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AIの祭壇に労働者という生贄を捧げてはならない

2024年の流行語は「ジェネレーティブAI(Generative artificial intelligence)」になりそうだ。(File/AFP)
2024年の流行語は「ジェネレーティブAI(Generative artificial intelligence)」になりそうだ。(File/AFP)
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24 Jan 2024 07:01:31 GMT9
24 Jan 2024 07:01:31 GMT9

2024年の流行語は「ジェネレーティブAI(Generative artificial intelligence)」になりそうだ。昨年3月、マイクロソフトが出資したOpenAIによってマルチモーダル大規模言語モデル(MLLM)「ChatGPT-4」が発表されて以来、ジェネレーティブAIはほとんどすべての企業の役員室、政治家、ビジネスパーソン、学者が集まる国際会議、そして一般人の間での議論の中心になっている。

スイスのリゾート地ダボスで先日閉幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会でもそれは同じだった。AIはこの有名な会議が掲げた4つの中核テーマのひとつであり、コングレス・センターでは30のセッションが、また1週間のサイドイベントでは約100のセッションが開催された。取り上げられたテーマは多岐にわたり、AI利用におけるガバナンスや規制、教育やヘルスケア、さらにはそれ以外の分野におけるツールとしてのAI活用などの内容が含まれていた。

フォーラムでは、さまざまな団体から6つ近くの報告書が提出された。それぞれがAIの力について、またこれらの団体やその周辺にいる他の人々がAIの力をどのように人類のために活用するのかについて、次々と驚くべき主張を展開していた。

確かに、ジェネレーティブAIは企業のリーダーにとっては大きな恩恵となるだろう。それは、オートメーションのプロセスを通じて多くの労働者を無用化することによって、生産性を向上させ、コストを削減することを可能にするからだ。

ほとんどの報告書では、このテクノロジーが非常に破壊的であり、60%もの労働者がその影響に対して脆弱であることを認めている。しかし、どういうわけか、どの報告書もAIは生産性、ひいては企業の収益性を高めるだけでなく、長期的にはAIが奪うよりもはるかに多くの雇用――1200万人から1億人まで――を生み出すだろうと主張している。

ジェネレーティブAIは、生産性の向上とコスト削減を可能にするため、企業のリーダーにとっては大きな恩恵となるだろう。

ランビル・S・ナヤール

このような過熱した話題に関する報告書の常として、多くの場合、それは現実論よりも推測や推定に頼って、大急ぎで作成される。AIによる雇用創出の潜在性に関する報告書もまた、詳細に乏しかった。

AIは銀行や会計、メディア、法律、製造業や農業など、経済の多くの分野にわたって存在する何億もの仕事を、少なくとも部分的に無用化することは明らかである。

確かに、AIは雇用も創出するだろうが、それは高度な資格を持ち、十分な教育を受けた人々の役割になるだろう。一方、破壊される雇用のほとんどは低学歴の人々によって担われるものになる。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンから、インフレや経済不安の高まりに至るまで、最近の一連の世界的な出来事によって最も大きな打撃を受けている社会的弱者だけでなく、社会の一部にも影響を与えるだろう。

AIの急速な導入がすでに一部の国で始まっており、来年あたりには世界中で加速すると予想されている。その中で、何百万人もの人々が、AIの利用によって自分たちの仕事が脅かされたり、少なくとも大きく環境が変化したりする可能性に対する備えがないまま影響を受けることになるかもしれない。

しかし、企業のリーダーたちは利益を上げることだけに集中しているようで、こうした課題に取り組む動きはほとんどない。その一方で政府は、AIの導入を決定する、あるいはほぼ確実に起こるであろう社会的混乱を予測する上で主要な役割を果たすこともなく、再び傍観者となっている。

AIは、経済の多くの分野にわたって存在する何億もの仕事を、少なくとも部分的に無用化にするだろう。

ランビル・S・ナヤール

AIは確かに、仕事の世界に打撃を与える最初の破壊的な力ではない。約300年前に産業時代が始まって以来、変化の波はずっと続いてきた。それぞれの波は、人間にとってそれなりの利益と利点をもたらす一方で、多くの破壊をもたらしてきた。特に過去半世紀、あるいは過去20年間における世界的な格差の急激な拡大は、このような変化が大衆にとっていかに破壊的なものであるかを如実に示している。英国の慈善団体オックスファムがダボス会議2024で発表した報告書は、不平等の規模と、特にCOVID-19によるパンデミックの発生以来、その溝が年々、急速に広がっていることを明らかにした。

オックスファムの報告書によれば、過去3年間で、世界で最も裕福な5人の富は倍増した一方で、50億人以上、つまり世界人口の60%以上が貧しくなったという。AIの登場とグローバル企業によるその採用は、これら50億人にとっての経済を悪化させる一方で、何兆ドルもの追加利益と企業配当を生み出す可能性がある。だからこそ、政府が介入し、AIが引き起こすと思われる社会的混乱を最小限に抑えるために重要な役割を果たすことが不可欠なのである。

企業の利益率が記録的な、しばしば目を見張るような水準にある今、政府はAIの採用によって余剰となった労働者を適切に再訓練するか他の役割で再配置し、彼らの賃金水準を保護することを企業に義務付けなければならない。なぜなら、オートメーションによって職を失った労働者が大幅に貧しくなり、その影響は労働者だけにとどまらず、何世代にもわたって及ぶことを示す十分な歴史的証拠があるからだ。

したがって、企業は労働者の再教育や雇用喪失を最小限に抑える責任を負うだけでなく、雇用が失われた場合には、企業がその後獲得した利益成長の公正な分配を労働者にも与えなければならない。労働者だけでなく、企業のリーダーたちも同じく混乱の熱を感じるべき時が来ているかもしれない。

  • ランビル・S・ナヤール氏はメディア・インディア・グループの編集責任者であり、EIFEの創設者兼ディレクターである。
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