
トリポリ:アナリストによれば、リビアの軍閥有力者ハリファ・ハフタル氏は選挙に向けて政治的イメージの向上を図っている。というのも、同氏は戦いの場で大敗を喫し、国内外での支持が低下しているという背景がある。
東部を拠点とするハフテル氏の勢力は、西部に位置する首都トリポリ奪取をめざし1年以上にわたり戦ったが昨年6月に敗北したことで、国連が支援する和平交渉、統一政府設立、12月に予定されている全国規模の投票との一連の動きに繋がった。
国際関係学の教授であるミロード・エル・ハジ氏は「ハフテル氏は軍事的には敗北したが、選挙によって政治的な勝利を得ることを望んでいる」と話す。
ハフテル氏は、2011年に独裁者ムアンマル・カッザーフィーが打倒された後の「暴力の10年間」で主要勢力の一人として登場した。
この元帥はイスラム過激派と戦い、リビア東部の各有力部族、そして隣国のエジプトやロシアなどから強固な支持を得てきた。
しかし、トルコが支援するトリポリの統一政府打倒に向けてリビア国民軍と自称する同氏の勢力が攻撃を開始してから2年が経ち、状況は大きく変わった。
昨年10月の正式な停戦協定により国連主導のプロセスが開始され、国内諸勢力の統合、復興活動の開始、12月の投票選挙の準備を目的とした暫定政府が発足した。
ハフテル氏はこの協議においては存在感を示せずにいたが、ここ数週間は集会を開き返り咲きを果たしている。同氏は集会で「殉教者」の家族のために3つの新しい町を作り、数千戸の住宅を建設することを公約している。
「同氏の口調や言葉遣いは変わりました。軍事的な話をやめて、生活環境を改善することを公約しています」とハジ教授は話す。
ハフテル氏はリビア第2の都市ベンガジを中心に勢力を拡大してきた。ベンガジは2011年にNATOが支援してカダフィを倒した蜂起の東の拠点である。
ハフテル氏はこの地域の強力な諸部族を味方につけ、様々な軍事作戦に多くの人員の提供を受けた。
しかし現在、リビアのアナリスト、マフムード・カルファラ氏によれば、ハフテル氏は「支持基盤を失った」状態だ。
「同氏はもはや諸部族の支持を失っています。部族の若者を戦争に巻き込み、無為に命を失わせてしまったとして非難されているのです」とカルファラ氏は続ける。
「同氏は自分が信用を失ってしまったこと、そして再び内戦が起こっても若者が自分の元には集まらないことを痛感している。」
リビアの専門家であるジャレル・ハルシャウイ氏によると、部族の指導者たちと何度も会合を持ち支持回復を図っているものの、ハフテル氏は現在「反発され、深刻な問題」に直面している。
「同氏の軍資金は尽き、西部への支配領域拡大の望みも阻まれてしまったわけです」とハルシャウイ氏は続けた。
ハフテル氏の国外の同盟者たちも警戒心を強め、新暫定政府に肩入れするようになっているとカルファラ氏は話す。
「同氏の外国人スポンサーは、リビアにおける自分たちの利権を守るためには政治的プロセスが唯一解であることを理解しているのです」と述べた。
ハフテル氏は、カダフィの失脚後に混乱に陥ったリビアで賛否はあれども重要な役割を果たしてきた。
トリポリ奪取作戦以前の実績としては、2018年5月に東部の都市デルナからイスラム主義者の民兵を追い出す作戦を成功させ、続いて2019年には石油資源の豊富な南部の砂漠地帯でも作戦を成功させている。
この元帥はカダフィ軍に所属していたが、1987年のチャドでの大敗を機に失脚した過去があり、現在は政治的な復活を目指しているとハジ教授は話す。
ある欧州の外交筋は、ハフテル氏のような主要人物が政治プロセスから排除されれば「抵抗勢力」化して国の安定化の妨げとなる可能性があると警告している。
べリスク・マップルクロフト(Verisk Maplecroft)社のアナリストであるハミッシュ・キニア氏は、ハフテル氏が大統領選挙に出馬するか、候補者を立てるだろうと述べている。
しかし、大統領選挙や立法府選挙が12月以降に延期された場合、ハフテル氏は「それを機に暫定政府は非合法だと主張し、武力紛争への復帰を検討する公算が高いと思われます」とキニア氏は話す。
だがハフテル氏には「もはやかつてのような力はありません」とも続けた。
AFP