Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

飢餓は、イスラエルの犯罪的戦争兵器

イスラエルの空爆で破壊されたラファ市のアル・ファルク・モスクの残骸の前で、金曜正午の礼拝に参加するパレスチナ人たち。
イスラエルの空爆で破壊されたラファ市のアル・ファルク・モスクの残骸の前で、金曜正午の礼拝に参加するパレスチナ人たち。
Short Url:
02 Mar 2024 05:03:04 GMT9
02 Mar 2024 05:03:04 GMT9

国際社会は何カ月も前からイスラエルに対し、ガザの市民に対して飢餓を武器として使わないよう求めてきた。イスラエルは、パレスチナの人々に苦しみを与えることで、ハマスとの交渉でより良い取引をしたいという希望を公言している。

しかし、このようなイスラエルの行動は戦争犯罪である。29日、イスラエル軍が、ガザ・シティ郊外の支援トラック隊から食料をかき集めようとする飢えたパレスチナ人達に発砲し、100人以上が死亡したことで、その重大性が明らかになった。

国際人道法と戦争法は、戦争の武器として民間人の飢餓を利用することを禁止と明確にしている。国際刑事裁判所のローマ規程は、「故意に救援物資の供給を妨げることを含め、生存に不可欠な物を奪う」ことによって意図的に民間人を飢餓に陥れることは戦争犯罪だと明言している。攻撃者が犯意を認める必要はなく、軍事作戦の状況を総合的に判断して推論することもできる。ガザの場合、意図と行動の両方が文書化されている。イスラエルの戦争が始まった初日から、国防相は食料も水も電気もガザには入れないと公言した。

「イスラエルによるガザ封鎖の継続と、16年以上にわたる包囲は、民間人に対する集団的懲罰であり、戦争犯罪である。ガザの占領国であるイスラエルは、ジュネーブ第4条約に基づき、市民が食料と医薬品を確保できるようにしなければならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチは12月に述べた。2月末までに、状況はさらに悪化している。

イスラエルは、同国との境界があるガザ北部だけでなく、エジプトとの南部国境からも食料やその他の人道援助の搬入を拒否してきた。イスラエルはエジプトからのトラックを空爆し、ガザへの通過許可をいつどのように出すかをイスラエルが管理することを、エジプト人に受け入れさせた。その結果、食料物資を積んだトラックは全て、まずイスラエルの国境地点まで行き、そこで検査を受けなければならなくなっている。この手間のかかる検査の後、イスラエルに同伴されたトラックは、ラファ関門を通ってガザに入ることがを許される。

人道援助関係者は、飢餓に苦しむ住民のニーズを満たすために、毎日何百台もの食料トラックがガザに入る必要があると話す。食糧不足は極限に達しており、3kg入りの小麦1袋が100ドルの高値で売られている。ガザのほとんどの家庭は購入できない。

飢餓を武器として利用するイスラエルの作戦により、飢餓に苦しむパレスチナ人が死んでいる

ダオウド・クタブ

イスラエル軍がガザ北部から中部、そして南部へと移動するにつれ、南部の状況は悲惨の度を増した。イスラエル軍はガザ・シティを占領し、次いでハーン・ユーニスを占領した。一方、パレスチナ人にはラファへと南下するよう促し、現在同市には150万人もの人々が閉じ込められている。エジプトは、イスラエルが彼らの帰還を永久に許さないことを恐れて、一人たりともシナイ半島に渡ることを許さない。ようやくラファにたどり着いたわずかな台数の食料トラックには、当然ながら飢餓に苦しむ人々が押し寄せる。

ガザ地区に十分な食糧が正常に入るようにするのではなく、飢餓を武器として利用しようとするイスラエルの作戦により、飢餓に苦しむパレスチナ人が死んでいる。ガザ南部の状況も悲惨だが、北部の飢餓レベルはさらに酷い。イスラエルは、一握りの急進的ユダヤ系イスラエル人抗議者のために、小麦を積んだトラックが北部に入るのを拒否している。抗議者がもしパレスチナ人だったら、もちろん即座に射殺されていただろう。しかし、同じイスラエル人だったので、嬉々として人道的圧力をかけ続ける軍は、イスラエルが同盟国の米国にガザ北部に届けると約束した小麦トラックが入るのをほとんど許していない。

ガザ北部の悲惨な状況をみて、ヨルダン空軍は毎日のように空からの投下を行うようになった。国際法では、占領軍には直接の軍事支配下にある人々のあらゆる人道的ニーズを満たす義務があるにもかかわらずだ。

29日の大虐殺に対するイスラエルの遅きに失した反応は、「脅威となる」人々にのみ発砲し、死者の大半は食料を求めて大混乱の中で踏みつぶされたと主張することだった。しかし、ジャーナリストのギデオン・レヴィ氏等の賢明なイスラエル人が繰り返し観察しているように、イスラエルは自国が被害者だと主張する一方で、本当の被害者の死は自己責任であるかのように説明するという独特な国である。「占領者が自らを被害者として紹介しているような占領など記憶にない」と彼は言う。

国際刑事裁判所、米国を含むイスラエルの強力な同盟国、それどころか全世界がイスラエルに対し、飢餓を戦争の武器として利用することをやめるよう求めている。世界がイスラエルに制裁を科す時が来た。イスラエルに武器を供給する国は全て、同国の戦争犯罪とパレスチナ人の大量虐殺(ジェノサイド)に加担しているのだ。

  • ダオウド・クタブ氏は、受賞歴のあるパレスチナ人ジャーナリストで、コミュニティ・メディア・ネットワークのディレクター。X: @daoudkuttab
特に人気
オススメ

return to top