
強い経済は人口動態、スキルセット、資源の適切な組み合わせが揃ってこそ目覚ましい成果を上げることができる。
しかし、近年、多くの国が驚くべきほどの記録的な低出生率に見舞われ、悲惨かつ複雑な結果を招いている。
この問題の深刻さだが、各国が安定して人口規模を維持するためには女性1人当たり2.1人の人口置換水準が必要だ。
それにもかかわらず、2021年の出生率は多くの国でこの数字を下回っている。
たとえば、オーストラリアは女性1人当たりの出生数が1.7人で、日本では1.3人、米国では1.6人、韓国ではわずか0.8人で出生率の世界最低記録を更新している。
世界銀行によると中東・北アフリカ地域でも出生率が急落しており、1980年には6.2人だったのが2020年には2.7人だったという。
政府部門には差し迫った課題が山積しているが、人口構成の変化はそれに拍車をかけている。
最も明らかな影響は人口規模の大幅な減少であり、これは近い将来の生産年齢人口の規模に影響を与え、労働力不足を引き起こす。
その結果、経済成長、競争力、回復力が低下することになり、各国政府は国外から人材を誘致するために柔軟な移民政策に取り組むことが必要になる。
また、人口減少は消費の著しい減少を引き起こす。
消費は国内成長と海外からの直接投資の機会の面で重要な要素だ。
生産年齢人口の減少に平均寿命の延伸が重なることも国家財政に悪影響を及ぼす。
というのも税収が減少していくからだ。同時に、政府部門は財政負担が大きな社会福祉制度、医療制度、高齢者介護サービス、年金制度の財政運営面で負担の増大に直面している。
これを補うため、政府部門はスマートオートメーションやテクノロジーに移行・投資して、失われた生産性を補い、経済成長を許容範囲内に押し上げることが必要になるが、それには多大な投資が必要になる。
政府部門はこの憂慮すべきパターンを是正するため、自国の出生率を向上させる具体的かつしっかり狙いを絞った決定を下すことが必要だ。
それには子供を持つことを先延ばしにしたり、子供を持たないと決めた人々の根本的な原因を特定することから始める必要がある。
多くの国で行われている社会調査では、いくつか重要な理由を原因として特定している。
たとえば仕事が激務だったり、仕事絡みのストレスで親が配偶者や子供と時間を過ごしたり、世話をしたりする時間がほとんどないといったことだ。
さらに、賃金の伸び悩みや昨今の不安定な経済状況に加え、生活費の上昇や住宅価格の高騰が各家庭で子供の数を抑えることで家計をやりくりしていこうとする圧力になっている。
この傾向は歴史が証明しており、1918年から1920年のスペイン風邪の大流行、大恐慌、二度の世界大戦、最近のCOVID-19の蔓延で見られたように、公衆衛生上の危機や経済ショックが出生率の低下に大きく影響しているとの統計がある。
さらに、一家の稼ぎ手の教育水準とスキルの両方も子供を持つ決断を先延ばしにする上で大きな関連がある。
政府部門は仕事と家庭の両立に道を開く政策的解決策を考案すべきだ。
サラ・アル=ムッラ
こうした日々の課題を考えると、政府部門は労働人口を支援する一連の政策、プログラム、法律を制定することが不可欠だ。手厚い育児手当、子どもの教育や医療サービスに対する補助金、手頃な価格の住宅、住宅補助金、子育て減税など、子育てにかかる費用の上昇を相殺するいろいろな解決策が手近なところにある。
さらに、働く両親のために質が高く手頃な料金の就学前児童保育施設と放課後ケアサービスを提供する責任を政府部門が負うことは極めて重要だ。たとえばカナダ政府は5年間で270億カナダドル(200億ドル)以上という大規模な投資を行い、早期学習・保育システムの全国展開に取り組んでいる。カナダの各州・準州のほぼ半数が児童保育料を1日平均10カナダドルに引き下げる一方、2026年3月までに25万カ所の保育スペースを新設する現在推進中の計画の下、手頃な料金設定の保育スペースを全国で4万カ所増設した。
働く両親を支援するために、政府部門は仕事と家庭の両立に道を開く政策的解決策を考案すべきだ。これにはパートタイム労働、柔軟な勤務形態、リモートワークなどの選択肢を親に与えることを含む。また、産休、育休、育児休暇など柔軟かつ十分な休暇を働く両親が利用できるようにすることも極めて重要だ。
スウェーデンでは子どもが生まれたり養子を取ったりした場合、両親は480日間の有給育児休暇を利用できる。
それぞれの親が240日ずつ申請できるのだ。
さらに、12歳未満の子どもが病気で家にいなければならない場合、スウェーデンでは両親は子ども1人につき年間120日まで介護する権利があり、政府から給与の最大80%(1日あたり約120ドルの上限あり)が支払われる。
また、両親は自分の代わりに子供の世話をする人として他の家族のメンバーや友人、近所の人を指名することもできる。
また、社会的なキャンペーンは文化的な規範にも影響を及ぼしている。
現代の家庭生活を再考するのだ。
世界各地に魅力あるメディアコンテンツがあるが、それらを調べると男性による育児や家事への積極的な参加を促すなど、有望なアイデアがいくつかあることがわかる。
COVID-19の危機は出生率の低下に対処し、家族生活を維持させるという問題を優先させる必要性を再認識させるきっかけとなった。
政府部門は大胆な措置を迅速に講じるべきだ。