気候変動を遅らせるための人類最大の味方は、この地球の海である。しかし、もしこのまま温暖化が進むとしたら — 科学者たちは、これが人間活動によるものだと言う– 、気候変動と地球の温暖化を食い止めるための戦いに私たちは敗れ、人類は間違いなく不確かな未来に直面することになる。

春の訪れを感じて自然の生命力を実感し、期待に胸を膨らませた矢先、新たな観測データが発表され、4月には「観測史上最高」の水温を記録した。科学者たちは、この30～40年の間の気候変動の激化を食い止めるために行われている戦いにおいて、地球は「未知の領域」に到達したと指摘。

今後書く記事のために、紛争など地球を悩ます様々な要素の一覧表を作成しようとしていたとき、これまで以上に分極化しているように見える国際社会が緊急に注意を払う必要があるこの危機をたまたま目にした。海水の温度上昇は、人類の生存を脅かす脅威として、私の素人的な表の中で上位にランクされ続けられるようになった。

ウクライナ戦争と、それが世界的な核対立に発展する破滅の可能性にこそ、私たちは注意を向けるべきなのだろうか。それとも、スーダンでの新たな戦闘の激化、アフリカの不安定な国々への潜在的な影響、再び住民たちが住むところを失う事態へ変容する可能性を考慮すべきなのだろうか。生活費の危機から食料安全保障、農作物の不作、降雨量の減少、先月は記録的な高温となったポルトガルやスペインなどの国で春先にも見られた干ばつなど、他にも夜も寝られなくなるほど数多くのホットスポットや問題がある。

海水温の上昇スピードが急速に加速していることは、科学者も説明できない異常現象である

モハメド・チェバロ

しかし、ここ40日間で海水温の上昇が急激に加速したことは、科学者も説明できない異常事態と受け止められている。米国海洋大気庁がまとめたデータ（最適内挿海面温度シリーズ、OISST）によると、1981年以降のどの年よりも海水温が高くなっている。この海洋の温度上昇は、まだ発達していないエルニーニョ（地球温暖化の影響を及ぼす太平洋の周期的な気象システム）に先行するものである。英国南極観測所の科学責任者であるマイク・メレディス教授は、ガーディアン紙に対して「これには科学者たちも頭を抱えています。これほどまでに温度が上がっているのは本当に驚きであり、非常に気になるところです。」と述べた。

海水の温度が上がると、海水がより多くの面積を占めるようになり、海面上昇が加速されると科学者は言う。また、海水の温度が高くなると、氷冠の融解が加速する。さらに、通常より海水の温度が高くなると、海洋生態系が損なわれ、生物種の適応が困難になることが知られている。また、多くの科学者は、この速度での予期せぬ温暖化が気候危機がこれまで考えられていたよりも速い速度で進行していることを示す兆候ではないかと考えている。

私たちが大気中に排出した二酸化炭素を海が大量に吸収し、急激な気候変動を防ぐ緩衝材として機能してきたことは、以前から知られていることである。排出によって生じた余分なエネルギーや温暖化要因の90％を貯め込み、陸地の余分な熱を和らげる働きを持っている。

海が吸収できる余剰熱量が限界に達しているのかもしれない

モハメド・チェバロ

つまり、最近の海水温の急激な上昇は、海が吸収できる余分な熱量が限界に達しているのかもしれないと、科学者は懸念しているのだ。そしてこれはたまたま起こったことなのか、それとももっと深刻な事態の始まりなのか、と彼らは考えるようになったのだ。

私が最も憂慮しているのは、科学者が確信を持てずにいるということで、これは過去数十年間、それまで以上に注意深く観測・研究されてきたこの問題において初めてのことである。その一方で、地球の深刻な問題の多くが人類の行き過ぎた行為によるものであることを否定しようとする人々が、この地球上に、あらゆる階層に、まだかなりの割合で存在することは懸念すべきことである。

今回のデータは、この先の問題の大きさを示唆している。もし国家がその相違を捨てなければ、あるいは協力して地球の未知の領域への急降下を止めないまでも、遅らせようという気持ちが人間の欲望に打ち勝たなければ、私たちの健康、食糧安全保障、そして私たちが呼吸する空気の未来さえも危険にさらされることになるだろう。

• – モハメド・チェバロ氏は、イギリス系レバノン人のジャーナリスト、メディアコンサルタント、トレーナーで、戦争、テロ、防衛、時事問題、外交などを25年以上にわたって取材してきた。