拠点として知られるジェニン難民キャンプを攻撃した。パレスチナ保健当局の関係者は、13人のパレスチナ人が殺害され数十人が負傷したと語った。
軍用大型ブルドーザーが路地を破壊し、道路や建物を甚だしく損傷し、何千人もの住民が難民キャンプから退避した。電気と水道も止められたという。イスラエル軍は、道路に偽装爆弾が仕掛けられていたため、ブルドーザーが必要だったと述べた。
イスラエル軍は、数千の武器や爆発物製のための材料、隠匿資金を押収したと発表した。武器は武装組織の潜伏場所からも民間人地域からも同様に発見され、モスクの地下から見つかったケースすらあったと発表した。
今回の大規模な強制捜索は、1年以上にわたる暴力行為の急増の最中に実行された。暴力行為の急増は、ネタニヤフ政権にとって課題となっている。この極右政権は、パレスチナ武装勢力に対してより強硬な対処を求めるウルトラナショナリストが多数を占める。イスラエルとパレスチナ武装勢力間の戦いは悪化するばかりとなっている。
ヨルダン川西岸地区では、今年、140人以上のパレスチナ人が殺害された。そして、イスラエル人を標的としたパレスチナによる攻撃で少なくとも25人が殺害されている。この人数には、先月の4人の入植者が殺害された銃撃も含まれている。
この持続的な軍事作戦に対して、人道支援団体は状況の悪化について警告を発している。
国境なき医師団は、イスラエル軍が病院内に催涙ガスを発射し、救急治療室に煙を充満させたため、救急患者をメインホールで治療せざるを得なかったとして、イスラエル軍を非難した。
国連人権理事会の議長は、今回の軍事作戦の規模が「生命の権利の保護と尊重を含む、国際的な人権規範や基準に照らして、数多くの深刻な問題を引き起こしています」と述べた。
空爆と大規模な地上部隊の展開による今回の攻撃は、2000年代初頭の第二次パレスチナ蜂起におけるイスラエル軍の戦術の特徴を備えている。
しかし、違いもある。イスラエル軍の軍事行動は、パレスチナ武装勢力の拠点のいくつかに焦点が置かれており、範囲が以前よりも限定されているのである。
イスラエルの強硬派の入植者の指導者であるイタマル・ベングビール国家安全保障相は、火曜日のテルアビブの襲撃現場へと急行した。
「テロが鎌首をもたげるであろうことを私たちは分かっていました」と、ベングビール安全保障相は語った。ベングビール安全保障相は、怒った見物人に野次られながら、襲撃者を殺害した人物を賞賛し、より多くの市民が武装するよう呼びかけた。
襲撃を行ったのは、ヨルダン川西岸地区南部の都市ヘブロン出身の20歳のパレスチナ人男性であることが明らかとなった。
イスラム過激派組織ハマスは、襲撃を行ったパレスチナ人男性を「殉教者の戦士」として賞賛し、自動車でバス停に突っ込んだことを「英雄的行為かつ、ジェニンでの軍事行動への報復」と表現した。ジェニンで強い勢力を持つ過激派組織のイスラム聖戦もこのバス停への襲撃を賞賛した。
襲撃を行った男性が、ハマスから送られたのか、単独犯なのかは、現時点では明らかではない。
ジェニンでは、瓦礫が街路に散乱しており、難民キャンプの地平線に断続的に黒煙が立ち上っている。この難民キャンプは、何年もの間イスラエルとパレスチナの間の暴力行為の発火点となってきた。
ジェニンのニダル・アルオバイディ市長は、難民キャンプの人口の3分の1近くにあたる約4,000人のパレスチナ人が、親戚の住居や避難所に身を寄せたと述べた。
難民キャンプの住民のケファ・ジャイヤサ氏は、イスラエル兵たちが彼女の自宅に押し入り、家族を内部に閉じ込めたと語った。
「イスラエル兵たちは、私の家族の若い男性らを上階に連れて生き、女性と子供たちを2階のアパートに閉じ込めて立ち去りました」と、ジャイヤサ氏は語った。
ジャイヤサ氏によると、イスラエル兵らは、彼女が子供たちに食べ物を持って行くことを許さず、彼女が助けを求めて叫んだ時には救急隊が家に入ることを阻み、ようやく最後になって家族が病院に行くことを許可したという。
ヨルダン川西岸地帯全域で、パレスチナ人はイスラエルの攻撃に抗議するゼネストを実施した。
パレスチナの保健省は、火曜日、2日間でのパレスチナ人の死者数は13人となったと発表した。イスラエル軍は、死者の内少なくとも10人は武装勢力の戦闘員だったと主張しているが、詳細は明らかにしていない。最新の死者数については情報が無い。
ヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府、そして、イスラエルとの国交が正常化しているアラブ3ヶ国(ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦)は、サウジアラビアや57ヶ国が加盟しているイスラム協力機構と同様に、イスラエルの侵攻を非難している。
イスラエルは、2022年初頭の一連のパレスチナ人による過激な襲撃事件への対応として、ヨルダン川西岸地区で連日強制捜索を行っている。イスラエル側は、こうした強制捜索はパレスチナの武装勢力を取り締まり、その攻撃を阻むためのものだと述べている。パレスチナ人たちは、こうした暴力が56年間に及ぶ占領と、そして、イスラエルとの政治的解決への取り組みの不在の避け得ない結果であると語る。ヨルダン川西岸地区の入植地建設の増加と過激主義的な入植者による暴力の増加についてもパレスチナ人たちは指摘している。
イスラエル側は殺害された人々の大部分が武装勢力に属していたと述べているが、侵攻に抗議し投石を行った若者たちや、対立には関わっていない人々も死亡している。
イスラエルは、1967年の中東戦争で、ヨルダン川西岸地区、東エルサレム地区、ガザ地区を占領した。パレスチナ人は彼らの望む独立国家建国のためにこれらの領土を求めている。
AP