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西側諸国は政府職員からの前例のない警告を無視してはならない

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18 Feb 2024 10:02:20 GMT9
18 Feb 2024 10:02:20 GMT9

多くの人にとって、行政府は政治家に助言を与え、その政策を実行するために働く顔のない官僚的な機械であり、常に舞台裏で活動し、世間の目には触れない。そこで働く職員が、自分の意見や分析を共有するのは職務と関係のある環境の中に限られ、それらが外部に出ることはない。

それゆえ、米国と欧州の800人の政府職員が、イスラエルがガザで行っている戦争の方法にあまりに無批判な政府の姿勢は、戦争犯罪に加担しているも同然だとして痛烈に批判する書簡に署名したことは、注目に値する。

また、この書簡は、人権条約や国際法のルールを精査し支持することに関して、西側諸国が示す二重基準に対するより広範で正当な批判の文脈の中で眺める必要がある。

このような集団的かつ公的な憤懣の表明は、その規模、署名者の地理的な広がり、時期といった点で、前例のないものであり、昨年10月7日に起きたハマスによる大量殺戮への対応に関して、イスラエルのやりたい放題を容認したことは大きな過ちであったという、深甚な懸念と切迫感、場合によっては絶望を指し示している。

さらに、この書簡が警告しているように、黙認と明示の両方の形でこれを継続させることは、「我々の政府の政策が、国際人道法の重大な違反、戦争犯罪、さらには民族浄化やジェノサイドの一因となるというリスク」を生み出す。

公務員との付き合いに慣れている人なら誰でも、彼らは政治家とは異なり、特に自分たちの考えや意見が世間に知られる可能性がある場合は、控えめな表現や微妙なニュアンスを好む傾向があることを知っている。

今回の書簡はそうではなかった。この書簡の公表は熟慮の上の決定に基づくものであり、このように協調して書かれ、署名され、公表されたこと、そして署名者の中に約80人の米国政府職員(その中には多くの外交官も含まれている)が含まれていることは、彼らが仕えている政府は自分たちの言葉に耳を傾けないと感じており、メディアや野党政治家、市民社会、一般市民からの外部支援がなければ、政権を説得して有害な政策を撤回させられる見込みがないと考えていることを示している。

この書簡に書かれた警告に耳を傾けるべきなのは、彼らが仕える各国政府だけではない。同様にイスラエルも、自らの行動が最も近い同盟国との友好とその支持を損なっているという兆候に気づくべきだ。

昨年10月7日の襲撃の直後には、ハマスの手によってイスラエル人が被った喪失に対して、世界中から同情と哀れみの声が寄せられた。これは当然のことである。イスラエル人を殺害した行為の残忍さが忘れ去られることはなかったが、それはイスラエル軍がハマスとの戦闘の過程で見せた冷酷さと不注意さ(その結果、ガザではほとんど理解不可能で、いかなる状況でも正当化できないような数の市民が殺害された)によって短期間のうちに翳りを見せることになった。

昨年107日に起きたハマスによる大量殺戮への対応に関して、イスラエルのやりたい放題を容認したことは大きな過ちであったという、深甚な懸念がある 

ヨシ・メケルバーグ

ハマスによる宣戦布告としか言いようのない攻撃に対応するイスラエルの権利、いや、国民に対する義務を支持する友好国からの当初のメッセージは、一般市民がその渦中に巻き込まれ、自分たちが犯してもいない罪のために自らの命と愛する人の命という究極の代償を払わされ、癒すのに何年もかかるであろう荒廃と集団的トラウマに苦しめられる状況で、不釣合いで無差別な軍事力を行使することを許可するものではなかった。

この書簡に署名した上級公務員にとって差し迫った懸念は、イスラエルが国際司法裁判所(ICJ)による大量虐殺の告発に直面しているため、イスラエルに武器や弾薬、さらには政治的影響力までも提供している国々が、法廷においてでなくとも、少なくとも世論の判断では、戦争犯罪に加担しているとみなされる可能性が高いということだ。

また、地理的にも範囲においても比較的限定されていた紛争が、ガザをはるかに越えて拡大し、西側諸国にとって安全保障、政治、経済の面で影響を及ぼし、この地域の同盟国を不安定化させる脅威となっている。紛争は、最も有害な形で社会の言説に入り込んでいる。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の日和見主義と自暴自棄、彼の極右パートナーの「審判の日」妄想、そしてイスラエル社会の他の人々の間に広がる集団的トラウマの中で、一時的なものであれ人道的停戦を求める声は、イスラエルが勝利を収めるのを阻止し、ハマスの破滅を救おうとする試みとみなされてしまう。

より冷静に考える者にとっては、この時点で戦争を止め、平和と和解のビジョンを構築することが必須である。まずは150万人(開戦前のラファの人口の6倍にあたる)の市民がひしめき合っているラファへのイスラエル軍の侵入を阻止することで、すでにガザ地区で起きている人道的惨事をこれ以上悪化させないようにすることから始めるべきだ。そうすれば、何千人もの人々を確実な死から救うことができる。

ラファへの地上攻撃は、ICJでのイスラエルに対する提訴に勢いを与える可能性もあり、イスラエルとパレスチナ人の関係はもちろんのこと、ガザの再建は、すでに誰もが直面している巨大な難題よりもさらに大きな課題となるだろう。

この書簡に署名した公務員たちは、自国の政府が責任を免れることができない、上記のような事態を恐れている。また、人権を保障し、無防備な市民を守るに際して、ある集団が他の集団より優遇されているために、人権を擁護し国際法のルールを公平に適用するという政府の公約が無意味なものになっているという申し立てが力を得ることも懸念している。

オランダでは、ガザでパレスチナ人の命が失われていることに政府が無関心であることが世間を騒がせ、先週、オランダ政府はイスラエルへのF-35戦闘機の部品出荷を停止すべきだという裁判の判決が控訴裁判所で下された。イスラエルがガザへの攻撃を続けていることがその理由で、裁判所はこれを国際人道法の深刻な違反の可能性があるとしている。

公務員は国民から選ばれた者ではない。政治的決定は、最終的には選挙で選ばれた代表者が下すものであり、法の枠内にとどまるべきである。政治家と公務員であるそのアドバイザーが異なった意見を持つのは正当なことだ。

しかし、今回のような特殊な状況において、膨大な経験と知識を持ち、最も重要なこととして、いかなる政治的アジェンダにも縛られることのない、政治の実践に携わる何百人もの人々が、このように独自の一歩を踏み出したことを無視するのは愚の骨頂である。

結局のところ彼らは、ガザでの戦争に関する西側諸国の政策の結果、その信頼性が損なわれていることを世界に警告し、国際法のルールはもちろん、それぞれの国の倫理観の中心にある大切な価値に基づいて国際秩序を促進し、維持するための行動を各国に求めたのである。

  • ヨシ・メケルバーグ氏は国際関係学教授、国際問題シンクタンク、チャタムハウス中東・北アフリカプログラムのアソシエイトフェロー。X: @YMekelberg
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