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どんなに不公平だとしても、一国家がパレスチナ人にとって必要なスタート

2020年6月6日土曜日、イスラエルのテルアビブで抗議活動家が集まり、イスラエルによるヨルダン川西側地区のいくつかの地域の併合計画に抗議している。(写真はAP)
2020年6月6日土曜日、イスラエルのテルアビブで抗議活動家が集まり、イスラエルによるヨルダン川西側地区のいくつかの地域の併合計画に抗議している。(写真はAP)
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14 Jun 2020 06:06:12 GMT9
14 Jun 2020 06:06:12 GMT9

私は前回、2016年米大統領選のほんの数ヶ月前に起きた〈ブラック・ライヴズ・マター〉抗議の後のことを鮮明に覚えている。パレスチナ人を支持する看板やスローガンをあちこちで目にするのは興味深いことだった。

米国は今や、さらに多くの〈ブラック・ライヴズ・マター〉抗議を目の当たりにしている。そして今回もまた、大統領選が迫っている。〈パレスチニアン・ライヴズ・マター〉と謳う看板があり、さらに進んでイスラエルに人種隔離国家としての烙印を押し、パレスチナ人との連帯の大義は今ではさらにわかりやすくなっている。この大義は概して、メディアやソーシャルネットワーク、さらには米国や欧米の第一線の政治家の間ではそれほど知られていないようだ。これは特に重要だ。この抗議がイスラエルによるヨルダン川西側地区のいくつかの地域の併合計画と同時に起こっているからである。

おそらく、パレスチナ人に対して国際的に世論の支持がこれほど高かったのは、一番最近では、1980年代終わりに民衆蜂起が初めて起きた時だろう。石を持った子供たちが戦車と兵士に立ち向かっている画像が世界の世論を動かし、イスラエルにとって大きな重圧となった。これらの抗議と不服従の活動は主に市民によるもので、オスロ合意まで続いた。

しかし、合意に続いて、いずれもイランが支援するハマースとイスラミック・ジハードのテロリストおよび軍事行動がこのパレスチナ人連帯の大義を崩壊させたのだ。これはまた、分裂が始まったことを示しており、ハマースによるファタハおよびパレスチナ暫定自治政府への本当の抗議の現れでもあった。欧米の人々は、市民の抗議に同調して弾圧と闘うグループは支持するだろうが、どんなに正当なものであっても、テロリズムを用いる大義は支持しないだろう。このことは30年前も同じだったが、現在ではよりいっそうその傾向が強くなっている。

米国や多くの欧米諸国の現在の運動はテルアビブにまで広がっており、大勢の人々が集まってイスラエル現政権による併合計画に抗議した。米国のバーニー・サンダース議員は党員集会でイスラエルの計画に対して強く反対する演説を行った。また、イスラエルの占領を終わらせるように求めた。このバーモント州選出の議員の人気は高まってきており、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスなど、米国の政治指導者たちの新たな時代を構成する一人となっている。これは、民主党内ではさらに顕著になっており、政治状況をさらに左派寄りへ動かしている。最初の民衆蜂起との比較を続けるなら、当時は政治とは無関係に国際的な支持を得ていた。しかし、現在、米国や欧州において、左派および極左派の人々のみがこの政策を求め続けているように見える。それだけでなく、彼らは、平和的立場よりも反イスラエルの立場をとっているようにも見える。

現在、パレスチナの統率力は分断され、不人気である。アラブ諸国や世界の指導者たちは和平プロセスやその関係者に飽きてしまったように見える。結論に至らない反面、多くの意味において非常に犠牲が大きいからだ。

恐怖と軍事行動を放棄し、団結し、認められ、尊重される指導力がなければ、パレスチナ人が国際的に高まる支持を利用して解決を求め続けることはできない。現在の分裂した状況でハマースの政治的・軍事的目標がある中では、それは起こりそうもない。パレスチナ暫定自治政府の影響力のなさにより、イスラエルがこれらの運動をものともせずに策略を用いる余地が十分にあるため、なおさらのことだ。実際に、これらの条件がなければ、米国の支援とは無関係に、ベンヤミン・ネタニヤフは現在の併合を検討することはできないだろう。

ドナルド・トランプが1月に和平イニシアチブを提示した時に、私には他の人とは違う見解があった。パレスチナ人は少なくともこれを交渉の開始点と捉えるべきだと思ったのだ。現状がそうであるように、それがイスラエルに有利なものであったとしても、問題を国際情勢の中心に戻したからだ。そして、それは独立国家へのロードマップですらあったのだ。しかし、今週、パレスチナのムハンマド・シュタイエ首相はついに対抗案を提示した。

イスラエルは引き続き、ヨルダン川西側地区植民地のように、人口統計学上の条件に従ってうまく地図を分割している。これは一旦実行されたら覆すことはできないだろう。ゆえに、私は、現在差し出されようとしている土地よりも多くの土地を取り戻すことのできる条件は何であるかを問うている。残念ながら、パレスチナ人に有利な方向に流れを変えるような要素はひとつも見当たらない。何かあればいいのにと心の底から思う。

交渉中は、欧米の大勢の人々が有益で平和的な役割を果たし、イスラエルに重圧を加えているが、現状を変えるために彼らだけを頼みの綱とするのは極めて危険だ。二民族一国家を請け負うものだからだ。.

したがって、我々が目の当たりにしているのは、パレスチナ人の指導者や欧米の政治運動、中でも重要なのは、イランのような地域の権力など、これらの偽善行為と政治利用に加えて、パレスチナ人にとって屈辱と貧困が続いている状況だけである。どの方向を向いても、彼らは正義と人間の尊厳のための闘争という、よくできたスローガンを掲げて、パレスチナ人の苦しみを助長しながら、自分たちの目的達成のためにパレスチナ人を駒として利用している。

現在、左派Iおよび極左派の人々のみがこのパレスチナの政策を求め続けているように見える。

ハリド・アブー・ザフル

残念ながら、完璧な結論はない。しかしながら、国と企業がデジタル世界でスペースを我がものとし、情報を争っている時に、それを理解するのは難しい。我々は相変わらず地上戦で立ち往生し、パレスチナ人は依然として苦しんでいる。したがって、パレスチナ人が答えるべき質問は、現在実現可能な最善の取引をし、不公平な条件を受け入れ、何か新しいものを築き始め、世界に復帰すべき時が来たのかどうかというものだ(抑圧下で生活をしているわけではなく、抵抗の活動としてロンドンやパリのスーパーマーケットからイスラエルのオレンジを買わないことを検討しているような人々が答えるのではない)。

世界規模経済のこのような世界情勢にあって、パレスチナ人は競争に勝って豊かな国と経済を築く才能を持っている。今は、現在の悪循環を壊すために、ガザ地区とヨルダン川西側地区の平和的な大勢の人々が立ち上がり、指導者たちに面と向かって声を上げる時なのかもしれない。これをするのはワシントンやロンドンの人々ではない。これが、変化を起こす使命の幸先のよいスタートとなるだろう。

  • ハリド・アブー・ザフルはメディアテック企業〈ユーラビア〉のCEOである。また、『アル=ワタン・アル=アラビ』の編集者でもある。
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