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アラブ民族がイスラエルの政府を樹立する日も夢ではないかもしれない

12 Mar 2020
アラブ人有権者の高投票率によって、ベンジャミン・ネタニヤフとベニー・ガンツ(上)はその戦略と選挙公約を修正せざるをえなくなった。(AFP)
アラブ人有権者の高投票率によって、ベンジャミン・ネタニヤフとベニー・ガンツ(上)はその戦略と選挙公約を修正せざるをえなくなった。(AFP)
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長い年月を経てようやく、イスラエルのアラブ市民は、選挙で投票する者の数が増えれば自分たちのリーダーに権限を与え、彼らにその要求を訴えさせることが可能なのだということを実感した。今のようにイスラエル国内にはびこる敵対心という霧の中にいると、それを明確に見据えるのは容易ではないかもしれないが、ここ最近のイスラエルの潮流には、いつかパレスチナ人がイスラエルの政府を掌握する日が来るかもしれないと思わせるものがある。

それは皆が思っているほど非現実的な話ではない。3月2日のクネセト(立法府)選挙では、アラブ・ジョイント・リスト連合がイスラエル議会120議席中15議席を勝ち取った。これは彼らにとって史上最大の議席数となる。ジョイント・リストは三番目に多いクネセト議席数を獲得したことになる。ベンジャミン・ネタニヤフ首相を党首とする保守系リクード党の36議席、そしてベニー・ガンツ氏を党首とする政党連合「青と白」の32議席に続くものだ。

この選挙は過去11ヶ月間で三度目の新政府樹立に向けての試みであり、重要な意味を持つ。しかし、今ここでパレスチナ人が政府樹立を先導することはできないとしても、彼らの今回の快挙は、いつの日かそれが容易に達成できる日が来るであろうことを約束するものだ。イスラエルのユダヤ人たちはやがてクネセト内最大のブロックとなったこのアラブ連合に、与党として政府の樹立を頼まなければならない状況に陥るかもしれない。

十分予測されるシナリオとして、イスラエルの「民主主義」が非ユダヤ人の平等性を否定するような一段と限定的かつ差別的な法律を可決する可能性はある。それはさて置き、この選挙はこの先何が起こるか全くわからないということを示している。イスラエルの法律には非ユダヤ人、とりわけパレスチナ市民を差別する法律が67存在する。しかし、人種隔離政策をとるイスラエルは、最終的には沈みゆく船の中で南アフリカのアパルトヘイト政権と同じ運命をたどることになる可能性がある。南アフリカは1990年代初頭に解体されている。

民主的手段によって国を望み通りのものにすることができるのなら、いったい誰が革命や戦闘機や武器や暴力を必要するだろうか?

Ray Hanania

 

イスラエルにおける非ユダヤ系人口は全体の20%を占める。つまり非ユダヤ人がクネセトの120議席中24議席を占めることも可能なわけだ。万が一ユダヤ系政党が弱体化するようなことがあれば(それは十分あり得ることだが)、クネセトの24議席を獲得することによってアラブ系政党は最大政党となり、ひいては政府樹立のチャンスを手にいれることにもなりうる。

民主的手段によって国を望みどおりのものにすることができるのなら、一体誰が革命や戦闘機や武器や暴力を必要とするだろうか?連合の結成は一つの戦略だ。今の時代にはそのように思えないかもしれないが、120議席中15席を手中に収めた今、これこそが今後の成長のための基礎となる。

アラブ人はしばしば「人口統計の時限爆弾」の話をする。出生率がユダヤ人よりも高いということの持つ威力のことだ。今のその傾向が続けば、アラブ系人口がイスラエル国内のユダヤ系人口を上回る日がやがて来る。しかし選挙投票こそがまさにそのパワーの真価を発揮させる機会であり、パレスチナ人が今日イスラエル内で直面している民族的かつ市民権上の不平等に耐え忍ぶための原動力を与えることになる。

ジョイント・リストの快挙はイスラエル人にショックを与えた。もともとネタニヤフもガンツもアラブ人の後援による連合の設立には同調しない口ぶりであった。ネタニヤフはイスラエルで最も反アラブ的立場をとる歴代首相の一人であり、昨年四月の選挙に先立ってアラブ人に対する人種差別的な襲撃を背景に選挙運動を行った。ネタニヤフは自分を支持する有権者ベースに対してこう警告した:彼が敗ければガンツがアラブ人との連合政権を樹立し、ガンツはアラブ人に、ガザ地区を攻撃するかそれともハマスを承認するか、の選択をする権限を与えることになる。ネタニヤフは「ビビかティビか」というキャンペーンスローガンを掲げた。これはネタニヤフ自身のニックネームとアラブ系政党タールの党首アフマド・ティビのニックネームだ。後にティビとジョイント・リストの党首アイマン・オデは、ネタニヤフの恐怖におののく様子がアラブ人有権者を駆り立て、自分たちの政党に議席と権力をもたらすことになったことを知る。

しかしアラブ人有権者の高投票率によって、ネタニヤフとガンツの両者はその戦略と選挙公約を修正せざるをえなくなった。おおかたの政治家は選挙運動中実に大げさな話をし、嘘さえ平気でついては、あとになってその公約をいとも簡単に破ることをなんとも思わない、ということをパレスチナ人は再確認させられた。

ネタニヤフはかつてユダヤ人票を増やそうとしてアラブ人を国の脅威だと非難したことがあったが、今月の選挙の直前になって、イスラエルで唯一のアラビア語によるニュース番組Halaテレビに出演し、アラブ人有権に向かって土壇場のアピールを行った。今やイスラエルメディアは、もしジョイント・リストがガンツには政府樹立の能力はないとして彼と手を組むのを断れば、ネタニヤフはアラブ人にもっと「甘い汁」を与えることだろうと報道する。その甘い汁とやらが一体何なのかはわからないが。

ガンツの方は、選挙前に先立って自分はアラブ系政党とは連合を組まないと言っていたが、他の連合政党員からの圧力にもかかわらず、現在ティビとオデの両者と協議を行っている。そうした話し合いも失敗に終わる可能性はあり、そうなればガンツは政府樹立の別の方法を模索せざるをえなくなる。しかし、これらの動きが実際に起こっているという事実こそが、将来イスラエルの政治がパレスチナ人にとって望ましいものへと変わっていく道筋を作り出すのだ。

  • レイ・ハナニア(Ray Hanania)は受賞歴のある前シカゴ市役所専属記者兼コラムニスト。彼の個人的なウェブサイトwww.Hanania.comからご連絡いただけます。ツイッター:@RayHanania
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