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混乱の紅海水域に海賊行為が復活

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17 Jan 2024 06:01:40 GMT9
17 Jan 2024 06:01:40 GMT9

紅海とその周辺海域における船舶の航行は、この2カ月で前例のない不安定化に直面している。イエメンを拠点とする反政府勢力フーシ派による、紅海を航行する商業船への海上攻撃は世界貿易に大きな混乱をもたらしている。同組織はイスラエルと関係があると思われる船舶を標的にしているが、無関係の商業船も何隻か攻撃されている。このため、フーシ派に対する米国主導の多国間軍事対応が行われている。アフリカの角周辺で海洋の危険性が高まる中、ソマリア沖の海賊行為と武装強盗という形で、以前の脅威が再び姿を現している。

1990年代から2000年代初頭にかけて、ソマリアの海賊行為は、東アフリカ周辺の重要な海上貿易ルートを航行する船舶にとって最大の脅威であった。2010年から2015年にかけてのピーク時には350件以上の海賊事件が報告された。これを受け、国際海事機関(IMO)は紅海、アデン湾、西インド洋の海域における海賊、武装強盗、海上保安に関する地域会議を行い、2009年に「ジブチ行動指針」が制定された。この指針は、これらの海域における海賊行為やその他の不法な海上活動を大幅に減少させる上で、重要な役割を果たした。

2017年に追加された「ジェッダ修正案(Jeddah Amendment)」は、海洋安全保障分野における多国間協力をさらに強化した。さらに、過去10年間にわたり、複数の海軍軍事力およびパトロール部隊がこれらの海域に援護を提供し、海賊行為を大幅に抑止してきた。しかし、2023年後半、この脅威が再び現れた。

先月以降、ソマリアの海賊によるものと疑われる船舶のハイジャックが少なくとも4件報告されている。

フーシ派の攻撃を背景にして、ソマリアの海賊による攻撃も再び行われている。

ザイド・M・ベルバギ

最初は12月14日、ボサソ東部のソマリア沖で、十数人の身元不明者がマルタ船籍の商業船「MVルエン号」に乗り込んだと報じられた。この事件は、2017年に海賊が一時的に復活し、石油タンカー「アリス13号」を襲撃した時以来、大型商船のハイジャックとしては初の事例だとされている。

さらに、12月18日と12月22日、英国海事貿易作戦局(UKMTO)は、ジブチ北西部とソマリア沿岸の町エイル付近で、別々のハイジャック情報を受け取った。最初の事案では、武装した要員を乗せた5隻の小型ボートが船舶に接近し、2番目の事案では、ダウ船が重武装した襲撃者にハイジャックされた。

最後は12月23日、エイルの北13キロメートルの地点で、イエメン漁船が5~6人の武装した人員にハイジャックされた。これらの行為の動機はまだ不明だが、フーシ派の攻撃を背景にして、ソマリアの海賊による攻撃も再び行われているという点で、憂慮すべき傾向を示している。

海賊行為、特にソマリア周辺で起きているものは、経済的な理由によるものが多い。不安定な国内政治、気候変動、弱い経済、脆弱な公共サービスやインフラなどのさまざまな要因が重なり、一部の人々を海賊行為、違法漁業、麻薬取引などの不法な活動に駆り立てている。

ソマリアの海賊行為は、1990年代初頭に同国で内戦が勃発して以来、世界貿易に大きな脅威をもたらしてきた。これは、地政学的に重要な水域に多くの商船が存在したことが要因である。しかし、ここ数カ月で頻度が高まったとはいえ、海賊行為は大幅に拡大し、以前の水準に達することはないと見られている。

フーシ派による継続的な海上攻撃は政治的な理由に動機づけられており、米英による反撃にもかかわらず抑止することは困難だと見られている。フーシ派指導者たちの声明によると、ガザにおけるイスラエルの敵対行為が終結するまで攻撃は継続されるとされている。したがって、こうした攻撃の減少は、紛争当事者間のより広範な外交的決断や交渉にかかっている。

最近の出来事にもかかわらず、西インド洋ではすでに海賊対策のインフラが整備されている。

ザイド・M・ベルバギ

一方、経済的動機に基づく犯罪は、国際的なパトロールの強化、法執行、および、ソマリアの若者を訓練し再教育するための政府主導の計画など、別の手段によって抑制できる可能性がある。最後に挙げた計画は、代替雇用機会の提供や沿岸経済の発展の形で行われる可能性があるが、これは完全にソマリア国家の安定に依存する。

最近の出来事にもかかわらず、西インド洋ではすでに海賊対策のインフラが整備されている。2011年に結成されたプントランド海洋警察部隊 (PMPF)は、ソマリア海域における違法な海洋活動の抑止に専念している。2023年11月以降、同隊はパトロール活動を強化している。EUNAVFORとしても知られるアタランタ作戦は、アフリカの角と西インド洋の海域に展開するEUの海賊対策軍事作戦である。同様に、多国籍海軍部隊である第151合同任務部隊(CTF-151)は、ソマリアの海賊対策を目的に2009年に設立された。アタランタ作戦やNATOのオーシャン・シールド作戦と連携している。

各国海軍もケースバイケースで対応している。例えば、先週アラビア海北部で「MVリラ・ノーフォーク号」がハイジャック未遂に遭い、15人のインド人乗組員が射殺された事件では、インド海軍はステルス誘導ミサイル駆逐艦「INSチェンナイ」を出動させ、船舶の安全を確保した。インド海軍は同様に、先月アデン湾周辺で襲撃されたマルタ船籍の「MVルエン号」を支援するため海上パトロールを展開していた。

最後に、いくつかの海賊は武装する傾向があるものの、フーシ派が使用するような高度な武器を使用することはない。そのため、武装による抑止は容易である。したがって、ソマリアとジブチ周辺のパトロールを強化すれば、これ以上の海賊行為の発生を抑止できる可能性が高い。海賊行為はハイリスク・ローリターンであるため、パトロールの強化はハイジャック犯のコストを増加させると同時に、こうした攻撃の頻度を減少させる可能性がある。

ザイド・M・ベルバギ氏は政治評論家であり、ロンドンとGCCの間で個人顧客のアドバイザーを務めている。 X: @Moulay_Zaid

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