
ジュバ、南スーダン:スーダンの国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間の紛争が続く中、ジェンダーに基づく暴力の危機が生じている。女性や女児が強姦、人身売買、児童婚のリスクに晒されているのだ。
4月15日に戦闘が始まる前でさえ、既に300万人以上の女性・女児がジェンダーに基づく暴力のリスクに晒されていた。国連によると今やその数は420万人に増加しており、戦争が一般市民に与える壊滅的な影響を反映している。
匿名を条件にアラブニュースの取材に応じた37歳の被害者は、彼女が住んでいた村が6月にRSF戦闘員ら襲撃されたため北ダルフール州に避難したと語る。夫と友人・親戚数人を殺されたという。
彼女は痛ましい体験を証言する。襲撃者らは彼女を含む人々を一箇所に集めた後、男性らを別の場所に連れて行き激しく殴ったのだという。「戦闘員の一人に性的暴行を受けた私は、子供たちを残して逃げました」
「避難民としての私の生活は、生き残るための絶え間ない闘いになりました。故郷から追い出され、愛する人たちから引き離され、先が見えない中で生活しなければならないという厳しい現実が肩に重くのしかかっています。自分自身と他の避難民のために、食料、清潔な水、寝泊まり場所を求めて毎日闘っています」
「また性的暴力を受けるかもしれないという恐怖が頭から離れません。それがずっと続いているせいで、不安だし、知らない人を信用できません。平静でいようと努めるのですが、記憶がずっと付きまとっているので、人を信じることが難しいのです」
西ダルフール州のエル・ジュナイナから来た別の女性(匿名希望)は、彼女が住んでいたコミュニティーが5月に戦闘員らに襲撃された際、罪のない一般市民が焼かれ、殺害され、拷問され、強姦されるのを目撃したと語る。
彼女はアラブニュースに対し次のように語る。「私は6児の母親として、このような想像を絶する残虐行為を目撃した重みに耐えるには、失われた罪のない命への正義を求めるしかありません」
「私たちは愛する人たち、家、安心感を失いましたが、正義を求める決意は残っています。自分のためだけでなく、残虐行為の犠牲となった全ての罪なき魂のために声を上げます」
彼女は、自分が証言することが「加害者らが犯した戦争犯罪に対する正義と説明責任」のための触媒となることを望んでいる。
アムネスティ・インターナショナルが3日に公開した新たな報告書は、女性・女児に対する性的暴力の複数の事例、病院や教会などの民間インフラを標的とした攻撃、大規模な略奪などについて詳述している。
同団体は、報告書に記載されている侵害行為のいくつかは戦争犯罪にあたるとしている。
アムネスティ・インターナショナルのアニエス・カラマール事務総長は声明の中で次のように述べた。「若干12歳の少女を含む多くの女性・女児が、戦闘中の両陣営のメンバーらから強姦やその他の形態の性的暴力を受けている。安全な場所はない」
「RSFと国軍、およびその関連武装集団は、民間人を標的とすることをやめ、安全を求める人々のための安全な通路を保証すべきだ。犠牲者と被害者のための正義と補償を確保するための緊急措置が取られなければならない」
スーダンの国連人権事務所は、紛争に関連した少なくとも21件の性的暴力により女児10人を含む少なくとも57人が被害を受けたという信頼に足る報告を受けていると述べた。1回で20人もの女性が強姦された事件も報告されている。
スーダン政府の「女性に対する暴力撲滅ユニット」は、性的暴力とされる事件を、首都ハルツームで少なくも42件、ダルフール地方で46件記録している。
しかし、恥、スティグマ、報復への恐れなどで報告を控える人が多いため、性的暴力の実際の件数はこれよりはるかに多いというのが一般的な見方だ。
問題をさらに深刻にしている事情がある。治安状況により電力、通信接続、人道アクセスが不足しているため、被害者が報告したり支援を受けたりすることが不可能ではないにしろ非常に難しくなっているのだ。
医療施設に対する攻撃が状況をさらに悪化させており、被害者が緊急医療を受けられなくなっている。
スーダンの医療提供者、ソーシャルワーカー、カウンセラー、コミュニティーに根ざした保護ネットワークはいずれも、紛争を背景にジェンダーに基づく暴力が急増していると報告している。
現在の紛争が始まる以前から難民としてスーダンにいた女性たちは、新たな地域に避難する際に暴力を受けたと報告している。
援助団体は、スーダンの紛争被害地域や近隣諸国にある国内避難民の受け入れ先において緊急支援が必要とされていると訴えている。
スーダンは現在の紛争が始まる前から既に、紛争に見舞われたダルフール地方の境界を越えて広がる長年にわたる性的暴力の問題と格闘し続けていた。
しかし、今回の戦闘により状況が悪化し、無法状態がはびこる中で暴力被害者らはより深い絶望感に打ちのめされている。
最近の証言によると、2020年に東部の都市ポートスーダンでRSF戦闘員らに襲撃されたベジャ族とアル・バニ・アメル族の5人の女性は、説明責任が果たされていないため今も恐怖の中で暮らしている。
彼女たちに話を聞いた地元のジャーナリストによると、彼女たちは「言い表せないほどのトラウマ」に耐えている。そのうちの一人は恐ろしい襲撃の結果、妊娠中絶手術を受けることを余儀なくされた。
社会的スティグマの恐怖が重くのしかかり、被害者らは親族から何と言われるだろうかという不安で身動きできずにいる。
正義と説明責任の欠如は世代を超えて続いているため、被害者の状況は悪化するばかりであり、彼らは改善の希望をほとんど抱いていない。
ハルツームで臨床心理士をしているセルマ・カメル・オスマン氏はアラブニュースに対し、スーダンの困難な状況の中で心理的サポートを提供することは、「人道危機への対応の緊急性」に光を当てるものだと語る。
また、正義の欠如と暴力の蔓延により、「被害者がトラウマに対処し必要な治療を受けるのを支援することが困難になっている」と指摘する。
今回の紛争が始まった当初から医療アドバイザーを務めているオスマン氏は、人々が不安症状に対処できるよう支援してきた。
性的暴行事件が起こり始めた時、同氏はソーシャルメディアプラットフォームを通したカウンセリングを始めた。これはスティグマが蔓延する中でデリケートな話題について話すうえでより安全な方法であることが分かった。
オスマン氏は女性たちに対し、声を上げ助けを求めるよう促しつつ、性的暴行の被害者に支援を提供してきた。
オスマン氏は困難をものともせず、ハルツームで家を荒らされた際に襲われた8人の性的暴力被害者に支援を提供した。
「しかし、一つのケースは路上で起こりました」と同氏は言い、性的暴力の被害者は特定の部族や人種に限られず、あらゆる年代や背景のスーダン人女性が被害にあっていると強調する。
性的暴力被害者にとって、医療サービスへのタイムリーなアクセスは命を救うものになり得る。スーダンの活動家は寄付提供者に対し、医療用品、生理用品セット、HIV感染を防ぐための曝露後予防キットをもっと多く提供するよう呼びかけている。
被害者が医療施設にアクセスできない場合、これらの物品が地元の診療所、コミュニティーに根ざした組織、前線の対応者に確実に届くようにすることが重要だ。
オスマン氏はアラブニュースに対し、「リソースが非常に限らており、被害者全員がHIV検査や妊娠検査を受けられたわけではありません」と語る。
「しかし、オンラインプラットフォーム『エマージェンシールーム』は、性感染症や妊娠の可能性に対処するための医療アドバイスや手順を提供しています」
スーダンの政情が不安定なうえ、紛争当事者が内政不干渉を要求しているため、国際社会が現地に介入するための手段は限られている。
しかし、国連のプラミラ・パッテン事務総長特別代表(紛争下の性的暴力担当)は8月1日、スーダンにおいてエスカレートする性的暴力の危機に立ち向かうための緊急の試みとして、RSFの副司令官であるアブドゥル・ラヒム・ダガロ少将と会談した。
この会談は、この武力紛争に関わる全当事者に関与するという国連安全保障理事会の任務の一環として行われた。
パッテン特別代表は、ハルツームとダルフールの両方で性的暴力が憂慮すべき増加を見せていることに言及するとともに、医療施設や医療従事者を標的とした攻撃、女性・女児の拉致、ダルフールの奴隷市場についての報告などの差し迫った問題について提起した。
また、スーダン国軍とRSFの両方が2017年以降、様々な形態の強姦や性的暴力を行った、あるいはそれに関与したとされていることを指摘したうえで、軍規の一部として性的暴力に対するゼロトレランスを明示した司令を出すよう求めた。
オスマン氏はアラブニュースに対し次のように語る。「この状況において求められているのは、より広範な国際的介入や説明責任により、今も続く残虐行為に終止符が打たれるとともに、犠牲者のための正義に向けた道筋が提供されることです」
「加害者に責任を負わせ、被害者の声を広めることで、恐怖やトラウマのないスーダンへの道を開くことができます」