
ワシントン:米連邦議会上院は水曜日、トランプ政権により提案されたアラブ首長国連邦(UAE)へ総額230億ドルの武器売却の阻止を求める法案を否決した。この法案は、与野党の議員により超党派で提出されたものであり、F-35戦闘機とドローンを含むこの武器売却は、広範囲に渡る中東和平協定に端を発するものである。
上院議員らは、イスラエルとのアブラハム合意により関係正常化後、マイク・ポンペオ国務長官が先月正式に承認した武器売却は、あまりにも急で、あまりにも多くの疑問の疑問が残るものであると主張した。政権はUAEに対する武器売却はイランを抑止するものであると主張しているが、UAEはステルス戦闘機を所有するアラブで最初の国、中東ではイスラエルに次いで2番目の国となる。
「恒久的平和は、より多くの武器を購入することにより実現できますか」と、決議の採決に先立ち演説を行ったランド・ポール上院議員(共和党・ケンタッキー州選出)は述べた。
議会は、安全保障政策という1つの主要分野でトランプ大統領と対立する意思を示している。しかし、水曜日に議会に提出された武器売却を阻止する法案は、可決に必要な51票の過半数に達することができなかった。トランプ大統領は、いずれにせよ今回の2つの決議案に拒否権を行使すると予想されていた。
今回の武器売却をめぐる対決は、トランプ大統領が拒否権を行使すると脅したにもかかわらず、毎年承認される国防権限法案が与野党議員による支持により圧倒的賛成多数で可決されたことと並び、トランプ大統領大統領任期の最後の数週間におけるトランプ政権側と議会の間の最後の対立となる可能性を秘めている。上院は間もなく、下院で可決された国防権限法の採決を行う。
動きは今のところ停止しているものの、民主党が過半数を占める下院は、おそらく簡単に国防権限法を成立させることができるだろう。
クリス・マーフィー上院議員(コネチカット州)は採決後の声明で、ジョー・バイデン次期大統領の政権と協力して、「政権移行が完了する前に、今回の武器売却の一つ一つを詳しく見ていきたい」と述べた。
マーフィー議員は、戦争で荒廃したイエメンやリビアにおけるUAEのこれまで動きやUAEの中国やロシアとの「複雑な」関係は、答えよりも、より多くの疑問を投げかけていると述べた。
「私は米国がUAEと安全保障ビジネスに関わるべきではないと言いたいわけではありません」と、マーフィー議員は上院外交委員会の中で述べた。
しかし、マーフィー議員はこのように続けた。 「これらの問題を解決しないまま、今こそ中東地域の中心国にF-35戦闘機と無人攻撃機ドローンを初めて売り込む時なのでしょうか。」
武器売却は、米国がUAE、バーレーン、イスラエルの関係を正常化するためにアブラハム合意を仲介した後に浮上した。
ポンペオ国務長官は先月、武器売却について連邦議会に通知した際、武器売却の承認はUAEとの「関係の深化」とイランからの脅威を抑止する必要性を認識したものだと述べた。
ポンペオ国務長官はアブラハム合意による「歴史的合意」は、この地域の「戦略的地形」を変える「一世代に一度の機会」であると述べた。
最大総額233億7000万ドルとなる今回の武器売却には、数十機のF-35戦闘機、高度な無人攻撃機ドローンシステム、空対空及び空対地ミサイルの一式が含まれる。来年まで確定しないだろう。
ニュージャージー州選出で上院外交委員会のトップを務める民主党のボブ・メネンデス議員は、ポンペオ国務長官と当時の国防長官マーク・エスパー氏に送った質問状が未回答のままであると指摘した。
上院議員に向けた行われた極秘の説明会では、議員からの質問に十分に答えていないようだ。
「我々は議会の特権を主張しなければなりません」とメネンデス議員は述べた。「採決はトランプ政権にメッセージを送ることになります。」 イスラエル当局者は以前、米国によるF-35戦闘機の売却について一部懸念を表明していた。しかし、10月にはイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相がイスラエル側の同意を確認したようだ。
水曜日に、上院議員は、F-35戦闘機の売却を阻止する決議案を、47対49で、他の無人攻撃機ドローン売却を阻止する決議案を、46対50で、主に党派に沿った手続き上の採決により僅差で否決した。可決された場合に発動されたであろう大統領拒否権を覆すために必要とされる3分の2の過半数を獲得するにも程遠い数であった。
水曜日に行われた今回の決議案の否決後も、連邦議会はトランプ大統領の反対にもかかわらず、抜本的な次年度の国防権限法案を可決しようとしている。
トランプ大統領は、南部連合(南軍)将軍の名を冠した米軍基地の名称から、その将軍の名前を剥奪することを規定した法案に対し拒否権を行使すると主張している。また、共和党員と一部の民主党員はTwitterやFacebookのような巨大IT企業はソーシャルメディア上で不公平な扱いをしていると主張しており、トランプ大統領は、これらのIT企業を取り締まるため、無関係な条項を国防権限法案に含めるよう議会に求めている。しかし、議員らは、技術的な規定は国防権限法案にそぐわないと主張している。