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日本とUAEの次の50年に向けて 岸田文雄内閣総理大臣

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18 Jul 2023 01:07:24 GMT9
18 Jul 2023 01:07:24 GMT9

この度は、総理大臣に就任後初めて、日本の戦略的パートナーであるアラブ首長国連邦(UAE)を訪問する機会が得られたことを大変嬉しく思います。

昨年、日本とUAEは外交関係樹立50周年を迎えました。振り返れば、日本企業は、1960年代からアブダビの石油産業の発展に携わり、UAEからの安定的なエネルギー供給は、長年にわたり日本の経済成長を支えてきました。

1990年代以降、ドバイメトロや海水淡水化プラントの建設・運営など、多くの日本企業がUAEの基幹インフラ構築に貢献してきました。

UAEは、中東・アフリカ地域で最も多くの在留邦人(約4,500人)と日系企業(約340社)を擁しています。

同地域における拠点およびゲートウェイとして、UAEの役割や重要性は年々高まっています。同時に、日本とUAEの協力関係は、エネルギーや経済といった伝統的な分野をはるかに超え、気候変動、教育、科学技術、宇宙、防衛といった幅広い分野へと拡大しています。

中東地域だけでなく、アフリカや国際的な舞台においても、両国の協力関係は広がり、深まっています。

このような多面的な協力をさらに進めるため、両国は昨年9月、「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)の実施に関する共同宣言」に署名し、その下で具体的な話し合いが進められています。

その例をいくつか紹介したいと思います。教育分野においては、日本は、両国の将来を担う若者の交流やUAEの人材育成への支援を一層強化していきます。そのため、日本は引き続きUAEと協力し、UAEの大学生・大学院生の日本留学、両国の高校生の交流、また日本企業が提供するインターンシッププログラムへのUAEの若手人材の受け入れを推進していきます。

このような教育交流や人材育成支援は、経済・ビジネス分野をはじめとするさまざまな分野における将来の二国間関係のさらなる発展の基盤となると確信しています。

文化の分野では、外交関係樹立50周年を記念して開催されたさまざまなイベントを通じて、UAEの人々の日本に対する関心の高さを改めて認識しました。

ドバイ万博において、日本館が最も人気のあるパビリオンの一つであったことは、その証左です。主に漫画やアニメをきっかけとして、UAEの若者は日本文化や日本語に強い関心を示しています。

今後も日本語教育への支援を拡充するとともに、eスポーツをはじめとするコンテンツ産業やクリエイティブ産業の交流も促進していきます。

観光分野では、2021年11月に日本政府観光局(JNTO)がドバイに中東・北アフリカ地域(MENA)本部となる事務所を開設しました。また、昨年11月からUAE国民の日本入国に査証が不要となったことにより、ますます多くのUAE国民が日本を訪れ、本格的な和食や四季折々の風景、新幹線などの社会インフラを体験し、日本の魅力を発見することを期待しています。

両国関係は宇宙協力の分野でも拡大しています。日本は長年にわたりUAEの宇宙政策に貢献してきました。2018年のUAE初の国産衛星「ハリーファサット」や2020年の火星探査機「ホープ・プローブ」の打ち上げは、いずれも日本のH2-Aロケットに搭載して行われました。

また、今年4月、ドバイのムハンマド・ビン・ラーシド宇宙センター(MBRSC)と日本の宇宙ベンチャーispaceとの協力のもと、UAEの月面探査機「ラーシド・ローバー」が打ち上げられたことは、民間企業による月面探査機着陸を目指した世界初の試みとして、大きな一歩となりました。

このような未来志向の取り組みが、近い将来、さらなる成功につながると信じています。日本は今後も、宇宙分野での両国のさらなる協力を後押ししていきます。

今年11月、UAEはCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)を主催します。UAEは、中東で初めて2050年までの温室効果ガス排出量ネットゼロ実現を公約した国であり、UAEが主要なエネルギー輸出国としてグローバルなエネルギー安全保障の確保に責任を果たし、気候変動問題に積極的に取り組んでいることを日本は高く評価しています。日本は、COP28の成功に向けてUAEと緊密に協力していきます。

また、今回の訪問で、「グローバル・グリーン・エネルギー・ハブ」イニシアチブを提案したいと考えています。このイニシアチブは、UAEを含む中東の地理的優位性や低コストの再生可能エネルギー資源、豊富な投資余力と、日本の最先端の脱炭素技術という、両国それぞれの強みを融合させることを意図しています。

このような両国の強みを最大限に活用することで、中東を次世代燃料や鉱物資源のサプライチェーンにおける世界的なハブにすることができます。このイニシアチブの下、両国は水素やアンモニアの製造・利用、カーボンリサイクルといった関連分野で、重層的に連携していくことができます。

また、COP28に向けて、脱炭素をはじめとするイノベーションを加速させることが極めて重要です。そこで、「日・UAEイノベーション・パートナーシップ」を提案したいと考えています。

今年1月に設立した「日・UAE先端技術協力スキーム(JU-CAT)」による脱炭素技術に関する協力の進展を歓迎しつつ、日本はUAEとのより拡大した産業協力の枠組みを構築することを望んでいます。

特に、日本は、半導体のグローバルサプライチェーンの強靭性強化に向けて、日本および半導体産業への海外直接投資のさらなる拡大を支援するため、より一層努力していきます。

日本とUAEは今年、国連安全保障理事会で非常任理事国を務めています。

日本が主催した今年のG7広島サミットでは、すべての国が、主権や領土一体性の尊重といった国連憲章に明記された原則を遵守すべきであることが確認されました。

また、日本は、インド太平洋において法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、地域と世界の平和、安定、繁栄を実現する「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを推進しています。

このビジョンの実現に向けて、日本はいかなる国も排除せず、すべての国との間で協力を進めていますが、同様に法の支配や寛容を重視する国であるUAEとは、緊密に協力できることを強く望んでいます。

外交関係樹立以来の両国の歴史を振り返ると、両国の協力にはさらに大きな可能性があると強く感じます。

次の50年に向けて、私は、シェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領殿下と協力して、この可能性を現実のものとするために尽力していく決意です。今後の訪問において、大統領殿下をはじめとするUAEの皆様と、両国関係をさらに強化するための方策を話し合うことを、心から楽しみにしています。

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