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イスラエルとパレスチナ組織の戦闘でガザはまたも悪夢にさいなまれる

2022年8月6日、イスラエル軍がガザの住宅を空爆し、煙が舞い上がる。(AP写真/アデル・ハナ)
2022年8月6日、イスラエル軍がガザの住宅を空爆し、煙が舞い上がる。(AP写真/アデル・ハナ)
2022年8月5日、イスラエル軍がガザ市内のビルを空爆し、煙が舞い上がる。(AP写真/ハテム・ムーサ)
2022年8月5日、イスラエル軍がガザ市内のビルを空爆し、煙が舞い上がる。(AP写真/ハテム・ムーサ)
2022年8月6日、ガザ地区南部ハンユニスで、イスラエル軍の空爆に反応する子供たち。(AFP)
2022年8月6日、ガザ地区南部ハンユニスで、イスラエル軍の空爆に反応する子供たち。(AFP)
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08 Aug 2022 11:08:41 GMT9
08 Aug 2022 11:08:41 GMT9
  • パレスチナのイスラム聖戦を狙ったイスラエル軍の攻撃によって人道状況が悪化し、一般市民の死傷者が増加した
  • ヨルダン川西岸地区でのPIJ幹部の逮捕に対する報復として、ガザの過激派が攻撃を計画している、とイスラエルは主張した

アラブニュース

ドバイ:ヨルダン川西岸地区にある、一触即発状態のパレスチナの町で8月1日にイスラエルの通常の治安対策として開始された事態は、たちまちのうちに全面紛争の特徴を帯びるようになった。7日夜の時点で、パレスチナ側の死者は、子供15人を含め43人に上っている。エジプトが仲介した停戦合意が、戦禍に苦しむガザ地区の住民にかすかな希望の光をもたらしている。

「夜明け作戦」と銘打たれたイスラエルの軍事作戦が標的にしたのは、シリアの首都ダマスカスに本部を置きイランの支援を受けるパレスチナのイスラム聖戦(PIJ)である。だが、停戦合意が破綻した場合には、一般市民の被害を最小限に抑え、ガザ地区に限定する「迅速できれいな戦争」という概念をイスラエルが逸脱する恐れは残ったままだ。

最近、テヘランを訪れイランの指導者と会談したジアード・アル・ナハラPIJ書記長は、テルアビブを含むイスラエルのすべての街がロケット砲攻撃を受ける可能性があると同地で警告を発し、パレスチナの他の勢力に協力を促した。何日にもわたり、イスラエルメディアは、同国南部と中部の上空がロケット砲とミサイル防衛システム「アイアンドーム」の迎撃ミサイルによって赤々と輝く映像を流していた。

予想されていたことだが、今回の緊張激化は、パレスチナ側に200人以上の死者が出、イスラエル側の死者も10人以上に上った2021年5月発生の11日間の衝突との類似性が指摘されている。大きな違いは、今回の事態では、ガザを支配するパレスチナ組織ハマスが紛争に参加しなかったことだ。ただし、停戦が維持されず、一般市民の犠牲者が増え続けた場合は、その可能性は排除できない。

イスラエルがパレスチナの過激派組織に攻撃を開始すると間違いなく、ガザ地区で軍事作戦の照準を当てられた地区の一般住民が最大の犠牲を払うことになる。建物の半壊状況や、財産を破損され貧困に窮している一般市民の姿を映し出す映像は、PIJによる「現下の脅威に対する先制対テロ作戦」と称するイスラエルの公式見解とは著しく矛盾する。

6日、イスラエル軍の空爆でガザ市内のビルから炎が噴き出し、救急隊員が負傷したパレスチナ人を避難させていた。ガザ地区の保健省は、死者には「イスラエル占領の標的にされた5歳の少女」が含まれると明らかにした。「ここはウクライナではない!昨日の #ガザ地区 の映像だ!」と、パレスチナ人ジャシカが、#GazaUnderAttack というハッシュタグを付けた破壊の惨状を示す写真4枚を添えてツイートしている。

アブドラ・アル・アライシ氏は、ガザ地区のパレスチナ人全体の窮状を要約して、次のようにAFP通信に語っている。「私たちの国は荒廃している。あまりに多くの戦争を経験した。私たちの世代は未来を失った」。ここで言及されているのは、200万人に上るガザ地区のパレスチナ人住民に莫大な犠牲を強いてきた、2007年来のイスラエルとハマスの間の多くの戦争や戦闘のことだ。

これまでガザの緊張激化を終息させるために何度も橋渡し役を務めてきたエジプトが、今回も介入し、政府当局者からなる代表団を仲介のためにイスラエルに派遣したと伝えられている。PIJ指導部は交渉に乗り気でなかったかもしれないが、選択肢は限られていた。

6日、PIJは、ガザ南部のラファ難民キャンプ内の住宅へのイスラエル軍の攻撃で、序列第2位の上級司令官カレド・マンスール氏を失った。その前日には、ガザ市西部のビルへの空爆で、上級幹部タイシール・アル・ジャバリ氏が死亡したことを確認していた。

2019年には、アル・ジャバリ氏の前任者であるバハ・アブ・アルアタ氏がガザでイスラエル軍に殺害された事件が引き金になって5日間の紛争が起こり、PIJ戦闘員多数を含む34人のパレスチナ人が死亡し、負傷者は111人に上った。今回と同じように、当時もイスラエルは、PIJが攻撃を企てており事態は急迫している、と主張していた。

今回、イスラエルは、8月1日にジェニンで治安対策としてPIJのヨルダン川西岸地区政治部門幹部バセム・アル・サーディ氏を逮捕したことへの報復として、ガザのPIJ過激派がイスラエル南部への攻撃を計画していると発表していた。アル・サーディ氏は、2013年2月に2年の刑期を終えてイスラエルの刑務所から釈放されて以来、ジェニンで暮らしていた。

3月下旬にパレスチナ人によるイスラエル攻撃で死者が出る事態が次々と起こり、襲撃者のうち2人がジェニン出身であったため、この町は何度もイスラエルによるヨルダン川西岸地区での逮捕作戦の標的になっていた。

ライヒマン大学講師で中東アナリストのメイヤー・ジャベダンファー氏はアラブニュースに対して、「イスラエルは、PIJが同国に多数の攻撃を加えようとしているとの情報報告に基づき、この問題で先手を打ち、PIJに大きな痛手を与えようと行動したようだ」と述べた。

「この見解に基づくなら、イスラエルが今回の行動は避けがたかった。敵が攻撃を仕掛けようとしていることを把握すれば、先手を取り、形勢をすっかり逆転させるだろう」

だが、このイスラエルの理論的根拠には、矢面に立たされるパレスチナ市民に留まらず、パレスチナ被占領地に関する国連特別報告者など、先制攻撃ドクトリンの批判者も納得していない。

6日、国連特別報告者のフランチェスカ・アルバニーズ氏は、「指導者の逮捕に対するイスラム聖戦の報復の可能性を『抑止』すると主張する、イスラエルのガザ空爆を非難する。国際法は自衛のための武力行使しか認めておらず、夜明け作戦が侵略行為であるのは明らかだ。違法。不道徳。無責任」とツイートした。

外交的な跳ね返りに加え、軍歴がなく安全保障の重要ポストも経験していない政治家であるヤイール・ラピード氏が首班のイスラエル政府は、遅かれ早かれガザの人道状況の悪化に取り組む必要があっただろう。

2021年5月の戦争以来、ガザの復興はほとんど実現していない。住民は貧困状態に陥り、失業率は50パーセント前後に高止まりしている。イスラエルはガザ地区との間にある検問所を閉鎖し、予定されていた燃料の搬入をイスラエルが禁じたため、6日、同地区唯一の発電所が停止したと伝えられている。

ガザ市のヤヒア・アル・サラジ市長は7日、電力不足のために自治体の業務に影響が出ていると述べた。「その結果として、(7、8月の消費ピーク時に)家庭用水の供給量は最低水準に落ち込み、プラントがフル稼働しないために下水が未処理で海に流出するだろう」

驚くことではないが、テヘランのPIJの保護者たちは、宣伝工作によるクーデターの可能性を認識している。ファルス通信は、「ガザ住民の抵抗はこの児童殺害(シオニスト)体制の衰退を加速させるだろう」との、イブラヒム・ライシ大統領の発言を伝えている。

これとは別に、イラン国営テレビは6日、「最近犯した犯罪のために、イスラエルは新たに大きな代償を払うことになるだろう」との、イスラム革命防衛隊トップであるフセイン・サラミ将軍の発言を報じた。

イランのタスニム通信は以前にサラミ氏の次の発言を伝えている。「レバノンでは、神の予定が実現される瞬間にシオニストにとっての地獄を創造するために、何万発、いや10万発以上のミサイルの発射準備が整っている」

イスラエルがPIJに断固たる処置をとる決断をした第2の理由はPIJとイランの関係だろう、とジャベダンファー氏は考えている。「イスラエルの攻撃がPIJトップのテヘラン滞在中に行われた事実からは、今回の作戦におけるイラン・ファクターを見逃すことはできない」と、同氏はアラブニュースに述べている。

「PIJはイランの代理人であり、イランの代理人としての位置付けはハマスより遥かに高く、イランへの依存度もハマスより高い。イランがガザのイラン代理人を通じてゲームのルールを決定する事態を、イスラエルは望んでいない。ガザでもシリアでも、イスラエルは自国の安全を脅かすためのイランの選択肢を無力化しようとしているのだと思う」

イスラエルのラピード首相は、「イスラエルはガザでの紛争拡大に関心はないが、その事態に尻込みすることもない」と確言していた。紛争拡大は間違いなく、一般市民の犠牲者数の増加に留まらず、おそらくアブラハム合意に調印したアラブ諸国からも含め、イスラエルに対する政治的非難を高めるだろう。

イスラエルにとって最善のシナリオは、PIJの軍事部門が粉砕され、外交的な嵐があっという間に過ぎ去り、ガザの一般市民の死者数が低い水準に留まるというものだったはずだ。だが、イスラエル・パレスチナ紛争が中東の新たな地政学的状況に暗い影を投げかけ続けることを考えると、イスラエルは戦闘には勝利しても戦争には敗北する可能性が十分にある。

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