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併合計画が縮小されればネタニヤフが安心する理由

2020年6月7日、首相官邸で入植者の指導者と会談するベンジャミン・ネタニヤフ氏と入植大臣のティピ・ホトヴェリ氏(左から6人目)。(提供写真)
2020年6月7日、首相官邸で入植者の指導者と会談するベンジャミン・ネタニヤフ氏と入植大臣のティピ・ホトヴェリ氏(左から6人目)。(提供写真)
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11 Jun 2020 09:06:01 GMT9
11 Jun 2020 09:06:01 GMT9

イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は、自らが作り出した迷宮に閉じ込められている。ネタニヤフ首相は、これまでの首相が敢えてしなかったことを達成する計画を進める上で逃すことのできない「歴史的な好機」にまだとらわれているのだ。その好機とは、ヨルダン川西岸の領土を併合することだ。というのも、ドナルド・トランプ米大統領が提案している和平案では、ヨルダン渓谷を含むパレスチナの土地の大部分を併合することが可能なのだ。

しかし、そこは簡単なところだ。トランプ大統領には問題や課題が山積しており、全面的または部分的な併合の期限として自ら設定した7月1日に間に合わせようとする試みを阻んでいる。日曜日、ネタニヤフ氏はトランプ氏の計画に反対しない11人の入植地の指導者と会合を開き、いくつかの興味深い進展を明らかにした。彼は、まだ米国政府から併合を進めるための許可を得ていないと述べた。また、併合される領土は当初の計画よりも少なくなる可能性があり、併合対象となる地域の線引きは完了していないと付け加えた。

さらにネタニヤフ氏は、トランプ氏の計画には独立したパレスチナの自治体の形成が含まれているが、「それを国家とは呼ばない」と述べている。要するに、1月にホワイトハウスでトランプ氏の計画が明らかになった時点ではそれを受け入れていたネタニヤフ氏は、見返りに何かを約束することなく、計画の特定の部分を取捨選択したいと考えているのである。パレスチナ人やアラブ諸国、国際社会がこの計画を支持しているわけではない。それどころか、パレスチナ人はそれを拒否し、火曜日には中東カルテットに非武装国家を樹立する対案を提出した。マフムード・アッバス大統領も先月、イスラエルや米国とのオスロ関連の合意はすべて無効であると宣言していた。ヨーロッパ諸国は、イスラエルが違法な併合を進めた場合には制裁措置を課すとイスラエルを脅しており、一方ヨルダンはその結果としてイスラエルとの「大規模な紛争」が発生すると警告している。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの湾岸主要国は、併合を拒否する立場を明確にし、サウジアラビア政府は二つの国家を持つことによる解決策を支持していることを改めて表明した。

しかし皮肉なことに、ネタニヤフ氏の真の問題は、彼の内閣や、同国の安全保障・軍事部門の幹部、そしてイスラエル国民によるものだ。先週、多くの入植地の指導者がトランプの計画の一部に反対を表明した一方で、ユダヤ人入植者を代表する統括団体であるイェシャ評議会の議長は、トランプはイスラエルの友人ではないと述べている。入植者たちは、パレスチナ国家を創設するというこの計画の提案に反対している。同国家の領土がヨルダン川西岸の50パーセントにも満たず、不連続な土地や飛び地をかき集めた主権を持たない存在であるにもかかわらずである。

いわゆるエルサレム問題・遺産担当大臣のラフィ・ペレツ氏は先週、トランプ氏の和平案には「我々が受け入れられない条項がある」と述べ、「祖国にパレスチナ国家が設立されることは受け入れない。私は、来るべき法案の中でパレスチナ国家の承認が言及されることに反対する」と付け加えた。これに対し、ネタニヤフ氏は入植者たちに、もし併合案がイスラエル議会で審議される場合、トランプ氏の計画の他の規定とは独立して行われるだろうと語った。

イスラエルの元軍人や治安当局者は、併合はイスラエルにとって何の価値もないどころか、安全保障上のリスクをもたらすだろうとネタニヤフ氏に警告を発している。他にも、ネタニヤフ氏がイスラエルの民主主義国家としての存続に関わる併合の政治的・人口的影響を理解しているかどうかを疑問視する声もある。土曜日、テルアビブのラビン広場では、数万人のユダヤ人とアラブ人が併合計画に抗議し、併合がすでに分断されたイスラエル社会をさらに分裂する可能性が示された。

米国当局者は最近、併合計画についてコメントしていない。先月、マイク・ポンペオ国務長官がイスラエルを日帰り訪問したときが最後だ。しかし、ホワイトハウス関係者に近い情報筋は、併合が計画の一部であり、計画の全ではないというのが米国の立場であることは明らかだと本誌に語った。同筋によると、トランプ政権は7月1日の期限にコミットしておらず、今後数週間のうちにパレスチナ人が計画を話し合うための接触を再開することをまだ期待しているという。もし彼らがこれに失敗した場合、米国は特に注文をつけることなく、ネタニヤフ氏が段階的かつ部分的な併合を進めることを認めるだろう。第一段階ではイスラエルの入植地に限定し、ヨルダン渓谷は含まないかもしれない。

ネタニヤフ氏は、見返りに何かを約束することなく、トランプ氏の計画の特定の部分を取捨選択したいと考えている。

オサマ・アルシャリフ

これはネタニヤフ氏に彼が探している「出口」を提示するだろう。ネタニヤフ氏は公約の一部を履行し、入植者を満足させると同時に、パレスチナ国家の承認を認めずにいられるだろう。ヨルダン渓谷を除外した限定的な併合は、ヨルダンとの和平条約を守ることにもなるかもしれない。

この重要な時期にホワイトハウスとの接触を断つというアッバス氏の決断には疑問が残る。情報筋によると、アッバス氏が大統領執務室に電話をかけてこれば、トランプ大統領はすべてを保留にする準備ができているという。パレスチナ側は現時点で中東カルテットの関与を受け入れているが、イスラエルも米国も関心を示していない。

  • オサマ・アル・シャリフはアンマンを拠点とするジャーナリスト兼政治評論家だ。Twitter @plato010
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