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マクロン大統領のレバノンにおける「過ち」

ベイルートの政治活動家らがヒズボラとフランスの旗が合わさったボードを持ち、ムスタファ・アディブは前首相のハッサン・ディアブと同じだとして、ムスタファ・アディブを首相にするというフランスとイランとの取り決めに反対を示す (Twitter)
ベイルートの政治活動家らがヒズボラとフランスの旗が合わさったボードを持ち、ムスタファ・アディブは前首相のハッサン・ディアブと同じだとして、ムスタファ・アディブを首相にするというフランスとイランとの取り決めに反対を示す (Twitter)
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02 Sep 2020 12:09:19 GMT9
ファイサル・アッバス
02 Sep 2020 12:09:19 GMT9

穏健で一貫性のある立場を取ってきた実績を主な理由に、またあらゆる不一致には話し合いの余地があり、力による解決は最後の手段としてのみ使用すべきだというその強い信念により、フランスの外交政策は常にアラブ世界全体で概ね尊重されてきた。エマニュエル・マクロン現大統領も例外ではない。

しかしながら、レバノンのことを心から心配し、この最も困難な時にレバノンを援助のために訪問するという決定を迅速に下したことについては、マクロン大統領は称賛されるべきである一方、私は、彼に与えられてきたアドバイスの一部には一般的な精神異常の定義にピッタリ当てはまるものが含まれているのではないかと恐れてもいる― それは、同じことを何度も繰り返しながら異なる結果を期待する、ということだ。

私は、大統領がレバノンを訪問した際のイランが支援するヒズボラグループに関連した発言を当然念頭に置いている。ヒズボラは「レバノンの人々の一部を代表し、選挙で議席を得ている党なのです」とマクロン大統領は米国のニュースサイトポリティコ(Politico)に語ったのだ。 (とりわけフランス人は、アドルフ・ヒトラーのナチスが「ドイツの人々の一部」であり、「選挙で議席を得ている党」だったことを覚えているはずなのだが。)

ヒズボラについて、マクロン大統領はさらに次のように語っている。「今日、ヒズボラは他の幾つかの政党との間にパートナーシップ関係にあります。他の事柄を犠牲にしてテロが蔓延してしまう状態にレバノンが陥るのを防ぎたいなら、責任についてヒズボラとその他の政党を教育しなければなりません」 本気なのでしょうか、大統領。

政党部門だけでなく武装したテロ部門も持つとあなた自身も認めている党に、教育などどうやって提案するというのでしょうか。 これは、弾を込めた銃を持ってクラスに来た素行不良の生徒に規則を守らせるよう学校の先生に依頼するのと同じことだ。

イランの核合意へのフランスの支持を含む、こうした非論理的な声明や見解は、この地域の歴史と現実について教育される必要があるのは、マクロン大統領の中東担当の顧問達のほうではないかと疑わせるものだ。 レバノンの政治家ナディム・ジェマイエルがツイッターでこう言っている。「大統領、フランスの党が武器を取り、ヨーロッパの国に軍事的に干渉したり、フランスの同盟国である国々に対して戦争を宣言することを受け入れられますか?」 ヒズボラと関係を持ち懐柔するために今は亡きラフィク・ハリリほど努力した人間はいない。

彼が得た「報酬」は、レバノン特別法廷によってヒズボラの「テロ部門」の主要人物であると名指しされた男によって暗殺されてしまうことだった。このテロ部門は、2008年に、ヒズボラの「政治部門」ができなかったベイルート奪取を、力ずくで果たしたのと同じ組織なのだ。 「フランスにレバノンの政治勢力と戦争を始めるよう求めてはいけません…それは馬鹿げた、おかしな考えだと思います」とマクロン大統領は言っている。

もちろん、彼は正しい:フランスが、あるいはどこか他の国が、すでに崩壊の瀬戸際にある国に派兵したり、その国をさらに破壊することなしには勝てない戦争を繰り広げることなど、誰も期待していない。 それよりも、通常のレバノン人が望むもの、彼らが昨年10月以来要求してきたものはむしろ、政治システム全体の見直しだ。これは、「旧来勢力との決別」を意味している。

例えば1992年以来の議会議長であるナビーフ・ビッリー;ミシェル・アウン大統領。軍閥出身の彼はヒズボラと同盟を結んでその地位を獲得したが、その際レバノン人キリスト教徒達の結束に深刻なダメージを与え、まだレバノンから逃げ出していなかった少数の人々に脅しを加えた;そして、何よりもヒズボラ自身。

マクロン大統領が多大な努力を払い、善意を持ってくれていることは疑いないが、彼の発言は多くのレバノン人やフランス外交を信頼してきた人々に、苦い思いを味あわせている。 訪問を終えるに当たっての記者会見で、大統領は自分自身を実用主義者と形容した。そう言うのならば、たとえ現在の政治家達全体を入れ換えることは非現実的であるとしても、少なくともヒズボラに武器を置いてテロ部門を解散するよう公に要求することは、彼にはできたはずだ。

しかし、ヒズボラがまだ優位にある(そして武装もしている)間は、政治家達がマクロン大統領に与える誓約をレバノン人が信用すると思うのは、素朴に過ぎるというものだ。 マクロン大統領はまた、アウン大統領が危機への自身の対策についての批判的な報道に対する措置として、ローカルチャンネルのMTVを発禁処分にするという非民主的な決定を撤回しない限り、バーブダの大統領官邸への訪問を拒否するべきだった。 マクロン大統領が与えた保証に関しては、2018年のパリ会議でレバノンに予定された寄付を差し控えることだけで十分な抑止力になると大統領は考えているようだ。

この方法の問題は、もちろん、制裁の対象が腐敗した政治家達ではなく、レバノン国民になってしまうことだ。 マクロン大統領は、政治リーダー達が共同歩調を取らない場合の制裁の可能性について話しはしたが、その内容は物足りなく、タイミングは遅すぎるものだった。もし私がマクロン大統領に助言する機会があったなら、まさに上記の点を談話の中心に据えるようにしていただろう。

現在の指導者達に対処するには他には方法がないと、大統領が理解してくれればだが。 マクロン大統領がもし、たとえばどんな形の制裁や資産凍結があり得るかを示すことによって、本気であること見せていたら、彼はまったく違った受け取られ方をしていただろう。

こうした態度なら、裕福で権力を持った人々が罰を逃れるのを嫌というほど目にしてきた平均的なレバノン人達からの信頼は高まっただろう。 決意ある毅然としたアプローチを批判する人達は、そうしたやり方では交渉に参加するよう政治リーダー達を説得はできないと主張するだろう。これに対する強力な反論は、マクロン大統領のアプローチはこれまでのところ、飴と鞭の「飴」なら十分に備えているということだ・・・「鞭」の方はひどく不足しているのだが。

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