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国連の援助活動延長を安保理が承認見送りした後、トルコ経由での援助物資輸送の再開を許可するシリア

トルコとの国境にあるバブ・アル・ハワ検問所で、援助物資の荷降ろしを行う作業員たち。(AFP)
トルコとの国境にあるバブ・アル・ハワ検問所で、援助物資の荷降ろしを行う作業員たち。(AFP)
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14 Jul 2023 06:07:05 GMT9
14 Jul 2023 06:07:05 GMT9
  • しかし、アラブニュースが閲覧した書簡では、今後のあらゆる援助活動はバッシャール・アル・アサド大統領の政府との全面的な協力の下で実施されければならないとシリアの国連大使が述べている
  • バーバラ・ウッドワード英国特使は、「この重要なライフラインの管理は、国連の監視無しに、シリア国民の苦しみの元凶である人物に委ねられてしまった」と語った

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク市:シリア政府は、シリア北西部の反政府勢力支配下地域への人道援助物資の運搬のためにトルコ国境の検問所を使用する事を国連に許可した。

この許可は、安全保障理事会のメンバー国が現行の国境検問所経由の援助運用形態の延長について合意に達しなかったことを受けてのものだった。

火曜日、安保理常任理事国であるロシアが拒否権を発動し、シリアの人道支援案件を担当する理事国であるスイスとブラジルによる、シリアへの国境検問所経由の援助物資提供をさらに9か月継続する決議草案を阻止した。

ロシアは、6ヶ月毎更新の現行の手順の継続を提唱した対案を提出したものの、これも否決された。その結果、国連によるバブ・アル・ハワ国境検問所経由の援助活動は中止となった、

安保理の今月の輪番議長国を務める英国は、その後、シリアのバッサム・サバ国連大使から書簡を受け取った。アラブニュースが閲覧したこの書状には、すべての援助物資の運搬は、「2023年7月13日以降の6ヶ月間、シリア政府との完全な協力と調整を通して」実施されなければならないと述べられていた。

サバ国連大使は、また、各国のドナーに対して、「責任を果たし」、「経済を活性化して、国連の設定した2030年までの持続可能な開発目標を達成し、避難している人々の尊厳ある自発的な帰還を支援する」種々のプロジェクトを初めとする国連の援助活動に資金提供を行うよう求めた。

英国はシリア政府のこの動きを即座に非難し、「この重要なライフラインの管理は、国連の監視無しに、シリア国民の苦しみの元凶である人物に委ねられてしまった」と警告した。

今月安保理議長を務める英国のバーバラ・ウッドワード国連常任代表は、「優先すべき事は、援助を必要とする人々に再び迅速に援助が届くようにする事、そして、それを将来にわたって確実なものとすることです。私たちはこれを安保理に持ち帰ることを躊躇いません」と付け加えた。

複数の人道支援団体が、シリア当局を、国際援助を操作してきたとして、長年非難してきた。シリア当局が、12年間にわたる紛争において、反体制派地域に対する援助を戦略的に抑制し、シリア国民の苦しみの軽減を目的とした数十億ドルの国際援助を体制に忠実な人々に報奨を与え反体制派を抑圧するための持続的な「利益センター」として利用してきたというのだ。

国境検問所経由の援助の運用形態は、国連の援助物資を反政府勢力支配地域に直接届けることを可能にするために2014年に確立された。国際人道法では、通常、受入国政府経由ですべての物資の輸送を行うことが求められている。

2019年12月まで、安保理メンバー国は、4ヶ所の国境検問所を使用した援助活動の実施に同意することが出来ていた。ヨルダンとの国境の1ヶ所、イラクとの国境の1ヶ所、トルコとの国境の2か所の計4ヶ所である。2020年1月、ロシアが拒否権を発動し、バブ・アル・ハワ国境検問所1ヶ所を除くすべての国境検問所の使用が余儀なく中止となった。

その後、ロシアと米国の間では外交ルートがほぼ途絶し、あらゆる安保理の議題がその影響を受ける状況となっており、唯一残った国境検問所経由の援助活動の更新は匙加減の難しい交渉上の問題となっている。

ロシア側は、国際援助活動がシリアの主権と領土保全を侵害していると主張している。シリアは「解放され」ており、シリア北部の反体制派支配地域への援助はすべて首都ダマスカスを経由すべきだというのが、ロシアの主張である。

国連は、ダマスカスからの反体制派支配地域への援助物資の輸送は国境を越えるライフラインの追加として歓迎されるべきではあるものの現行の経路を代替するものではないと述べている。たとえ定期的に運用されたとしても、そうした輸送方法では、現行の複数の国境検問所経由の援助活動の規模や対象範囲を維持出来ないと、国連は警告している。

シリアは、依然として、世界で最も深刻なレベルの人道危機の渦中にある。国連の人道問題担当の責任者であるマーティン・グリフィス氏は、先月、安保理で、紛争によりシリア人の90%が貧困状態に突き落とされたと述べた。グリフィス氏は、目標額54億米ドルの人道的寄付はこの種の呼びかけとしては最大級ではあるが、その内実際に調達出来ているのは12%に留まっており、シリアで数百万人が食料不足の危険にさらされていると警告した。

シリア人の死者が4,500人に達し、数十万人が自宅からの退避を余儀なくされた2月の大地震の後、シリア北西部への援助物資の輸送は大幅に増加した。

大地震直後、バッシャール・アル・アサド大統領は、被災者に届く援助物資を増加させるためにに、トルコ国境のバブ・アル・サラームとバブ・アルライの2ヶ所の検問所の追加を許可した。アサド大統領は、5月、援助活動の3ヶ月間の延長に同意した。

国連のステファン・デュジャリック報道官は、木曜日、延長期間が8月中旬に終了した後の2つの国境検問所の取り扱いに関連して、国連はシリア政府と定期的に連絡を取っていると述べた。

「明らかにこれら2ヶ所(の検問所)は開かれていますが、今後、青信号が出るのか否かについては何もお伝えすることはありません」と、デュジャリック報道官は語った。「開かれている限り、私たちは使用します」

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