北朝鮮は、自国を取り巻く国々による拡大する同盟との対立をエスカレートさせ続けている。北朝鮮は中国とロシアの支援を受け、再び核・宇宙開発能力を高め、言葉による挑発も先鋭化させている。だが、脅威環境は変化しつつあり、北朝鮮の軍事活動を封じ込める新たな壁が築かれようとしている。
もちろんこの壁は比喩であり、レンガではなくセンサーやロケットなどのテクノロジーで構成される。
障壁は防御兵器やセンサーシステムのさまざまな層で構成され、韓国、日本、フィリピン、さらには台湾といった国・地域を守ることを目的とする。そのすべてが相互運用可能ではないが、連携が起こりつつあるという事実が、西太平洋の安全保障にとって重要である。確かに、北東アジアではエスカレーションの動きが見られ、ロシアで何が起こるかにおそらく関係なく、この動きは続くだろう。
中国はこのような技術的な連携や進歩を嫌っており、欧米に支援された国家間関係を複雑にし、あるいは打ち砕く戦略を実践している。中国は韓国の政治的分断に乗じて、米国や日本との関係をぶち壊そうとしている。韓国の野党勢力と連携し、国民感情を動揺させて、3カ国がより緊密になるのを阻止しようとしている。
日韓関係や日米韓の安全保障協力は、尹錫悦韓国大統領の下で大幅に改善したが、この進展は同じくらい急速に逆戻りする可能性がある。
重要なのは、韓国の新しい国家安全保障戦略が、中国の外交工作がもたらす危険性を強調していることだ。北東アジア政治の性質上、バランスをとる必要があるため、今月発表された韓国の新国家安全保障戦略では、中国との関係を「国益と原則に基づき、断固たる決意で一貫して」維持するとしている。
だが、韓国の人口構成と、ソウルを拠点にするさまざまな利益団体の対北朝鮮感情のために、ソーシャルメディア環境は複雑化している。この事実は中国にてこの力を与える。しかも、現象は静止しておらず、変化していく。中国は、韓国の外交政策、特に中国と北朝鮮に対する姿勢が、5年ごとの新大統領就任時にしばしば劇的に変化することを知っている。
現在の北朝鮮の外交政策は、先月に軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載したロケットの打ち上げに失敗したことの余波に大いに突き動かされている。今週、韓国海軍によってこのミッションで使用された「千里馬1型」ロケットと思われる破片が回収され、北朝鮮は大いに困惑した。
北朝鮮は、この事態が北朝鮮史上最悪の失敗であると表明し、直ちに「核戦争」について言葉で挑発し始めた。これらの言辞の大半は単なるレトリックだが、同国を永続的に世界的脅威たらしめる技術開発のために、北朝鮮問題を本当に真剣に受け止める必要がある。したがって、米国が潜在的脅威を封じ込めようとする一方で、西太平洋諸国とより緊密に協力することは重要で、発展させていくべきである。
現在の北朝鮮の外交政策は、先月のロケット打ち上げ失敗の余波に大いに突き動かされている。
テオドール・カラシック博士
状況に対応するように、韓米関係はかつてなく緊密になり、より一体化している。北朝鮮のロケット打ち上げ失敗に対する怒りは、韓米両政府が4月に署名したワシントン宣言が背景にある。両国は同宣言で、朝鮮半島における核抑止力の強化を目指す新たな核協議グループを通じて、対話と情報共有を深化させる取り組みを約束した。
ワシントン宣言は、核兵器に関する同盟内の協議を拡大することに重点を置いており、核兵器使用に対抗する壁を構築するというより大きなコンセプトの一部として、意図しないエスカレーションの抑制と抑止力強化を達成するように、米韓両軍をさらに統合させるものだ。韓国の軍事力を米国の核戦略に組み込むことは、現在の安全保障環境における一つの動きである。この動きはNATOの核計画とよく似ている。
一方、軍事分野全般でも、ワシントン宣言は、韓国の新戦略司令部と米韓連合司令部の間で能力と計画立案活動をより緊密に連携させることを求めている。韓国の通常抑止力がかつてなく高度化し、実力が高まるにつれ、同盟内の統合を確かなものにすることが重要になる。
構想としては、このモデルを採用し、太平洋地域の他の親米同盟国にも同じ枠組みを適用することになる。その際、日本、フィリピン、台湾の一部の政党や利益団体にとって敏感なトピックであることを認識する必要がある。道のりは長く、交渉が必要になるだろうが、不可能な話ではない。長期的には、相互運用可能なハイテク手段を活用し、核戦争と通常戦争の両方のシナリオに対応できる、可能な限り統合された同盟ネットワークの構築が展望される。
全般的には、北東アジアの安全保障状況は、変化する戦略地政学的環境においてにらみ合いがエスカレートする方向に動いている。ロシアで次に何が起こるかは世界的に重要な問題であり、北朝鮮はロシアを全面的に支持している。中露関係も安定しており、さまざまな戦域が緊迫するなか、今後数カ月にさらに強化される可能性が高い。アラビア湾岸地域では緊張が低下しつつあるかもしれないが、西太平洋がウクライナ・ロシア戦争の戦場のように激烈な状況になる可能性が存在することは疑いない。