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国交樹立30周年を迎えたウクライナとサウジの関係、これまでで最も緊密に

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と、サウジアラビア外相のファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード王子
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と、サウジアラビア外相のファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード王子
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15 Apr 2023 12:04:13 GMT9
15 Apr 2023 12:04:13 GMT9

4月14日はウクライナとサウジアラビアの関係にとって特別な日だ。30年前のこの日、ウクライナのレオニード・クチマ首相(当時)は政府代表団の団長としてサウジアラビアに到着した。両国の正式な外交関係樹立のためだ。

それから年月はあっという間に過ぎ、両国は今日、30年にわたる友好とパートナーシップを祝っている。この間に両国は、2国関係の強固な基礎を築くとともに、さまざまな分野で前向きな成果を残してきた。ウクライナとサウジは深い経験と相互の敬意と理解を手にした。両国関係は成熟し、さらなるチャンスの展望が見えている。

1993年以来、両国間の政治対話のペースが着実に上がっていることも見て取れる。2003年にクチマ氏(当時はウクライナの第2代大統領だった)はサウジを公式訪問した。ウクライナのトップがアラビア半島を訪れたのはこれが初めてで、互恵的パートナーシップの確立とともに、友好関係にある湾岸諸国との関係強化に向けたウクライナの強い意志を示すことが主な目的だった。

両国の議会の対話が始まったのは、シューラ(諮問評議会)のアブドゥラー・ビン・ムハンマド・アル・アシェイク議長がウクライナの首都キーウを訪問した2011年のこと。議長はウクライナ最高議会(ヴェルホーヴナ・ラーダ)と外務省のトップと会談した。

2017年にはウクライナの第5代大統領であるペトロ・ポロシェンコ氏がサウジを訪れ、サルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王から温かい歓迎を受けた。この公式訪問で、サウジとの2国間関係を拡大するウクライナ政府の政策の一貫性だけでなく、エネルギーや農業振興、軍事・技術、科学・教育、人道の分野における両国間の協力強化に必要な前提条件の存在が確認された。

2022年にウォロディミル・ゼレンスキー大統領とムハンマド・ビン・サルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード皇太子殿下の間で幾度となく交わされた電話は、政治的コミュニケーションの大いなる強化を示すもので、現在の状況における両国間の対話の意義を多面的に高めてもいる。この政治的強化の時代は今後も続くだろうし、キーウに皇太子殿下をお迎えし、ゼレンスキー氏のリヤド訪問を調整することになれば、その瞬間はやってくるはずだ。

今年に入ってからのサウジの外相によるウクライナ訪問は、私たちの期待をさらに世界に伝えるものであり、ウクライナへの連帯を示す明らかなサインだった。4月14日はロシアによるウクライナ侵攻が始まって415日目にあたるが、そうした連帯こそが、ロシア軍の戦術的な動きを封じ、丁寧に勝利への道を開いているのだ。

実際、2月のファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード王子(サウジ外相)のウクライナ訪問は大きな注目を集めるとともに、訪問がいかに重要なイベントだったかを示した。サウジの外相がウクライナを訪問するのは、30年前に外交関係が樹立されてから初めてのことだったからだ。また、ウクライナが必要としている人道援助やエネルギー援助を提供することを目指した2つの合意を両国が結んだことは特に重要だった。ウクライナ国民はサウジからのかけがえのない支援と、サウジ指導部からの共感をありがたく思っている。

ウクライナとサウジの関係の持つ可能性は、誇張を抜きにしても非常に大きい。パートナーシップを質的に新たなレベルまで押し上げる伸びしろがある分野としては、貿易・経済協力、文化、教育、科学、観光、若者の交流といったものが挙げられる。

ウクライナとサウジの関係の持つ可能性は、誇張を抜きにしても非常に大きい

アナトリー・ペトレンコ

ウクライナとサウジはこれまで16の2国間協定に署名しており、さまざまな分野(貿易・経済・投資・農業・科学・技術など)での協力の法的根拠になっている。これは今後も増えていくはずだ。

例えば貿易・経済協力に関する政府間委員会のようなハイレベルの2国間の取り組みは両国関係の発展にとって重要なツールだ。ウクライナとサウジはすでに、貿易・経済・科学・技術協力に関する合同政府間委員会を6回にわたって開催しており、現在は7回目の開催に向け調整を行っている最中だ。

両国の貿易関係の勢いが増しているのはウクライナにとって期待通りではあるが、伸びしろはまだ残っている。公式データによれば、2022年の両国間の貿易高は約7億5000万ドルに達した。このうちウクライナからの輸出高の推計値は4億4000万ドル、サウジからの輸出は3億1000万ドルだった。

根気強く脇目も振らず、私たちは両国の国民の距離を精神的にも文化的にも縮める取り組みを行っている。友好関係にある湾岸諸国との間でビザ免除制度ができたことと、サウジとの間に直行便が飛ぶようになったことを背景に、2021年に湾岸諸国からウクライナ各地の都市に多くの観光客が訪れたのは誰の目にも明らかだ。

農業分野や国防産業における具体的な協力の結果を受け、ウクライナは戦時下にありながら、将来の2国間協力のサクセスストーリーの種をまくための新たな分野を探っている。今日の私たちの努力を最大化し、豊かさをもたらす未来に向けた提案をすることで、私たちはウクライナの戦後経済復興計画と、それに関係した投資ポートフォリオのメニューを前に進めている。そして間違いなく両国にとって利益となるだろう経済的パートナーシップの絆を結んでいる。

わが国はIT分野で世界を牽引する立場にあると認められている国の1つだ。非常に優秀なIT専門家を擁し、デジタルトランスフォーメーションやサイバーセキュリティ、ブロックチェーン技術やクラウドソリューションといった分野におけるこれまでの経験を提供することができる。

食糧安保もウクライナにとって優先事項だ。主に力を入れているのは、最大限の付加価値をつけた農業物の生産だ。これは未来の繁栄に向かって進む道だ。サウジがウクライナ産品にとって頼りになる外国市場になるとともに、中東全体の流通の玄関口となることを期待している。

エネルギー供給源の多様化はウクライナ国民の生命とウクライナの独立を守るために欠かせない。サウジ、もっと広く言えば湾岸協力会議(GCC)の加盟国全てと、前進に向けて緊密に協力していきたい。

両国は国際的・地域的機関の枠組みにおいてもうまく協力を行っている。ウクライナの領土の一体性の回復と国家主権の保全を目指した国連総会の決議に対するサウジの一貫した支持にわれわれは感謝している。2月23日に国連総会の決議採択という形で国際社会の大半の支持を受けた「ウクライナ平和原則」には、ウクライナ、欧州そして世界に長期的な平和をもたらす力がある。私たちはサウジがその実現に向けて力を貸してくれることを期待している。

 

  • アナトリー・ペトレンコ氏はウクライナの駐サウジアラビア大使。ツイッターは@AmbUkraineKSA

 

 

 

 

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