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マフサ・アミニさんの死はイランの少数派である世俗的クルド人の疎外感を深める

マフサ・アミニさんの死によって、ジェンダー平等の擁護者と権威主義的神政体制との間の落差が浮き彫りになった。(AFP)
マフサ・アミニさんの死によって、ジェンダー平等の擁護者と権威主義的神政体制との間の落差が浮き彫りになった。(AFP)
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27 Sep 2022 01:09:58 GMT9
27 Sep 2022 01:09:58 GMT9

ロバート・エドワーズ

ロンドン:イランの悪名高い道徳警察に拘束されたマフサ・アミニさんが死亡した事件以降、アミニさんの地元クルディスタン州で始まったデモが国内各地の都市で荒れ狂っている。

クルド人女性のアミニさん(22)は、テヘランでガシュテ・エルシャド(ガイダンス・パトロール)に逮捕された3日後の9月16日に死亡した。この組織は、ヒジャブを含む女性の服装についての厳格な規則を強制する体制の風紀取締班である。

彼女の死は、イランにおける女性の抑圧と周縁化を浮き彫りにした。また、国内の非ペルシャ系少数民族、特に相当数の少数民族であり西部に集中するクルド人に対する不当な扱いにも光を当てた。

それによって、クルド人が人口の多数を占める中東の他の地域における対照的な女性の扱いが強調されることとなった。これらの地域では、市民生活と軍事の両方で女性が活躍しているのだ。

9月24日、イラクの半自治クルディスタン地域の首都エルビルにある国連施設の外で、イランの女性への連帯を示すデモが行われた。参加者の多くは、寛容の文化で知られるこの都市に自主亡命の形で住んでいるクルド系イラン人だった。

クルド系反体制諸グループは代替的な社会のビジョンのために一貫して闘い続けている。(AFP)

デモ隊は、アミニさんの顔を載せたプラカードを掲げ、「女性、命、自由」「独裁者(最高指導者アリー・ハメネイ師のこと)に死を」と唱えた。

デモに参加していた、イラン北西部のクルド人の町サルダシュト出身のクルド系イラン人のナマム・イスマイリさんはロイターに対し、「彼らは、ヒジャブから髪が少し出ていたという理由で(アミニさんを)殺しました。若者たちは自由を求めています。全ての人の権利を求めているのです。全ての人に尊厳と自由を手にする権利があるからです」と語った。

エルビルに住むクルド系イラン人の俳優・監督のメイソーン・マジディさんはロイターに対し、「私たちは宗教やイスラムに反対しているわけではありません。私たちは世俗主義者であり、宗教と政治の分離を求めているのです」と語った。

イラク・クルディスタンの与党であるクルディスタン民主党のマスード・バルザニ党首は先週、アミニさんの遺族に電話をかけ、哀悼の意を伝えるとともに、正義が果たされることを望むと述べた。

地域における、また欧州に多く存在するディアスポラの間での、クルド人の政治的アイデンティティーは、世俗主義や民族主義のほか社会主義的伝統さえも含んでいる。イランのクルド人の場合、それによって国の神政体制との軋轢が頻繁に生じている。

9月23日、イラン西部の西アゼルバイジャン州の、クルド人が多数を占める町オシュナビーエは、一時的にデモ隊に席巻され、政府機関、銀行、体制のイスラム革命防衛隊(IRGC)の拠点などに火が放たれた。

アミニさんの死はイランにおける女性の抑圧と周縁化を浮き彫りにした。(AFP)

IRGCはこれに対し、イラクのシダカンを拠点とするクルド系イラン人反体制諸グループの事務所を砲撃し、これらのグループが「混乱」を煽っていると非難した。

IRGCに近しいタスニム通信によると、この砲撃が標的としたのは、いわく「混乱を引き起こすために国境の諸都市に武装チームや大量の武器を」送っているコマラおよびイラン・クルディスタン民主党(KDPI)の事務所だった。

KDPIはクルド系反体制政党で、イスラム革命以降、体制に対する断続的な武装抵抗運動を行っている。一方のコマラは武装したクルド系反体制左派政党で、イランのクルド人の権利を求めて闘争している。

イランの憲法は諸少数民族に平等な権利を与え、独自の言語の使用や伝統の継承を認めている。しかし、クルド人、アフワーズ・アラブ人、バローチ人などの民族集団は、自分たちは二級市民として扱われていると訴えている。彼らの資源は奪われ、彼らの町には投資が行われず、彼らのコミュニティーは攻撃的に取り締まられているというのだ。

イランのクルド系反体制諸グループは、彼らのコミュニティーの政治的・文化的権利を拡大すべく、数十年にわたって闘ってきた。これらのコミュニティーは、クルド人には「ロジヘラ」として知られる国内の地域(東クルディスタン)に広がっている。

このような民族主義的精神のもとでは、クルド人国家を求める包括的な闘争と比較して、女性解放は二次的な関心事と見なされることが多い。長きにわたって伝統的な部族構造から支持を引き出してきたイラクのクルド人指導者たちの場合は特にそうだ。

しかし、地域の他の場所では、クルド系反体制諸グループは、民主主義的な価値観と女性の平等な地位に基づいた社会という、代替的な社会のビジョンのために一貫して闘い続けている。

そのような闘争が他のどこよりも明白に現れているのは北部及び東部シリア自治行政区(AANES)だ。ここでは、米国と同盟関係にあるシリア民主軍(SDF)の政治部門が、クルド人には「ロジャヴァ」として知られる自治政治機構(西クルディスタン)を確立している。

SDFのマズルム・アブディ最高司令官は金曜日、イランの支配当局の「道徳的な過ち」だとしてアミニさんの殺害を非難した。

また、「クルド人と女性の問題は適切な形で解決されなければならない」とツイートしてイランのデモへの連帯を表明した。

SDFのマズルム・アブディ最高司令官は金曜日、イランの支配当局の「道徳的な過ち」だとしてアミニさんの殺害を非難した。(AFP)

ロジャヴァでは、ゲリラ旅団でダーイシュと戦っているクルド人女性たち、中でもクルド人民防衛隊の旅団で全員が女性のクルド女性防衛部隊(YPJ)が象徴的な地位を獲得している。

このYPJの戦闘員たちは、2014年にシリア北部のクルド人が多数を占める都市コバニを、イスラムの教えを曲解して自分たちが奴隷状態にあると思い込んだのであろう過激派組織から解放するうえで果たした役割により、世界から絶賛された。

この勝利の直後、若く、ベールを被らない、ほとんどがクルド人であるYPJ戦闘員の姿が世界中の雑誌の表紙や新聞紙面を飾り、中東の女性について欧米に広まっている受動的な犠牲者というステレオタイプの多くを覆した。

AANES内には現在、女性のみから構成される組織がいくつか存在する。また、YPJ支配下にあるシリアの地域では、児童婚が廃止され、男性が複数の妻を持つ習慣が違法とされ、家庭内虐待は最も厳しい罰を与えられる。

女性の重視は、「共同議長」制と呼ばれる政策にもつながった。これは、公的機関の全ての地位に男性1人と女性1人が平等な協力者として就くものだ。その結果、シリアのクルド人地域では公的地位の50%を女性が占めている。

同様のモデルが、トルコの親クルド人政党である国民民主主義党や、非合法化されたクルディスタン労働者党の党員によっても採用されている。後者は、党の創設者で現在投獄されているアブドゥラー・オジャラン氏の価値観に触発されている。

イラク・クルディスタン地域の一部では未だに名誉殺人や女性器切除があまりにも一般的な習慣として残っているものの、クルディスタン議会の議長を女性が2度務めるなど、女性の政治参加やリーダーシップは近年大きく改善している。

クルド人、アフワーズ・アラブ人、バローチ人などの民族集団は、自分たちはイランにおいて二級市民として扱われていると訴えている。(AFP)

2018年にクルディスタン地域政府(KRG)が議会のジェンダー割当を25%から30%に引き上げた結果、現在は111議席中34議席を女性議員が占めている。

2014年8月にダーイシュがシンジャールのヤジディ教徒の女性たちを攻撃したことも、より多くのクルド人女性が前線で戦闘に参加するのを促した。彼女たちはそれを通して、戦争における犠牲者という自分たちの立場に異議を唱え、自分たちのアイデンティティーを単なる「人の世話をする者」から「自らの手で守る者」へと広げたのだ。

このことが女性の役割やアイデンティティーに関してクルド人社会に前向きな変化をもたらしたことで、女性がペシュメルガ(イラク・クルディスタン地域の武装組織)に参加しやすくなった。

イラク・クルディスタン地域における最近のこうした進歩にも関わらず、クルド系イラク人の女性運動家であるシェリ・タラバニ氏はMERIフォーラム2019で、女性が依然として高い確率で家庭内暴力の被害者となっていること、労働市場における女性のシェアがわずか14%という低い水準であることを報告した。

イランのクルド系反体制諸グループは、彼らのコミュニティーの政治的・文化的権利を拡大すべく、数十年にわたって闘ってきた。(AFP)

一方、イラク内閣の23人の閣僚のうち女性はわずか3人で、KRG内閣の21人の閣僚の中では1人しかいない。

しかし、イランでは状況はもっと悪い。2019年の女性の労働力参加率は、世界平均の47.70%に対し、イランではわずか17.54%で、世界でも最低水準となっている。

イランの女性は、公共部門や民間部門において管理職や意思決定者の地位に就くうえでも制限に直面している。また、欧米からの制裁、一貫性のない経済政策、新型コロナパンデミックのために、近年のイラン経済は縮小しており、女性の雇用機会にも影響が出ている。

アミニさんの死をきっかけとしてイランに広がっているデモが示しているように思われるのは、女性や少数民族に対する虐待への全般的な拒否、経済状況をめぐる不満、道徳警察の強権的なやり方に向けた怒りである。

仕事のためや親族に会うためにイラク・クルディスタンに渡って来た何人かのイラン人がAFPに対して語ったところでは、アミニさんの死がきっかけではあるが、長年の経済危機や弾圧の状況が相まって怒りが爆発したのだという。

現在はイラクで大工をしているクルド系イラン人のアザド・フセイニさんはAFPに対し、「イランの困難な経済状況(…)特に女性の自由やイラン国民の権利の抑圧が、事態の崩壊につながった」と語った。

「イランの各都市のデモはすぐには収まらないと思う」

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