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的を外したイランの攻撃

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15 Apr 2024 01:04:25 GMT9

イスラエルを排除し、その都市を焼き払うことは、イランの指導者たちがあらゆるレベルで公然と繰り返してきた脅しのひとつである。こうした脅しは、イスラエルを封じ込めなければならないと考える、イラン国民やアラブの人々との約束に変わった。サウジアラビアなど、湾岸協力会議諸国をはじめとする地域諸国は、数カ月にわたって、地域の不安定な情勢が悪化する危険性について警告してきた。しかし、またしても誰も耳を貸さない。1979年のイラン革命以来、イランの政策は、イスラエルと対峙する例外的な大国として、またイスラエルの積極的な拡張主義政策を阻む力として、自ら立ちはだかることを基本としてきた。

イラン指導部は最初から、自らをパレスチナ人民の権利の保護者であり、イスラエルに対抗するパレスチナ人闘争の主役であると位置づけようとしてきた。

この政策は、パレスチナの大義を乗っ取り、イランの拡張主義的、介入主義的な地域政策と国益を支持するために、まったく不明瞭な方法で、パレスチナ人の苦境を利用することになった。パレスチナの大義を擁護するという名目で、イランはアラビア湾から地中海沿岸に広がる2つの帝国を築くことができた。

イランが、無力なパレスチナ人や、アラブ市民の想像力に植え付けた約束の種は、イスラエルを破壊する意志と能力を持つ唯一の国は、イランだという主張によって育まれた。パレスチナの悲劇を目の当たりにしたアラブ市民なら誰でも、パレスチナ市民が被った歴史的不公正と、この不公正が70年以上も続いていることを認識している。アラブ社会が望むのは、抑圧されたパレスチナ人の権利を保護する勢力が現れること以外にない。約束を果たせず、抑圧された人々の感情を利用し、自己満足と引き換えに、人道的大義が誤った情報に支えられるのは見たくないのである。

イランのイスラエルへのミサイル攻撃は、パレスチナやアラブの市民だけでなく、パレスチナの人々に対する、歴史的な不公正を感じてきた、すべての人々が待ち望んできた「約束の日」を意味する。現在のイランとイスラエルの危機の核心は、ダマスカスのイラン大使館をイスラエルが空爆し、革命防衛隊幹部数人が死亡したことに対する報復であったが、イランはこれを、地域の影響力と覇権をめぐるイランとイスラエルの闘争の枠組みの中にある問題(イスラエルのガザ侵攻とは直接関係がない)として利用した。イスラエルを罰するというイランの決定は、一部では歓迎される行為だった。

この報復は、イランの指導者たちが繰り返し約束してきたように、「イスラエルを地図上から消し去る」ことに成功したわけではない。

アブドルアジーズ・セイガー博士

イランが約束したイスラエルへの報復は既成事実であり、目の前にある課題は、その成功/失敗の度合いを評価することである。わかっていることは、今回の攻撃は、イランの指導者たちが繰り返し約束してきたような「イスラエルを地図上から消し去る」ことには成功しなかったし「イスラエルの都市を焼き尽くす」ことにもならなかったということだ。また、今回の攻撃は、現在のイスラエルによるガザ地区への侵略のさなかに命を落とした3万3000人以上のパレスチナ市民や、イスラエルによる占領が始まって以来、失われた数十万人の命の仇を討つものでもなかった。イスラエルのインフラを破壊したわけでも、軍事力を阻害したわけでもない。

パレスチナの悲劇を解決する鍵は、アメリカとネタニヤフ政権への圧力にある。ベンヤミン・ネタニヤフ首相が、地域情勢の悪化を望んでいるのには、3つの重要な理由がある。第一に、ガザのニュースから遠ざけ、イスラエルがパレスチナに譲歩しなければならないという圧力を軽減する。第二に、イランとの対決はイスラエルに欧米の支持を集める。そして第三に、早期選挙を求める国民の目をそらし、ネタニヤフ政権を維持することができる。そのため、ネタニヤフ首相は可能な限り米国の圧力を無視し続けるだろう。

イランはこれ以上の地域情勢の悪化を望んでいないが、イスラエルがさらなる侵略や報復を仕掛けてきた場合には黙ってはいない。イランがダマスカスの大使館空爆への報復を発表し、それを実行に移すまで2週間近く待ったという事実は、暴力の拡大を誘発する行為ではなく、より象徴的な行為にとどめようとする意図を示している。

西側諸国は、ガザに関する限り、状況から目を離さないようにする必要がある。紛争の根本的な原因に対処し続けなければならないし、忘れてはならない。ヨーロッパは、これを善と悪の戦いとして描くネタニヤフ首相の罠にはまらないようにしなければならない。

イスラエルへのミサイル攻撃の必然的な結果は、イランの指導者たちがアラブ世界の想像力に植え付けた、イランとその革命指導者たちを支持することが、イスラエルの横暴と侵略に効果的に対処する唯一の方法なのだという神話の崩壊と幻想の終焉である。

  • アブドルアジーズ・セイガー博士は、ガルフ・リサーチ・センター会長である。
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