世界が依然としてガザに注目している一方で、イスラエル高官は最近、同国北部国境地帯で現在進行中の低強度紛争が過熱しており、「これまでで最も戦争に近い状態にある」と主張した。ヒズボラは10月8日、イスラエルとの戦争を開始したと、その指導者ハッサン・ナスララ師は述べている。これはイスラエル軍の一部を北部へ誘導し、イスラエル軍が最も必要とされる場所、すなわちハマスと戦闘中の南部から引き離すためだと彼は主張している。

ナスララ師は、彼の戦争をガザに関連づけることで、イスラエルとハマスが停戦に合意すると同時にヒズボラの戦争も終結することを望んでいた。しかし、イランが支援する民兵組織のヒズボラが開始した戦争を、イスラエルが容易に見過ごすことはありそうにない。イスラエルは、自国の安全が回復し、自国の利益が確保されるまで戦争をやめないだろう。

ガザからイスラエルが得た教訓は、フェンスは意味をなさないということだ。和平条約や信頼関係がない以上、イスラエルは攻撃が到達するまでの時間を稼ぎ、安全保障部隊がスクランブルをかけ、奇襲攻撃を阻止する時間を確保できるような無人地帯を築かなければならない。ヒズボラによる対イスラエル戦争は、そしてレバノンからの複数の越境攻撃は、北部に住む10万人以上のイスラエル人に対し、南部への避難を余儀なくさせた。

イスラエルはレバノンとの国境に80キロにわたるフェンスを張り巡らせているが、多くのイスラエル人コミュニティはこのフェンスから数百メートルしか離れていない場所に住んでいる。これらのイスラエル難民が帰還するためには、「国連安保理決議第1559号」、および「ターイフ協定」で改正されたレバノン憲法に従って、ヒズボラが武装解除される必要がある。武装解除が不可能な場合、ヒズボラは「国連安保理決議第1701号」に従い、イスラエル国境から32キロ離れたリタニ川の北側に戦闘員を撤退させなければならない。

これらの決議は書類上では理想的だ。しかし、その履行は難しいことが証明されている。

イランが支援する民兵組織であるヒズボラが開始した戦争を、イスラエルが見過ごすことはありそうにない。

フセイン・アブドゥル・フセイン

2006年、国連は、1978年に結成された小規模な平和部隊、国際連合レバノン暫定駐留軍（UNIFIL）を1万人規模の軍隊に拡大し、レバノン軍にリタニ以南に展開するよう指示した。しかし、これは6年にわたる、ヒズボラによるそのような展開に対する拒否権を無視したものであった。

国際的および地域的な対策は1701号の履行には不十分だった。ヒズボラがレバノン国家を支配しているため、軍はしばしばその意を受け、民兵組織がUNIFILの作業を妨害し、制限するのを黙認してきた。

過去数年間にわたり、米国とイスラエルは国連安保理に対し、UNIFILの権限を拡大し、移動と査察の自由を認めるよう国連安保理に働きかけてきた。しかし、米国がどのように働きかけても、レバノン軍もUNIFILも1701号を履行することができず、無力なままであり、それをイスラエルは見てきた。

しかし10月7日、イスラエルの安全保障に対する見方が変わった。敵対組織が壊滅的な戦争を始めるよりも、自らの人民のために事態を改善することに関心があるだろうという予測、つまり敵の合理性に賭けていた時代は終わったのだと。

イスラエル国民が北部に帰還するためには、同国は先制的措置と早期警戒を実施しなければならない。しかし、その前に米国を納得させる必要がある。米国は、ガザ紛争がレバノンや他の地域に拡大することを望んでいないことを明確に示している。

イランは別の考えを持っている。レバノン、シリア、イラク、イエメンなど、地域一帯に存在するイランの代理勢力は、イスラエルや米国の標的に対し、ガザへの支援だと思われる攻撃を開始した。

イスラエルはヒズボラに対する懸念を米国と共有し、米国はアモス・ホッホシュタイン米大統領特使をエルサレムとベイルートに派遣した。イスラエルによる正確な標的攻撃で170人以上のラドワン特殊部隊のメンバーを失った後、ヒズボラの態度は軟化したようにみえる。ナスララ師もレバノン当局も、1701号に従ってイスラエルとの国境紛争を解決することを申し出ているが、どちらもガザ戦争の終結を条件としている。

「レバノンは、ナクーラのB1からガジャール、シェバア農場、クファルチョウバ丘陵まで、国土の隅々まで解放する新たな歴史的機会を得た」とナスララ師は述べた。「しかし、ガザでの戦争が停止するまで、いかなる交渉も成果を得ることはできないだろう」

レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相は、ナスララ師の立場を繰り返し、次のように述べた。「私たちは、（ガザで）私たちの兄弟が大量虐殺と破壊に苦しんでいる間は、イスラエルと我が国の取り決めについて話し合うことは受け入れない」

#イスラエル は検証可能な強制メカニズムを備えた「新たな1701号」を国連に望むだろう。

フセイン・アブドゥル・フセイン

ナスララ師が言及したような機会を得て、レバノンは国連に対し、イスラエルが1701号に沿って係争中の13の国境地点を譲歩する場合、その見返りとして、レバノンはイスラエルとの1949年の休戦協定を復活させることに同意するという内容の提案を送った。しかし、レバノン側は、国連決議で示されたヒズボラの武装解除およびその展開については言及しなかった。イスラエルが係争中の国境地点について譲歩する場合、その見返りとして、ヒズボラはイスラエルとの戦争を止めることに同意するだろう。しかしその場合でも、ガザの恒久的停戦が条件となる。

レバノンの提案、および米国が外交を通じてヒズボラを牽制できないという事実から、イスラエルに残された選択肢はひとつしかない。それは、ヒズボラをリタニ川まで北上させる全面戦争だ。

その結論のために、イスラエルとヒズボラとの戦争は、新しい国連安保理決議を必要とする。その場合、イスラエルは検証可能な強制メカニズムを備えた「新たな1701号」を国連に望むだろう。

もし世界がそのような決議を提案できなければ、イスラエルはおそらく国境に沿って立ち入り禁止区域を一方的に設定するだろう。その一方で、1701号は、シリアでヒズボラとイランの資産を追い詰め、彼らがイスラエルを脅し、戦争を仕掛けられるような軍事インフラを構築するのを阻止してきたのと同じ「未知の」勢力によって執行されることになるだろう。

• フセイン・アブドゥル・フセイン氏は、国家安全保障と外交政策を専門とするワシントンの超党派研究機関、民主主義防衛財団（FDD）の研究員である。
  X: @hahussain