先日の国連総会で、インドはガザ地区における即時停戦を求める決議案の採決を棄権した。同国はそうすることで、この決議に反対票を投じた多くの西側諸国に間接的に同調した。
決議案に棄権または反対票を投じた各国は、イスラエルによるガザ地区に対する絶え間ない無差別爆撃を黙認するという立場を明らかにしたことになる。
西側諸国、特に米国と欧州諸国は、イスラエル・パレスチナ紛争問題では伝統的に親イスラエルである。一方、今回のインドの棄権は、これまで中立を堅持し、人道問題に関しては親パレスチナでさえあった同国の立場を大きく転換させるものとなった。
インド外務省は、決議案が10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃を明確に非難していないため賛成しなかったと述べた。この説明はインド国内では懐疑や冷笑をもって受け止められ、イスラエルへの攻撃を明確に非難していないことへの懸念を表明しつつ決議案に賛成票を投じることは容易にできたはずだとの批判が多く上がった。
多くの批判者は、インドのナレンドラ・モディ首相とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の親密な関係が今回の決定に影響を与えたとみた。
今回の決議案に対するインドの姿勢は長引くイスラエル・パレスチナ紛争に対する同国の立場を大きく転換させるものであるというのが一般的な認識であり、棄権の決定は国中で厳しい批判を集めた。多くの主要政党は、モディ政権がパレスチナ問題に関するインドの数十年来の立場を犠牲にしていると批判した。
インドはこれまで、イスラエル・パレスチナ紛争だけでなく中東の他の紛争についても、一貫して停戦を求めてきた。ウクライナ・ロシア戦争についても、どちら側を批判することも一貫して控え、今や1年半以上続いている紛争の平和的解決に向けて停戦と外交再開を繰り返し呼びかけてきた。
インドにとってロシアは伝統的に、西側諸国やイスラエルを含む他のどの国よりもはるかに関係が強い同盟国であるにもかかわらず、インド当局はウクライナとの戦争における暴力の即時停止を躊躇なく求めた。
決議案に棄権または反対票を投じた各国は、イスラエルによるガザ地区に対する絶え間ない無差別爆撃を黙認するという立場を明らかにしたことになる。
ランビル・S・ナヤール
したがって、もしインドがガザ地区に関する決議案に賛成していれば、数多くの国際問題に対するインド自身の立場だけでなく、(同国が主導したいと望んでいる120ヶ国のグループである)発展途上国陣営に含まれるほぼ全ての国の(一定の正当性がある)感情にも非常に合致する行動となったであろう。
120ヶ国からなる途上国陣営に含まれる他の国はほぼ全て停戦要求を支持したのだから、インドはこの陣営の票固めを主導するべきだった。それだけでなく、決議案に対する具体的な修正案(何百人もの民間人死者を出した10月7日のイスラエルへの攻撃を明確に批判する文言の追加など)を提出するべきだった。
この時機を失した不合理な棄権のわずか1ヶ月あまり前、インドはニューデリーでG20首脳会議を開催し大成功を収めた。開催国インドは、共同宣言が発表されるかが疑問視されていたこの会議で、ロシアとNATO加盟国の間の二極化にもかかわらず全参加国に宣言に署名させることができた。
インドはガザ地区に関する国連決議を棄権したことで、歴史的に非常に緊密な関係を持ってきたパレスチナに対する立場を改めて強調するまたとない機会を失っただけでなく、多くのイスラム諸国の感情を逆なでした。それは、湾岸協力理事会(GCC)諸国を含むイスラム世界との緊密な関係を育むために歴代インド政府が数十年にわたって行ってきた努力を台無しにしかねない行動だった。
実際、モディ政権の外交政策における最大の成功の一つはGCC諸国とイスラエルのそれぞれとの間でバランスが取れた関係である。過去10年ほどの間にアラブ世界とイスラエルの両方との貿易・戦略関係が繁栄してきたのはそのおかげだった。
したがって、インドは棄権ではなく、イスラエルがガザ地区で1ヶ月以上も続けている過剰な暴力に対する厳しい批判を選ぶべきだったのだ。
インドはその後、一定の軌道修正を行ったようだ。12日の国連総会での採決で他の144ヶ国と共に、占領下のパレスチナ自治区におけるイスラエルの入植政策を厳しく非難したのだ。
しかし、インドはこの非難で満足すべきではない。むしろ先頭に立って、ガザ地区の完全な破壊という目標が地域に平和をもたらす可能性は極めて低いことをイスラエル指導部に納得させるべく努めることもできるはずだ。そのような目標はパレスチナや他のアラブ諸国の反イスラエル感情を煽り、イスラエルに悲惨な帰結をもたらすだけだということを。