
パリに拠点を置く国際エネルギー機関(IEA)は、2017年の発足以来、OPECプラスにとって面白くない結果を予測してきた。実際、石油輸出国グループがかつて市場に均衡をもたらすことに成功した後も、悲観的な予測を発表し続けた。
発足当時には、OPECプラスの減産の効果を無効化するとされていたシェールオイルの台頭を巡って、悲観的な見通しをいくつも発表した。
昨年は、米中貿易の緊張が世界の石油需要に与える悪影響を中心に議論を展開した。
そうした悲観的なストーリーを追求している間、そしてコロナウイルスのパンデミックが石油需要に与える影響が明白になる以前、IEAは多くの重要な問題をあいまいにしてきた。例えば、2019年末までにすでに始まっていた、掘削装置の稼働数が低迷する状況なかで、米国のシェールオイル生産者が生産量を増やせるかどうかについてだ。
実際、基礎的条件の改善を顧みないで、2020年の石油市場が直面するはずの問題に警鐘を鳴らして年明けを迎えた。このパターンは、価格の上昇トレンドに始まった過去数年間にしっかりと定着したものだ。
今回のパンデミックがエネルギー市場をどのように変えるかを理解しようとする場合、ストーリーではなくデータに着目することが重要だ。
Faisal Faeq
例えば、アラビア湾に緊張がみられた間には、ほとんど供給リスクがないと考えていたのに、OPEC以外の生産国の高い生産高は熱心に取り上げた。OECD諸国の石油在庫が控えめだったにもかかわらずにだ。
IEAは、パンデミック終息後には、何年もかかるかもしれないが、需要が徐々に回復していくと予想している。
しかし、同機関の最新データによると、OECDの商業用の石油総在庫が5月に再び急増し、5か年平均を2億5,850万バレル上回った。
同月の終わりには、OECDの在庫は2019年末の水準を3億バレル以上上回った。
以上が、今回のパンデミックがエネルギー市場をどのように変えるかを理解しようとする場合に、ストーリーではなくデータに着目することが重要になる理由だ。