Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

フランクリー・スピーキング:ガザの人道危機はどれほどの規模なのか

Short Url:
20 Nov 2023 02:11:44 GMT9
20 Nov 2023 02:11:44 GMT9
  • UNRWAの広報官は、援助機関が妨害されずに活動できるよう即時停戦を要求する
  • ジュリエット・トーマ広報官によると、イスラエル軍がガザ地区への支配を強める中、国連施設や病院さえも被害を免れていないという
  • 彼女は、破壊の程度と規模は「巨大」だとしたうえで、「この戦争を終わらせる時だ」と主張する

アラブニュース

ドバイ:国連救援機関のある高官は、100人以上の同僚を失った悲しみの中で、5週間に及んでいる「地獄」からガザ地区を解放するための即時停戦を要求するとともに、イスラエルが貧しい同地区に対する包囲を強化しているため「安全な場所はない」と警告している。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のジュリエット・トーマ広報官はさらに、燃料の搬入制限はイスラエルの新たな「戦争兵器」となっており、同機関の活動能力を妨げていると訴える。

彼女はアラブニュースの時事番組「フランクリー・スピーキング」で、「我々のような規模の国連機関にとって、あるいはどの人道支援機関にとっても、燃料を乞わなければならない状況は受け入れがたい」と語った。 「これは受け入れがたいどころか信じがたい状況です。人道目的のために燃料が必要なのに、過去5週間燃料がなかったのだから」

UNRWAは先日、燃料が入手できなくなったためガザ地区での救援活動を中止せざるを得なくなる見込みだと発表した。これは、同地区で活動する最大の援助機関がこれまで避難所を提供していた78万人のパレスチナ人を支援できなくなるという、過去75年間で初めての事態を意味する。

イスラエルは15日、エジプトからガザ地区に2万4000リットルのディーゼル燃料を搬入することを許可した。ただし、病院における使用や、同地区内で活動する国連の援助トラックのための使用は許可しないという条件を付けた。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のジュリエット・トーマ広報官は、「フランクリー・スピーキング」の司会者ケイティ・ジェンセンに対し、燃料の搬入制限はイスラエルの新たな「戦争兵器」となっており、同機関の活動能力を妨げていると語った。(写真:AN)

トーマ広報官は次のように語る。「ごく僅かな燃料によって最近我々に可能になったことは、物資のガザ地区への搬入だけです。それから我々は何をするのか。ただそこに座って物資を見ているだけですか。物資を配布する必要があります」

「そのためには燃料が必要です。UNRWAだけでなくガザ現地で活動する他の人道支援団体にも緊急に必要なのです。燃料がなければ物資を配布できず、人々は死んでしまうでしょう」

燃料不足は通信サービスにも打撃を与えている。パレスチナの通信会社パルテルは15日、発電機の燃料が枯渇しつつあるため操業停止を余儀なくされるまであと数日しかないと警告した。トーマ広報官は出演前に、戦争が始まって以来4度目となる「新たな(通信)途絶」の知らせを受けたという。

「通信の問題は極めて深刻です」と彼女は言う。「通信途絶は現地の同僚と連絡が取れなくなることを意味します。ガザ地区内にいる人たちも互いに連絡が取れなくなります。救急車を呼ぶこともできない。燃料がないため救急車も来れない。そして、彼らは孤立し、見捨てられ、互いからも世界からも切り離されたという思いを強くします」

米ホワイトハウスは先日、現地の状況を改善するための取り組みとして、援助の流れを促進するための1日4時間の戦闘一時停止を実施するよう交渉したと発表した。しかしトーマ広報官は、それだけでは不十分であるとして、「本当に、本当に、本当に必要なのは」停戦であると強調する。

「ガザの人々にとって、この5週間は地獄だった」と彼女は言う。「今こそ停戦の時です。包囲が解除されるべき時です。物資が定期的に届くようになるべき時です。今がその時です。遅すぎるくらいです。我々に人間性が残されているのであれば、その人間性のために停戦しなければなりません。そうしなければならないのです」

これまでのところ、そのような停戦を求める声は聞き届けられていない。それどころか、イスラエル国防軍(IDF)はハマス殲滅のためだとしてガザ地区の重要インフラへの攻撃を強化し、地区最大の医療施設であるアル・シファ病院への一連の攻撃と、それに続く同病院への突入を行った。武力紛争のルールでは病院への攻撃は禁止されているにもかかわらずである。

イスラエルとパレスチナ組織ハマスの間の戦闘が続く中、イスラエルによる爆撃で破壊された建物の中で生存者や犠牲者の遺体を探す人々。2023年10月25日、ガザ地区南部のハーン・ユーニス。(AFP)

トーマ広報官は、そのような目に余る国際法違反を非難したうえで、アル・シファ病院はIDFの襲撃を受けた時には通常の業務と並行して数万人の避難民を受け入れていたと指摘した。襲撃以前から、同病院に適切なリソースを提供する活動は妨げられており、UNRWAが同病院に到着したのは紛争が始まってから3週間後だったという。

「やっと突破口が開けたのは2週間ほど前のことでした。世界保健機関(WHO)の協力によってようやくアル・シファ病院に行くことができ、切実に必要とされていた医療物資や緊急医薬品を届けることができたのです」と彼女は語る。「しかし、それだけでした。1ヶ月以上の間、我々に許されたのはそれだけでした。病院を含む医療施設は国際法によって保護されており、紛争中も含め常に保護されるべきです」

ハマスがアル・シファ病院を拠点として使用しているという証拠を自身や同僚・関係者は見たことがあるかという質問に対しては、彼女はコメントを避けた。「私は情報を持っていないし(…)我々は軍事専門家ではありません」

トーマ広報官の怒りに拍車をかけているのは、自身やUNRWAチーム全体が被っている人的損失である。これまでにこの紛争で死亡した1万1500人以上の中には、UNRWA職員103人が含まれている。これは国連の78年の歴史上最多の犠牲者数である。彼女は、毎日また一人また一人とチームのメンバーが亡くなってしまうように思われ、その知らせは自身が受け取る情報の中で「最も恐ろしい」ものだと語る。

「そのリストが届くと、心臓がドキドキし始める。同僚がまた一人、本当に、本当に恐ろしい状況で殺されたことを知るのは、この上なく恐ろしいことだから」と彼女は話す。「同僚の多くは家族と共に殺されました。この紛争が始まって以来、ガザ地区の様々な場所で、彼らは家族ごと抹殺されています。本当に恐ろしいことです」

実際、今週は世界中で、亡くなったUNRWA職員らを追悼するために国連旗が半旗で掲げられた。しかしガザ地区では、彼らが命を捧げたミッションに対するUNRWAの献身を示すために、国旗を下げずに掲揚し続ける決定が下された。

イスラエルとパレスチナ組織ハマスの間の戦闘が続く中、パレスチナ避難民のための避難所として使用されているUNRWA運営の学校の運動場に駐車した車の外でUNRWA職員と話す男性。2023年10月25日、ガザ地区南部のハーン・ユーニス。(AFP)

トーマ広報官は「フランクリー・スピーキング」の司会者ケイティ・ジェンセンに対し次のように語る。「これは、同じ国連旗のもとに避難と保護を求めてやって来たコミュニティーに対する我々の献身を示すものです。犠牲となった彼らにとっても名誉なことだと思います」

「日々直面する困難の多さを理解したうえで(最大)限度の支援をするというUNRWAの決意を示すものです。(しかし)我々は、我々のもとに避難を求めてやって来た人々のために最低限しなければならないことすら行えていません」

ただ、避難所を提供できないことは、戦争法無視とみなされているイスラエルの行為と大いに関係がある。国連機関もIDFによって攻撃されているのだ。先週だけでも、イスラエル海軍はラファにあるUNRWAのゲストハウス(職員が宿泊する)を3回攻撃した。ガザ南部はパレスチナ避難民にとって安全な避難場所であるというイスラエルの主張は打ち砕かれた。

「安全な場所はどこにもありません。ガザ地区は北部も中部も南部も安全ではありません」とトーマ広報官は言う。「南部の方が安全だという説が広まっています。それは真実ではありません。 殺された同僚の3分の1は中部や南部で殺されました」

「この戦争で被害を受けたUNRWAの施設のうち、70%以上は北部ではなく南部や中部にありました。だから、安全な場所はどこにもないし、攻撃を免れる場所もありません。国連の施設や病院でさえでも」

トーマ広報官のチームは、このような状況の中で何とかして活動することを求められている。彼女は、チームの精神的・感情的な負担が増しているとしたうえで、UNRWAスタッフ全員が「起こっていることにシェルショックを受けている」と語り、ガザ地区で起こっている破壊のレベルの量とスピードを指摘する。

ジェンセンからガザ地区での停戦の必要性について質問されたトーマ広報官は、「今こそガザ停戦の時です。終わらせなければならない」と答えた。(写真:AN)

「信じられない、前代未聞の事態です」と彼女は続ける。「この数日間に我々が目にした集団避難、ガザ市を含むガザ地区北部から中部や南部へと移動する人々の流れは、多くの人々に、1948年のトラウマを想起させるか、彼らの両親や先祖が経験したトラウマや1948年の戦争を追体験させている」

しかし、第3の集団も存在する。強制移住させられなかった1948年の生存者たちである。この集団は今、強制移住させられ「故郷を離れることを強いられる」ことの残酷さに直面している。トーマ広報官の考えでは、このトラウマを強調することが重要である。

紛争の生存者にトラウマが与える影響を「軽視」する傾向があるのは事実だが、それは「その後長年にわたって人々に付きまとうもの」だと彼女は言う。

UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長がアラブ連盟に停戦を推進するよう求めたのは正しかったのか、そしてイスラエルはそれに耳を傾ける気があるのかという質問に対するトウマ広報部長の答えは明確なものだった。

「全てのドアをノックし、あらゆる手段を講じ、主張を続け、停戦に至るべく努力を続ける必要があります」

「これこそが今非常に必要とされていることです。だから、それに向けてあらゆる努力を払う必要があります。今こそガザ停戦の時です。終わらせなければなりません。破壊の程度も規模も巨大です。今こそこの戦争を終わらせる時です」

特に人気
オススメ

return to top