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サウジアラビアのエネルギー相がまみえた数々の歴史的な苦難

アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子(AFP)
アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子(AFP)
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07 Sep 2020 11:09:08 GMT9
07 Sep 2020 11:09:08 GMT9

2020年9月8日で、アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子がサウジアラビアのエネルギー相に就任されてから1年を迎える。

1960年に石油鉱物資源省として設立され、2016年にエネルギー省となった同省の60年の歴史で、この1年ほど歴史的な出来事や困難にまみえた年はなかった。

エネルギー省には複雑な事案が山と積まれているものの、アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子の手さばきはプロフェッショナルかつ効率的であられた。この1年の山なす歴史的な出来事や困難の数々は、今後の石油業界ではおよそ二度と際会することもないはずだ。王子はそれらを専門的視野に立ち賢明に、また他国とのかけひきも駆使しながら克服する能力に長けておられた。そのため、困難は成果となり成功となったのだ。

9月14日に起きたアブカイク(ビカイク)とフライスの石油施設襲撃の惨状は成果へと変えてしまわれた。これは最初の成果といえる。石油施設への襲撃としては史上最大のものであるとともに、図らずも世界最大の攻撃ともなった。

王子のエネルギー相就任1週目という時期にアブカイクの世界最大の石油施設は攻撃を受けた。石油産業がこれまでに受けた最大規模の深刻かつ破壊的な攻撃だった。この結果、日量570万バレルという、サウジの石油生産のほぼ半分に当たる量の生産を一時的に停止することを余儀なくされたのだ。

アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子には、サウジアラムコのサウジ人幹部陣らと一丸となって事に当たる能力がおありだった。そのため襲撃後わずか36時間という短時間で石油輸出の回復に成功された。また、襲撃後わずか2週間で襲撃前の生産水準にまで回復させる過程も取り仕切られた。世界のエネルギー関係の専門家らも舌を巻く離れ業だった。

供給が維持されたことで市場の均衡と原油価格の持続可能性は守られた。世界経済も安定し、急激な価格変動も回避された。王子の尽力によるものだ。

アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子はまた、サウジ資本市場庁(CMA)の承認を受け、サウジアラビア証券取引所(タダーウル、Tadawul)へのサウジアラムコの新規株式公開(IPO)にも漕ぎ着けられた。

サウジアラムコはこのIPOにより、巨大石油企業に求められる活力と効率性をともなった持続可能性が確保できることとなる。こういったことは、独立した役員会による透明な財務諸表やガバナンス、評価といったものを備えた、いたってふつうの商取引をおこなう企業として立ち現れることにより到達されるものだ。

サウジアラビアの持続的な経済の多様化および成長へ向けた未来構想である「ビジョン2030」実現へ向けた重要な一里塚となるのが、このサウジアラムコのIPOだ。

また同社は事業の持続可能性についても向上させている。これは、技術やイノベーションを活用し原油や天然ガスの生産効率を高めるといったこと、また信頼性や持続可能性の水準を上げるといったことによる。

アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子はエネルギー相就任後4か月の間にも重要な事案を差配されている。環境問題や技術上の理由により5年以上も宙に浮いていたクウェートとの共同中立地帯での原油生産の再開がそれだ。

本年に入って、サウジ東部地域にある巨大なジャーフーラ・ガス田の開発が発表された。同ガス田の確認埋蔵量は200兆立方フィートと、すでにある300兆に加え、サウジ国内の総ガス埋蔵量をおよそ500兆立方フィートにまで引き上げることになる。

これによりサウジアラビアは世界の天然ガス生産の先頭を走ることとなる。収入源の強化、多様化に向け段階的に戦略を講じていくことにもつながる。持続可能な発展の屋台骨のひとつとして、天然ガスの占める役割はきわめて重要だ。

本年のアブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子の業績は、エネルギー資源としてひとり炭化水素にのみ特化するのではなく、エネルギー全般また再生可能エネルギーにまで目配りされたものだ。サウジ-ヨルダン間の電力相互連結計画を実行に移されたかと思えば、すぐに政府主導の計画未来都市「NEOM」との間でエネルギー協力の面で合意を交わされる、といったぐあいだ。

サウジの電力相互連結計画は、ビジョン2030と足並みをそろえたものだ。すなわち、サウジアラビアという国の立地を戦略的に利用し、電力網の連結および相互連絡の地域ハブとなることを目指す。サウジの配電システムは中東最大となるものだ。

アブドゥルアズィーズ・ビン・サルマーン王子はまた、OPECおよびOPECプラスに対しても尽きせぬ努力を傾けられ、一驚させられる。王子の尽力によりOPECプラスは年次合意に4度続けていたったが、石油産業の歴史においてもこれほどの至難の業もあるまいと思われる。

王子がOPEC加盟国・非加盟国とを問わず産油国を導き、ほぼ日量1,000万バレルもの史上最大の減産へといたったことはさらに重要だ。新型コロナウイルスの感染拡大による石油需要の低迷という最大の衝撃を緩和するため、減産規模はしだいに縮小しつつ2年にわたり継続するといった持続可能性も加味したものだ。史上稀な王子のこの成功劇は石油生産の通史において減産への最も深甚なる同意を勝ち得たものだ。史上初めて主要産油国も加わったおよそ歴史的というよりない協力のたまものだ。この合意は石油市場の均衡における持続可能性への到達において、短期ではなく中期の視野に立って達成されたことが肝だ。それというのも、サウジの目標は引き続き、市場バランスを通じた世界のエネルギー安全保障の確保、ひいては価格の持続可能性、さらには継続的な供給の保証であるからだ。

この合意によって達成されたコンプライアンスもおよそかつてないほどの水準だ。合同閣僚監視委員会の会合で王子が毎月毎月力説されたたまものである、緻密な監視がそれを実現している。

  • ファイサル・ファーイク氏は、エネルギーおよび原油のマーケティングアドバイザー。OPECおよびサウジアラムコでも勤務経験がある。Twitter:@faisalfaeq

 

 

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