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金融の「恐怖指数」、不安定な米国で大きく変動

副大統領候補のカマラ・ハリスを伴い、記者団の前に短時間姿をあらわし、2020年の米国大統領選挙の結果について声明を発表する民主党の米国大統領候補、ジョー・バイデン。2020年11月5日、デラウェア州ウィルミントン。 (REUTERS/Kevin Lamarque)
副大統領候補のカマラ・ハリスを伴い、記者団の前に短時間姿をあらわし、2020年の米国大統領選挙の結果について声明を発表する民主党の米国大統領候補、ジョー・バイデン。2020年11月5日、デラウェア州ウィルミントン。 (REUTERS/Kevin Lamarque)
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06 Nov 2020 09:11:57 GMT9
06 Nov 2020 09:11:57 GMT9

多くの金融専門家が、2020年は株式市場が現実世界とのつながりを失った1年だったと頻繁にコメントしている。そして、その事実を証明するかのように、世界の株式指数は概して、最近の米国の歴史の中で最も混沌とした、1日たりとも安心して落ち着かないなかでも、世界最大の経済および金融市場の動向にポジティブに反応している。

市場は通常不確実性を嫌う。しかし、2020年の米国大統領選挙は未だ結果が定まらず、複数の可能性を残す、予断を許さない状況にありながら、1つの選択を決め、その選択へと方向転換をし始めている。最も広く注目される市場のバロメーター、S&P 500指数は、全てを斟酌し、織り込みながら1日に2.2%上昇。今年の最高値からそれほど遠くない位置にある。

ホワイトハウスの記者会見で更に混乱の度を増しながら、大統領選挙の投票所、開票所の大荒れの状況は、当初から予想されていた状況だからか、投資家にとっては心強いパフォーマンスに映る。メインストリートが大波に揉まれる中、ウォールストリートは静かな航海を続ける。

S&Pの落ち着いた動きよりも、さらに驚くべきことは、金融市場のボラティリティを表す、米国株式市場の「恐怖指数」であるVix Indexの動きである。不確実な結果に対する不安を反映して、選挙に向けて記録的なレベルに上昇したが、一端その不確実性が確認されると、Vix指数は逆に下落している。

この明らかな矛盾をどのように説明したらいいのであろうか?明らかな理由の1つは、ほとんどの世論調査機関の予測(ジョー・バイデンの大勝利と議会を巻き込む「青い波」)の当てが外れたことで、市場が安心し始めている可能性がある。

ホワイトハウスの主となったバイデンが、下院と上院をも支配していれば、法人税制度、規制構造、ヘルスケアなど、ビジネス界にとっては優しくない、しかも高価な一連の抜本的な改革を推し進めるに違い無いと思われた。

特に、選挙中、一般にも「戦場」と目されてきたテキサスやペンシルベニアなどの州に集中している米国のエネルギー産業部門は、民主党政権が、業界にとって最も重要なシェール産業に対して、一方的に干渉できないだろうという安堵に、一息つくことができた。

バイデンがホワイトハウスの新しい主人になったとしても、上院をコントロールする権利までは獲得できないと予測される。ビジネスや財政に影響を与える可能性のある国内法の成立には上院での承認が必要とされる。

フランク・ケーン

一方、バイデンは再生可能エネルギー部門への2兆ドルの投資を公約としてきた。おかげで、伝統的な石油会社の株が急落し、株式投資上、大きな焦点となっていた。そうした公約も、予見可能な将来での実現は困難になったと見られる。

バイデンがホワイトハウスの新しい主人になったとしても、彼は上院をコントロールする権利までは獲得出来ないようである。ビジネスと財政に影響を与える可能性のある重要な国内法の成立には、上院の承認が必要とされる。

しかし、バイデンが新大統領に選出されれば、現政権が提案しているよりも、はるかに大きな財政刺激策への扉が開かれるであろう。

金融市場と債券市場への数兆ドルの注入が、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの大打撃に沈む米国経済の株式市場の回復を支えている状況にある現在、さらなる刺激策に共和党と民主党の両党が同意しなかったことが、先月の株式市場の下落につながった。こうしたことから、バイデン大統領の積極財政政策は、株式指数にとっては、大きな後押しになるだろう。

現在の困難な政治情勢では、そうした市場の反応も今は起こらず、バイデン大統領が就任するか、トランプ大統領が2期目を開始する1月まで見送りになる可能性もある。

今後数週間で予想される振幅の大きい政治の動き、あるいはそれに影響される経済的背景には非常に多くの変数があるため、一般化して動くのは危険であるが、ウォール街は少なくとも、バイデン大統領を共和党が支配する上院が牽制するという選挙結果を織り込んだ動きを初めているように思われる。この構図であれば、バイデンの政策リストで最も過激で高価な項目の実現は抑制される。

今後起こるイベントで、そうした構図になるかどうかが明確になるが、現在の米国のような不安定な状況では、何も確実なことは無い。おそらく、現在最も良い投資選択は、さらなるボラティリティを見越してVixインデックスを購入することであろう。

  • フランク・ケインは、ドバイを拠点とする著名な賞の受賞歴を持つビジネスジャーナリストである。Twitter: @frankkanedubai
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