Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

支持が薄いにも関わらず、イスラエルとアラブ諸国は気候問題に関する連携を進める

パレスチナ人は、イスラエルが行った軍事侵略とヨルダン川西岸地区の併合によって、環境問題についての議論にパレスチナ人が意味ある形で参加することが妨げられていると述べている。 (AP/ファイル写真)
パレスチナ人は、イスラエルが行った軍事侵略とヨルダン川西岸地区の併合によって、環境問題についての議論にパレスチナ人が意味ある形で参加することが妨げられていると述べている。 (AP/ファイル写真)
Short Url:
18 Jul 2023 07:07:46 GMT9
18 Jul 2023 07:07:46 GMT9
  • ワシントンの中東研究所主催のイベントにおけるイスラエルの専門家パネルで、新たな報告書に記載された関係強化の提案について議論が行われた

アリ・ユネス

ワシントン:気候変動、地球温暖化、水不足などの環境問題に対処するため、イスラエルはアラブ諸国との関係強化を提案した。しかしイスラエルが現在もパレスチナの領土を占領していること、およびそうしたプロジェクトはイスラエル政府にとって優先順位が低いと見られていることから、周辺地域からの反応は控えめなものにとどまっている。

関係強化の提案は、中東の国々が直面する環境問題についてイスラエルが新たに発表した報告書に含まれているもので、これは月曜日に、ワシントンに拠点を置く中東研究所が主催したセッションにおいてイスラエルの専門家と当局者のパネル上で議論された。

専門家たちは、水管理や再生可能エネルギーなどの分野に関して、イスラエルとすでに正式な関係を結んでいるモロッコ、バーレーン、UAE、ヨルダンなどのアラブ諸国がこれまで以上に協力していくことの必要性に焦点を当てた。

ヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ自治政府の自治権限は非常に限られたものであり、その結果、地方計画への関与、また水不足や気候変動に関する議論への参加も限られていることが指摘された。その主な理由は、自治政府が独自のプログラムを実施するための実質的な権限を持っておらず、同時にイスラエルの軍事占領によって著しく弱体化しているからである。

パネルディスカッションの聴衆は、イスラエルとヨルダンは外交関係を樹立した後、1994年にエコピースという共同イニシアチブを立ち上げたことを聞いた。これは持続的な開発を促進し、両国およびパレスチナ人の間で環境問題についての協力関係を育むことが目的であった。

イスラエルとヨルダンは近年、水と電力を交換するための共同プロジェクトを実施する意向声明に合意した。ヨルダンは砂漠に600メガワットの太陽光発電設備を作り、そこからクリーンな電力をイスラエルに輸出する。一方イスラエルは地中海に海水淡水化プラントを建設し、水不足のヨルダンに2億立方メートルの淡水を供給する。

この合意は米国政府からの支持を受け、UAEが資金提供を行う。しかしヨルダンの国民はプロジェクトに強く反対しており、ヨルダンが水資源の管理権をイスラエルに委ねていると主張する意見が一部から出ているほか、占領地域で今も続くパレスチナ人への不当な扱いを強調する人もいる。

パネリストたちは、水と気候の問題に関して協力する必要性について、そしてエコピースイニシアチブに類する連携を推進する上で、あらゆる側の市民社会組織がどのように重要な役割を果たしていくかについて議論した。

中東と北アフリカの人口は約5億人を数え、世界的に見ても環境の厳しさは上位に位置している。一帯は非常に乾燥しており、広大な砂漠が広がり、水資源は極めて限られる。

月曜日のイベントでイスラエルのパネリストからは、地域の政治的障壁を乗り越えるために各地域の団体が政府と交渉し、環境問題に関して地域が連携していくよう働きかけるべきだという提案が出た。

エコピース中東の共同創設者でありイスラエル理事であるギドン・ブロムベルグ氏は、「イスラエルはヨルダンにとって夢のような価格で水を生産することができ、一方のヨルダンには広大な砂漠と開けた土地があるため、太陽光を利用して発電し、イスラエルにとって夢のような価格で再生可能エネルギーを生産することができます」と述べた。

しかし彼は、以前彼が行った提案が困難に行き当たり、イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフ氏が率いる政権のもとでは優先度が低いままにされてきたと付け加えた。ネタニヤフ氏は「なぜイスラエルがアラブ諸国に依存しなければならないのか」と疑問を呈していた。

中東の国々は、ヨーロッパの経済協力を模範とした「健全な依存関係」を結ぶべきだとブロムベルグ氏は述べた。

テルアビブの国家安全保障研究所の気候・国家安全保障プログラムの責任者であり、イスラエル環境保護省の前事務次官でもあるガリット・コーエン氏は、環境問題対策のための地域計画策定を目的として、キプロス政府が推進する東地中海および中東における気候変動対策のための協調イニシアチブにイスラエルが参加することについて議論した。

彼女は、最近成立したアブラハム合意によってイスラエルと複数のアラブ諸国間の関係が正常化されたことで、アラブ世界にイスラエルが関与し統合されていく上で追い風が吹いたと述べた。しかし同時に、地域の環境に関する議論の多くはパレスチナ人を代表していないとも指摘した。

パレスチナ人は、イスラエルが行った軍事侵略とヨルダン川西岸地区の併合によって、環境問題についての議論にパレスチナ人が意味ある形で参加することが妨げられてきたと述べている。

イスラエルの気候変動・サステナビリティー特使ギデオン・ベハール氏はセッション中に、環境と水にまつわる問題についてイスラエルとアラブが協力した事例をいくつか挙げた。

実現しうる地域統合の一例として、彼はイスラエルを「アラブ地域における海水淡水化大国」であるとして、ヨルダンの都市部に必要な水を供給できる立場にあると述べた。

特に人気
オススメ

return to top