
先週、イスタンブールで2つの重要なイベントが開かれた。木曜の第6回「イスタンブール仲裁会議」では、政治家、外交官、国際組織、および非政府組織が一堂に会し、仲裁の実践および新たな技術と和平への努力との関係性について議論した。開催の挨拶を行ったのは、トルコのメブリュト・チャブシオール外相と国連のアントニオ・グテーレス事務総長だった。
翌日にはイスラム協力機構(OIC)が、3回目となる「仲裁に関する加盟国会議」を開催した。
これらのタイムリーな会議では、現在の紛争の60%がOIC地域で起きている世界での、仲裁の重要性が掘り下げて話し合われた。シリアと、そして特にそのイラクでの展開が、どちらの会議でも最重要議題だった。国家、機関、仲裁者が新しい「グローカルな」時代精神を背景に紛争解決と安定化のために取ることのできる行動が、議論の焦点となった。
前者の会議の傍らでチャブシオール外相はイラクの出席者に対し、最近数週間にわたり反政府デモによって揺るがされてきたある国に、平和と安定が早急にやってくることを願うと表明した。一方でグテーレス氏は、「戦争の無意味な繰り返しは終わらせるべきだ」と述べた。
そのわずか1日前、シリア憲法委員会が国連に促されて初めてジュネーブで開催され、政権、野党、市民社会から代表者が出席した。チャブシオール氏はこの初開催の会議を「画期的な出来事であり、進展のための基礎であり、それ自体が仲裁の明らかな成功」と述べた。
今週続けざまに行われたイベントの中には、火曜日にやはりジュネーブで開かれたゲイル・ペダーセン国連シリア特命全権大使とトルコ、イラン、ロシアの外相たちとの会合もあった。アスタナの和平プロセスを先導する外相たちが参加したこれらの協議は、戦争で引き裂かれたこの国の政治的な未来を策定することを目指す憲法委員会の初めての会合前に行われた最後の話し合いだった。
シリアおよびそれ以外のことに対する外交および仲裁の取り組みが速度を増す中で、速報が入ってきた。イスラム国の指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーが、シリア北西部で米軍による急襲によって殺害されたというニュースである。
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はアル=バグダーディーの死について、テロに対する共闘の転換点であると述べた。トルコはこの展開を歓迎し、これまでと同様に反テロの取り組みを支援し続けるだろうと発言した。
トルコが安全地帯の問題でロシアと協力してきた一方、現時点でEUができる最善のことは、国連の取り組みに関与し、1年前にドイツ、フランス、ロシア、トルコの指導者たちが参加したような首脳会議をもう一度実現させるために努力することである。
シネム・センギス
アル=バグダーディーの殺害の余波でこれからもニュースはもちきりになるだろうが、その真っただ中で別の興味深い進展があった。ドイツのアンネグレート・クランプ=カレンバウアー国防相が、シリア北東部に警戒区域を設けて国際的な管理下に置くことを提案したのだ。それは、10月24~25日にブリュッセルで開かれたNATO国防相会議で話し合われた、注目度の高い論点の1つだった。
チャブシオール氏はこのプランを「非現実的」と退けて拒否し、シリアにおけるアンカラの最近の軍事行動に対するドイツの批判をはねつけた。興味深いことに、EUはそれらの軍事行動中、作り出される可能性のあるどんな「安全地帯」に対しても資金提供を行わないだろうと明言していた。
NATO会議の後、チャブシオール氏はドイツ国防相との共同記者会見において、トルコのドイツに対する信頼はシリア北東部への攻撃を批判する「過剰反応」により「揺らいだ」と述べた。ドイツはイタリア、フランス、スペイン、英国と共に、トルコへの武器の販売と輸出を停止する計画を発表した多くのEU加盟国の1つだった。
ドイツの報道機関ドイツ通信社の委託によるYouGovの調査によれば、回答したドイツ人の58%がシリアでの軍事攻撃に関してトルコがNATOから除名されることを望んだ。経済制裁や輸出禁止措置の導入をより強く支持する声すらあった。この調査は、10月25~28日の間に2,000人以上のドイツ人に面談して実施された。
トルコとEUの間には根本的な緊張関係が存在し、シリア危機によってそれが表面化したのだ。トルコもEUも相互の貿易や安全保障、移民協定から恩恵を受けているのだが、またカスピ海のエネルギー資源がトルコを重要なEU同盟国にしているにも関わらず、最近の緊張状態が別の状況を作り出し、両者の関係性にネガティブな影響を与えてきた。
ドイツの提案に関する問題は非現実的なことだけではなく、それがおかしな話でもあることだ。シリア紛争が始まって以来、トルコは安全地帯を作ることを最低でも3回提案し、国際コミュニティに対し協力して事に当たることを呼びかけてきた。しかし欧州諸国は、それらの呼びかけに耳を貸さないことを選んだのだ。
欧州が現在しようとしているのは、すでに駅を出てしまった電車に乗るようなことである。トルコが安全地帯の問題でロシアと協力してきた一方、現時点でEUができる最善のことは、国連の取り組みに関与し、1年前にドイツ、フランス、ロシア、トルコの指導者たちが参加したような首脳会議をもう一度実現させるために努力することである。
シネム・センギスはトルコと中東の関係性を専門とするトルコの政治アナリストである。 Twitter: @SinemCngz