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パレスチナ人の子ども達への虐待の記録

ヨルダン川西岸の都市ヘブロンでの衝突の中、パレスチナ人の少年を拘束するイスラエル兵士(Reuters/File)
ヨルダン川西岸の都市ヘブロンでの衝突の中、パレスチナ人の少年を拘束するイスラエル兵士(Reuters/File)
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03 Nov 2020 06:11:36 GMT9
03 Nov 2020 06:11:36 GMT9

子ども達が軍事裁判にかけられ、体系的に拷問を受けたり告訴されたりすべきだと考える人はいるだろうか?コロナウイルスの感染が拡大する中、子ども達をぎゅうぎゅうの刑務所に押し込んで家族を面会遮断にすべきだと信じている人はいるだろうか?そう、いないに違いない。だが、中東唯一の民主主義の指標として輝く国であるはずだったイスラエルは、まさにここに書かれていること、そしてそれ以上の仕打ちをパレスチナの子ども達に行っているのだ。

このようなことが多く起こっていることはこれまでも国連と人権団体が報告してきたが、今回、より注目を集めることとなったのは、セーブ・ザ・チルドレン(SCF)が先週後悔した「イスラエル軍拘留システムのパレスチナの子ども達への影響」と題された報告書がきっかけだ。イスラエル当局を激しく告発するこの文書は、この問題についての膨大な量の、しかし非常に質の高い批判であるリサーチの数々に加えられる価値がある。

SCFはヨルダン川西岸地区の470人以上の子どもを対象に調査を行った。調査当時の年齢は12歳~21歳で、全員が10歳~17歳の時に逮捕または拘留された経験があった。

「大多数の子ども達が、逮捕や拘留の際に悲惨な状況や暴力に耐えなくてはならなかったと語った。ほとんどの場合、それは夜に行われた。高圧的な尋問や、拘留中の身体的、精神的な虐待など。また、教育も含め、生きるのに必要な権利も認められなかった。これらの例はすべて、国際法で定められた人権の侵害とみなされる」と、報告書には書かれている。

報告書で「高圧的な尋問」という言葉が使われているのは、ある意味驚くべき譲歩だ。実際には、拷問であることは明らかだ。このような告発はSCFが初めてではないが、なぜアメリカやヨーロッパ諸国の聖職者や他の様々な立場の人々は何も言わずにいるのか、パレスチナの人々は理解できずにいる。

報告書によれば、イスラエルによる占領は「日々の安全から心理社会的な健康の発達、精神状態に至るまで、あらゆる面で子ども達の生活に影響を及ぼしている」。入植地や軍の検問所を通って通学しなければいけないことすらトラウマになり得る。この20年間で1万人以上のパレスチナ人の子ども達がイスラエル軍による拘留を経験している。

その影響は大きい。子ども達は「不安感や鬱状態、行動の変化、摂食障害や睡眠障害、胸の痛みや疲労感、無感覚などの身体症状」に苦しんでいるとSCFは報告する。

国際法によれば、子どもの拘留は本当の最終手段であるべきだ。だが、イスラエル占領下では常に、従属民の制御だけではなく、支配し恐怖を植え付ける手段として体系的に拘留が行われていることが見てとれる。

イスラエル軍がヨルダン川西岸の270万人の人口をコントロールするために多数の人員を配置する必要がない理由の一つとして、軍事裁判と拘留のプロセスが、子どもの頃から占領下の人々の意志や精神力を奪い去ってしまうことがある。

子どもの逮捕は頻繁に起こっている。拘留されるパレスチナ人の子どもの半数ほどは夜に拘束されている。目を覚ますと寝室に完全武装したイスラエル軍の兵がいたという状況も珍しくない。それだけでも十分に恐ろしいのに、たいていはそのまま、たった一人で軍のジープの後ろに押し込まれ、家から連れ出されるのだ。通常、逮捕された子どもは入植地に連れていかれ、尋問を待つことになる。

パレスチナ人の子どもにとって拘留は当たり前のことになっている。子どもから大人になる過程で通るつらく痛みを伴う経験だ。

クリス・ドイル

子ども達の多くは、尋問の前にはまったく眠らせてもらえなかったと語った。89%は拘束時に目隠しをされるかフードをかぶせられたという。ほぼ全員が全裸での身体検査をされたと話している。

イッサという名前の少年は検問所で銃で撃たれ、病院に連れていかれる前に尋問を受けた。尋問中、目の前の机の上には銃が置かれた。尋問の際に弁護士が同席していたと語った子どもはいなかった。多くの場合は、子ども達が理解できないヘブライ語で書かれた供述書にサインをさせられた。

逮捕は大半が投石を理由としていた。特にイスラエル入植地や検問所の近くでよく起こるが、現在のヨルダン川西岸では入植地や検問所を避けることは難しい。摩擦が起こりやすい場所だ。Military Court Watchによれば、2019年に拘留されたパレスチナ人の子どもたちは平均で入植地から900m以内に住んでいた。

イスラエル入植者の子どもが石を投げた場合は、イスラエルの民間人のための法的手続きによって裁かれる。もちろん、法に期待される適切な保護措置もすべて適応される。ひとつの領地に2種類の人間、2つの法律制度が存在しているのだ。

多くのケースでは、投石が行われるたびに、その地域のイスラエル軍司令官がほぼ手当たり次第にパレスチナ人の子どもを選び拘留する。軍の抑止力を維持するためにそうする必要があり、さもなければ、毎日、暴動が起こるだろうという。私はイスラエル軍の裁判を数えきれないほど傍聴したが、告訴された子どもが石を投げたというはっきりした証拠が提示されるのは一度も見たことがない。

イスラエルは、体系的な軍事裁判により子どもを告訴する世界唯一の国だが、どうやらこのやり方は多大な成功をおさめているようだ。ヨルダン川西岸の2つの軍事裁判所の1つ、オフェル軍事裁判所は独自に出された結果によれば99.74%の有罪率を誇る。

おそらく、100%に満たなかったのはちょっとした統計上の誤差だろう。シリアや北朝鮮の軍事政権も喜ぶだろう数字だ。パレスチナ人の子ども達はみんな、有罪を認めれば刑期が短くなること、そして無罪を主張しても意味がないことを知っている。

このような裁判を初めて傍聴した時は、目を疑った。14歳の子どもが足かせをつけられてイスラエル軍基地の中心にある裁判所に引きずられてくるのだ。同席していたイギリスの古参政治家はイスラエル軍の裁判を「処理センター」と呼んだ。正義や法のルールが皆無なのは明白だった。

拘留体験は子ども達にすさまじいショックを与える。60%の子ども達はイスラエルの刑務所に入れられる。これは第4条約の76条に違反する。過密状態の監房の状態はひどいものだが、子ども達は独房に入れられることもある。拘留時には15歳だったアミーナは、「あそこにいると自分が人間だという気がしない。動物みたいに扱われていた」と話した。

コロナウイルスの感染が拡大する中でも、子どもを含むパレスチナ人の受刑者たちは過密状態の刑務所に拘留されていた。

イスラエルの刑務所ではコロナウイルスの感染拡大が起こっていることすら知らされなかったと子ども達は報告している。それに加えて、面会が禁止となった。二週間ごとに電話をかける権利は一応与えられていたが、実質は月に一度ほどだった。7月、子どもの一人に初めてコロナウイルスの感染が確認された。9月にはもう一人14歳の受刑者が感染している。

パレスチナ人の子どもにとって拘留は当たり前のことになっている。子どもから大人になる過程で通るつらく痛みを伴う経験だ。そしてまた、世界もこの事実を当たり前として受け止めるようになっている。イスラエルとパキスタンの紛争はいまだに終わりが見えない。だが、最低限、求めるべきことは明らかだ。私たちは子どもの虐待に道義的に抗議しなくてはならない。

  • クリス・ドイルはロンドンのCouncil for Arab-British Understandingの局長。Twitter: @Doylech
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