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誰がホワイトハウスの住人になろうと、石油市場は安定を求めている

2020年11月7日、米大統領選の当選宣言を受け、デラウェア州ウィルミントンで演説するジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス副大統領。
2020年11月7日、米大統領選の当選宣言を受け、デラウェア州ウィルミントンで演説するジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス副大統領。
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09 Nov 2020 12:11:54 GMT9
09 Nov 2020 12:11:54 GMT9

原油市場はジョー・バイデン大統領の就任に何を期待すべきか?この問題は表面上に見えるよりもずっと複雑だが、それと同時にはるかに単純なものでもある。

選挙運動のレトリック(そのほとんどが敗者側陣営からのものだったのだが)によれば、バイデン氏は石油産業に反対の立場をとる候補だった。同氏は米国内におけるフラッキングを禁止し、すべての発電所を風力または太陽エネルギーの使用を強制し、経済活動に不利な環境計画規制の再導入を提唱していた。

それよりもはるかに深刻なのは、新たなロックダウン規制が原油需要に対して3月以降で最も深刻な影響を与えているこの時期にトランプ政権がイランとベネズエラからの原油輸出に対して課した制裁を同氏が直ちに解除し、両国からの原油がグローバル市場に一気に流れ込んでくることだ。

中東の産油国は、米国の原油生産事業者がこの過去 10 年間にシェール増産で得てきた市場「優位」からの更なる後退を暗に意味する最初のシナリオにはある程度の安心感を感じられることだろう。

しかし、第二のシナリオを考えると喜んではいられないだろう。エネルギーコンサルタントのクプラー・アンド・ガルフ・インテリジェンスのデータによると、イランとベネズエラの10月の原油輸出量はわずか60.9万バレルだったのに対し、制裁開始前は400万バレルだった。それだけの量の石油が短期間で市場に戻ると、また価格が暴落する可能性がある。

ベネズエラの原油はイランほどには心配しなくてもよい。バイデン政権下の米国がニコラス・マドゥロ政権に対して前政権よりも友好的になることはなく、人道支援の緩和はあるかもしれないが、カラカスに対する制裁は厳しいまま継続となる見通しだ。

イランの場合はもっと複雑だ。バイデン氏は自身が副大統領時代に交渉した核開発に関する協定に戻りたいと述べており、制裁が緩和されれば原油輸出の再開が許可される可能性がある。

誰がホワイトハウスの住人になろうとも、グローバルな石油政策はOPECプラスの政策立案専門家、大手の独立系石油会社の最高経営責任者、そして避けられない市場の力に任せるのが最善であろう。

フランク・ケイン

誰も一夜にしてこれが実現するとは思っておらず、バイデン氏がこのような取引を成功させるためには、地域の産油国の支持を得なければならないだろう。しかし、バイデン氏の大統領任期中に大量のイラン産原油が世界の市場に戻ってくるという中期的な見通しはある。

米国のエネルギーに関して、バイデン氏の立場は「フラックングの禁止」という単純さでは表せないはるかに複雑なニュアンスがある。実際、民主党内でより過激な一派が呼びかけたシェールオイル生産の全面禁止令の制定に反対の立場を同氏はとったが、連邦政府所有の国有地における探査と開発をより難しいものとしていくだろう。

同氏はまた、石油やガス油田で古くから行われている「フレアリング」の慣習を禁止する可能性が高い。このフレアリングはほとんどのエネルギー専門家が環境面・経済面の双方で無駄であると同意している。例えば、サウジアラビアでは何年も前にフレアリングは禁止になっている。

バイデン氏は気候変動に関するパリ協定に再参加し、2050年までに温室効果ガスの正味排出量をゼロにするという目標に米国としてコミットすると述べている。

同氏は、米国の再生可能エネルギー分野に2兆ドルを投入することを公約としている。もし新大統領が上院を掌握できなければ、太陽光発電や風力発電への大規模な投資を行う可能性はさらに低くなるだろう。米国の大規模石油は、少なくともしばらくの間、再び息を吹き返すことができるだろう。

バイデン陣営優勢の中、ペンシルバニア州の投票結果が出た直後、米国の主要石油ロビー団体である米国石油協会は一時も無駄にすることなく新大統領チームを祝福し、「党派を超えた解決策」への協力を約束した。

選挙が始まったとき、バイデン氏が大統領になると実は原油価格の将来トレンドはより一層強気相場になるとソーシャルメディア上で一部のトレーダーが見通しを示唆していた。その主な理由はトランプ任期中の数年間のようなボラティリティがなくなるだろうからだ。

確かに、ツイッターでエネルギー政策を行うことは、おそらく安定性に寄与しなかっただろう。誰がホワイトハウスの住人になろうとも、グローバルな石油政策はOPECプラスの政策立案専門家、大手の独立系石油会社の最高経営責任者、そして避けられない市場の力に任せるのが最善であろう。

フランク・ケインはドバイを拠点とする著名な賞の受賞歴を持つビジネスジャーナリスト。Twitter: @frankkanedubai

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